交通違反「反則金」払わないと 「マジで?」6000円放置で逮捕 早朝の自宅や職場に捜査員が

交通違反をしている人をイメージした写真

信号無視をする電動キックスケーターやタクシー、速度超過のバイク…。

警視庁の交通機動隊が目を光らせ、通称“青切符”を交付する。

交通違反をすると払うことになる反則金。

しかし、放置すると自宅に捜査員が現れるという。

どうなってしまうのか?

都内某所。

警視庁の交通機動隊が追跡していたのは、バイクだった。

覆面パトカーに設置したカメラは、疾走するバイクを捉えていた。

萩原巡査部長「(速度計測)77、78、79km/h。バイクの運転手さん、左に寄ってください」

運転していたのは50代の男性。

交通機動隊員は「橋のところ速度何km/hかご存じですか? 指定速度?」と話し掛けた。

男性「60km/h?」交通機動隊「50km/h道路になります。速度超過違反です。50km/h道路を79km/h走行なので、29km/hの超過になります」

道がすいていたため、スピードを出してしまったという男性。

あと1km/h速度を出していたら、免許停止処分になっていた。

交通機動隊「(違反)点数3点ついてしまいます。反則金、2輪車は1万5000円。銀行・郵便局の窓口でお支払いしてください」

さらに取り締まり中、タクシーが左折して交差点に進入。

この時は赤信号で、直進の車だけが進める状態だった。

サイレンを鳴らし、後を追うパトカー。

「止まってお待ちください、止まってお待ちください」

交通機動隊「すみません、交通機動隊です。直進矢印のみですよ」

タクシー運転手 「はい」

交通機動隊「ドライバーさんが左折したタイミングは直進矢印のみなので、信号無視になってしまうんですよね」

交通違反をしたタクシー運転手。

車内には、乗客の姿がありました。

「急いでやります。お客様よろしいでしょうか?」と交通機動隊員。

乗客を待たせ、手続きが続く。

「引き続き安全運転でお願いいたします」。

運転手は信号無視違反の点数2点、反則金9000円を払うこととなった。

違反は、車やバイクだけではない。

取り締まりから3時間後、交通機動隊は1台の電動キックスケーターに目を光らせていた。

横断歩道を走行する電動キックスケーター。

この時交差点は赤信号で、止まらなければならなかったものの、そのまま通過。

パトカーはサイレンを鳴らし、運転手を止めた。

運転していたのは大学生だった。

交通機動隊が声を掛けると、「何(違反)ですか?」と驚いた様子。

交通機動隊「信号無視の違反になってしまう」

大学生「信号無視ですか?どこですか?」

交通機動隊「右折したところ。信号赤なので」

大学生「これ(電動キックスケーター)でも?」

交通機動隊「ダメです」

車でなければ走行できると思っていた大学生。

交通ルールも分からず、運転していたのだ。

大学生「交通違反で取り締まられると俺はどうなるの?」

交通機動隊「信号無視の取り締まりになります」

交通機動隊「ちょっと急いでいた?」

体調が悪いため、早く帰りたいという大学生。

「めっちゃ急いでいた。風邪…インフルなんですよ。時間がもったいないじゃないですか?こっちも、おまわりさんももったいないし、俺ももったいない」

交通機動隊「私たちは別に、もったいなくはないですけど。協力していただいた方が早く終わるかなと思います。違反の内容、説明した通り信号無視です。反則金は6000円。(電動キックスケーターは)免許がなくても運転できるので、点数はつきません」

大学生は反則金6000円を払うこととなった。

その後、手続きを終え、再び電動キックスケーターに乗るが、前の信号が赤に変わっても止まらなかった。

パトカーの車内でその様子を見ていた交通機動隊員が、「(信号を無視して)行くんじゃないの?」と言う。

鳴り響くサイレン。

大学生はわずか数分前に交通違反をしたにもかかわらず、再び信号を無視した。

「止まってください、止まってください」。

大学生は「自分のこと?」といった様子で顔を指差し、確認する。

交通機動隊「 はい(あなたです)。止まってください。信号無視」

大学生 「してないですよ」

交通機動隊「しているよ」

大学生「またですか?」

交通機動隊「さっき言ったじゃん」

大学生「また? そんなことあります?」

交通機動隊「ある」

大学生 「俺、赤信号無視しないですよ」

交通機動隊「信号無視」

大学生「本当に言ってますか?え?本当に?」

交通機動隊「もう1個切符になります」

大学生「え?本…本当?」

交通機動隊「はい、本当。さっき注意したばかりなんだから」

大学生「そんな…お笑いじゃないですか?(数分前に)切符もらって、『すみませんでした』で行って…」

交通機動隊「目の前でやられてしまえば、私たちも取り締まりするしかありませんので」

大学生 「(違反した場所から)30mも進んでいないんですよ。マジのやつですか?」

交通機動隊「マジのやつです。お言葉借りるけど本当のやつ」

交通機動隊「さっき聞いた電話番号とか変わりない?」大学生「それはもう…本人だもの」

2度も取り締まりを受け、ぼう然とする大学生。

赤信号を無視したことすら気づいていなかったという。

交通機動隊「信号機があることすらも分からなかった?」

大学生「ボーッとしていたんですかね?」

交通機動隊「ボーッとしていた?違反で済んでいるうちはまだいいけれども、事故してしまうと大事な命なので」

大学生 「本当に(違反を)していましたよね?」

交通機動隊「していました」

大学生「自分でも信じられない」

違反に納得がいかない学生。

合わせて、1万2000円の反則金を払うこととなった。

比較的軽い交通違反者に交付される「交通反則告知書」、通称“青切符”。

都内では去年、青切符の違反が約41万件(暫定値)。

そのうち、電動キックスケーターは年々増加し、約3万件に上る。

反則金を払わないと期日までに出頭するよう求められる。

それでも放置し続けると、何が待っているのか?

警視庁の捜査員に同行し、実態を取材した。

午前6時すぎ。

捜査員が向かったのは、電動キックスケーターで交通違反をし、反則金6000円を滞納しているという30代男性の自宅だった。

インターホンを鳴らす捜査員。「交通違反の関係でお伺いしたんですけども」。

訪問から数分後、男性が自宅の前に現れた。

捜査員「電動キックボードで交通違反。もう令状出ちゃったから」

30代男性「え? それで俺今から?」

捜査員「錦糸町(警視庁の施設)。今から」

逮捕状が出ていることを告げられ、驚く男性。

30代男性「どうなるんすか?」

捜査員「今回の違反の処理をする」

30代男性「今から荷物まとめればいい?」

捜査員 「持って行くものは、例えば財布・お金、あとは身分証明書」

30代男性「ちなみに、どれくらい時間かかります?」

捜査員「分からない。1日かかることもあるし。ただ今日中には終わる」

30代男性 「マジか…」

捜査員「留置されるわけじゃないから」

荷物を準備し、男性は捜査員に連れられて車内へ。

30代男性「マジかよ」

捜査員「このあと手錠かける」

30代男性「マジで?」

捜査員 「マジで。(出頭通知書を)4回送っているんですけど、出頭されないということで逮捕状が出ておりました」

30代男性「何言ってんすか?」

捜査員「被疑者は、令和5年11月15日、赤色の灯火信号を看過して、これに従わないで特定小型原動機付自転車を運転して進行したものである。(午前)7時33分ですね、道路交通法違反で逮捕。手を前に出してもらっていいですか」

信号無視の反則金6000円を払わず放置したとして、両手に手錠。

放置し続けると逮捕されてしまうこともある。

30代男性「はあ~、だるっ」

捜査員「電動キックボードでもこうなっちゃうから。今後気をつけてね。事故を起こすのが一番大変だからな」

反則金を1年も放置していた男性。

なぜ払わなかったのか?

捜査員が「出頭できなかった理由は?」と聞くと、30代男性は「普通に仕事っす」と答えた。

捜査員「忙しかった、多忙ね」

男性「今日も忙しい。はあ~、マジか~、めんどくせ~」

男性は、反則金の支払いを後回しにしていたという。

その後、略式起訴され6000円の罰金を払うことになった。

別の日にも同行取材した。

この日も捜査員は午前6時すぎ、違反者の自宅へ。

自宅にいる可能性が高い、早朝に行くのが鉄則だ。

向かったのは、原付きバイクの交通違反の反則金を2年近く滞納している、40代女性の自宅。

捜査員「交通違反の関係でお伺いさせていただいた。来ていただく形になります、今日」

40代女性「えっ、今ですか?」

捜査員「そうです」

40代女性「今まだ着替えていないので…」

捜査員「着替えてもらって構わないので」

女性「いや、今日は仕事があるので今からだと困るんですけど」

捜査員「簡単に言うと、逮捕状というものが出ているんです」

40代女性「はい…」

捜査員「これから来ていただきます」

40代女性「え~」

困惑する女性。

仕事のため、すぐには行けないという。

同居する母親も「時間ってまだ(午前)7時ですよ? こういう時間に? え~」と言う。

40代女性 「仕事なので、すぐには行けないんですけど。昼間でいいですか?」

捜査員「いや、今日はこのあと来てください」

40代女性「ここでは済まないんですか?」

捜査員「済まないです。もう刑事手続きになっています」

捜査員の呼び掛けに応じない女性。

反則金はすでに払っていると主張する。

捜査員「(出頭通知書の)ハガキも何回か出させて…7回出している」

40代女性「それ払ったんですよ。(ハガキが)来たやつを」

女性が払ったのは、別の交通違反の反則金だった。

実は、他にも反則金を滞納していたのだ。

捜査員「反則金を払っていただければそれで済んでいるんですけど、その支払いがなかったので出頭してくださいということで、ハガキを出させていただいていた」

40代女性「はあ? ちょっと待ってくれますか? ちょっと(ドア)閉めてもらえますか。着替えるので」

数分後、ようやく自宅を出る女性。

捜査車両に乗せられた。

捜査員「今回逮捕状が出ています。令和4年12月17日、第一種原動機付自転車を運転して一時停止すべき場所であることに気づかず、停止線の直前で一時停止をしなかったものである。これが逮捕事実になりますので、この時間をもって令状を執行させていただきます」

40代女性「どうぞ」

捜査員「(午前)7時13分ですね。道路交通法違反で逮捕します」

40代女性「めっちゃ悪いことをしたみたい…まあ悪いことした」

一時不停止の反則金5000円を払わず放置したとして逮捕された。

捜査員「出頭されなかった理由は?」

40代女性「どれか分からなくて。払ったのか、払っていないのか分からない。なんか最後に来たやつ(別の反則金)に払った。しばらく連絡がなかったから『これいいのかな?』と思って。すみません、放置しました」

反則金を払ったつもりでいたという女性。

逮捕され、事の重大さに気づく。

40代女性「お母さんにめっちゃ怒られるわ。最悪。(家に)帰りたくないな~」

捜査員「今後同じようなことがないように」

40代女性「もう捕まりたくない。あ~、こんな連行されるんだったら、(事前に)電車で素直に行っていたのに。前日に連絡してくれたら…」

捜査員「悪い人は連絡を入れた瞬間に逃げる」

40代女性「確かに。たった5000円を支払わないバカ、別に逃げないでしょ?」

その5000円の反則金を払わずに逮捕された女性。

同額の罰金を払うことになった。

仕事中でも逮捕されることもある。

捜査員が向かったのは、60代男性が勤める会社。

しかし、男性は不在だった。

職場の同僚「あいつは何をやったんですか?」

捜査員「何回も呼んでいるんですけど、来ていただけなかったので。呼んでもらってもよろしいですか?」

捜査員から事情を聞いた職場の同僚が、男性に電話をかける。

職場の同僚「もしもし、もしもし、もしもし。お前何やってんだ。『おはようございます』じゃない。 お前何やってんだ。何回も(払えと)言っただろ、お前。今警察の人が来ている。代わるから待って」

捜査員「おはようございます。出頭しなかったので、こちらに来させていただいたんですよ。申し訳ないけど、そちらに行くから。今仕事中でしょ?」

60代男性「はい」

捜査員「そちらに行くからね」

60代男性「出かけたりしないといけないので…」

捜査員「申し訳ないけど、そういう話じゃないから。そこで待ってもらっていていい?」

仕事中に逮捕された男性。

実は過去にも反則金を払わず逮捕されたことがある、常習者だった。

取材中に逮捕された人の多くは、「忘れていた」や「後回し」など、軽い気持ちで放置していた。

こうした反則金の未納件数は、都内だけで年間約3万件(2023年の“青切符”)に上るという。

警視庁は、反則金を放置し続ける人への追跡捜査を強化している。

参照元∶Yahoo!ニュース