30円や20円 塩漬け状態の少額債権、徳島県が続々放棄 なぜ?

100円に50円、そして30円や20円も。
徳島県が開会中の定例県議会に、少額債権放棄の承認を求める議案を提出している。
その数、何と259件!
中には20年以上も大切に?引き継がれてきたものも。
債権はどうして生じたのか、なぜ長らく塩漬けとなっていたのか、そして「古漬け」がどうして食卓に、いや、県議会に出てきたのか……。
2月定例県議会開会に先立つ2025年2月6日、文教厚生委員会では、県担当者を前に首をかしげる県議が相次いだ。
県議が手にしたタブレットには、開会時に提出される議案の説明資料が表示されていて、そこに並んでいたのは259件の少額(1万円未満)を含む292件の債権放棄リストだった。
292件の総額は136万円7243円。
このうち、少額債権は件数で88%以上だが、金額では18.6%の25万4470円に過ぎない。
それもそのはず。
50円以下の債権が167件もあるのだ。
リストで債務者の住所と氏名の欄は非公開のため空白となっていた。
そして、「権利の内容」部分には「徳島県病院事業の診療及び検査等(など)に関する費用20円に係る債権」などとあり、説明に立ったのは、県病院局の幹部だった。
これらは三つの県立病院を運営する県病院局にかかる債権なのだ。
県病院局経営改革課によると、今回、放棄を提案したのは、1999~2023年度に生じた債権。
このうち1万円未満の少額債権は02~06年度分で、債務者の多くは乳幼児。
今なら、二十歳前後に成長した若者が多い。
病院局によると、患者が受診した際、支払わずに帰宅するなどして債権となったらしい。
患者が死亡していたり、連絡が取れない行方不明状態になっていたりすると、債権放棄の対象となる。
支払いもせずに帰宅した患者と聞くと、びっくりするが、担当者によると、少額債権が生じた時期は県内で子ども医療費実質無償化の対象拡大が進んだ時期と重なるという。
このことから、当時の県立病院が受け入れていた休日や夜間の急病診療へ乳幼児を受診させた保護者が、支払い窓口に寄る必要がないと誤解して帰宅した可能性が高いとみている。
当時、健康保険に市町村の制度を合わせ、医療費は実質無償化されたが、一部無償とならなかった分があった。
病院局には、債権の原因となった具体的な記録は残っていないものの、50円や30円、20円といった金額から、担当者は処方薬の容器代と推定する。
発熱など体調を崩した子どもが受診した際、処方される液体の飲み薬などを入れる容器だ。
塗り薬を入れる容器なども含まれるとみている。
では、県議も首をかしげた「請求」はされていたのか。
患者が再び来院した場合には窓口で説明し、支払いを求めたとみられる。
だが、休日や夜間の急病診療という性格上、来院は1回だけという患者について、滞納状態となったらしい。
しかも、少額債権の督促は、コストとの兼ね合いから進まなかったようだ。
今回放棄する少額債権が発生した02~06年度、はがきの郵便料金は1通50円だったから、良くて相殺、20円や30円の少額債権なら回収費用が上回る。
このため、県議会文教厚生委員会でも、担当者は「費用対効果の点から、繰り返しの請求はできていなかった」と釈明した。
実は、病院局が管理してきた少額債権の放棄は初めてではない。24年の2月県議会で1999~2001年度ごろの少額債権98件(計22万6710円)の放棄を提案したのが初のケースだった。
病院局によると、県監査委員から「適切な債権管理」を促す指摘があり、当時管理していた債権のうち古いものから順に整理を始めたという。
ただ、債権放棄を県議会に提案する場合、債務者の現住所などを確認する必要があり、徐々に進めざるを得ないという。
病院局には、07年度以降の少額債権が約2500件(約550万円)あり、25年度以降、順次、放棄するかどうかの判断を進めるとしている。
少額とは言え、県への未払い金があると嫌だという人もいるだろう。
自分の名前が債権放棄の議案に載っているか確かめたい人もいるかもしれない。
だが、県病院局は、個人情報のため、問い合わせに答えるのは難しいとしている。
なお、近年は各地の医師会などが当番制で休日や夜間の患者を受け入れており、県立病院を利用する乳幼児の患者は少ないという。
参照元∶Yahoo!ニュース