仏ゲームソフト「弥助」神社の内部破壊する映像が物議 実在の神社側「しかるべき対応」

ゲームのコントローラーを撮影した写真

戦国時代の日本を舞台にし、主人公の1人を織田信長に仕えた黒人の「弥助」に設定した、仏ユービーアイ(UBI)ソフトのゲーム『アサシン クリード シャドウズ』の発売が予定されている3月20日まで1カ月となった。

弥助が屈強な侍として描かれるなど、不確かな内容が史実として海外で拡散されることを懸念する声が強まり、注目が集まったが、今度は実在の寺社について、使用許可を取らずにゲーム内に登場させている疑惑が浮上。

特に、弥助が神社に入り、祭壇などを壊す映像が動画配信サイトで公開されると、SNSで批判の声が上がった。

この神社の担当者は産経新聞の取材に「しかるべき対応をする」と話した。

この神社は、1400年以上の歴史があるとされる「播磨国総社 射楯兵主(いたてひょうず)神社」(兵庫県姫路市)。

発売日が近づき、ユーチューバーらによるシャドウズの先行プレイ映像が配信サイトで次々に公開されると、弥助が神社の中で暴れ、置かれている物を刀で壊していく動画が話題となった。

英語版で場所は「itatehyozu Shrine(神社)」と表示されていた。

これはあくまでプレイヤーがそのように操作した場合の映像だが、少なくとも先行プレイ用のソフトでは神社内部を「壊せる」仕様になっているようだ。

SNSでは、「日本文化への蔑みがひどい」「神道を侮辱している」「無神経だ」などの反応があった。

同神社の担当者に、事前にUBIから使用に関する連絡があったかを尋ねたところ、「なかった。もしあればお断りしていた」と不快感を示した。

「しかるべき対応」の詳細についてはノーコメントとしたが、ゲームからの削除を求めている可能性がある。

SNSで対応に乗り出したという噂が出ている神社本庁の担当者はこれを否定した。

シャドウズを巡っては昨年公開された映像で東大寺(奈良市)が登場していると指摘されていた。

国宝に指定されている八角燈籠が映っていた。

昨年10月時点で同寺の担当者は「(UBIとの)協議は事実だが、相手があることなので詳細は明かせない」と答えていた。

その後もこの方針は変わっていないとしており、現時点で同寺とUBIに何らかの合意がまとまっているかは不明だ。

ちなみに、東大寺は弥助が来日する十数年前の1567年に松永久秀と三好三人衆の戦いによって主要堂塔が焼失しており、ゲームの舞台となった時代にはまだ、再建されていない。

こうした問題は他にもあった。

シャドウズの世界観を伝える画像「コンセプトアート」に、火縄銃の保存伝承活動と関ケ原のPR活動を行っている現代の「関ケ原鉄砲隊」の旗が無断で使用されていることが判明。

UBIは昨夏に謝罪コメントを出したが、ゲームの豪華版に添付される冊子からは削除できないとしていた。

ゲームの発売が2度延期された中、ようやく鉄砲隊の削除に応じ、この件は基本的に解決したようだ。

弥助は実在の人物だが残された史料が少なく、侍だったかどうかも断定できない。

シャドウズはアサシンクリードシリーズで初めて日本を舞台にし、UBIは主人公の侍に日本人でなく弥助を〝採用〟した。

日本史を題材にしたゲームで史実に反した登場人物やストーリーが使われることは珍しくないが、すでに海外で、弥助が合戦で華々しく活躍した「伝説の侍」だったと信じている人がいる所に、影響力のある人気ゲームがその拡散を後押しするという懸念が強まったことなどにより、発売中止を求めるオンライン署名にまで発展した。

「日本人だけでなく、海外のファンから『日本史を尊重すべきだ』という批判も多い」(ゲーム業界関係者)という。

UBIは海外メディアの取材などに、シャドウズの開発では日本の専門家による時代考証を徹底したという趣旨のコメントをしていた。

しかし、これまでに公開された映像では、畳の形が正方形だったり、桜が満開になっている季節に道の脇にスイカが並べられていたりするなど、日本人が違和感を覚える描写も目立っていた。

主人公の操作次第で物語の進行に関係ない物を動かしたり、壊したりできる仕様は、ゲーム内の世界にリアリティを与える効果がある。

また、さまざまな場所で登場人物を活躍させることはゲームの内容を豊かにし、プレイヤーを楽しませることにもつながる。

ただ、今回は「実在の神社を無断で」という点が批判されている。

この件に関して、産経新聞は2月18日夜にUBIの日本法人にコメントを求めたが、20日正午までに返答はなかった。

参照元∶Yahoo!ニュース