「親元で暮らす」が重荷に変わったら 就職氷河期世代が抱える困難さ

就職活動している人

今も続く就職氷河期世代の困難さの原因はどこにあるのだろうか。

独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)が2023年に行った調査をひもとくと、就活時が景気後退や雇用情勢の大きな転換期にあたり、十分な職業訓練や教育が受けられなかった状況が浮かび上がる。

調査対象の20人のうち10人が卒業・中退時に正社員となったが、うち5人は5年未満で離職していた。

社会人になって短期間で離職することの弊害は教育・訓練の不足だ。

日本型雇用では、社会人としての初期訓練を企業が施すケースが多い。

正社員としてコールセンターに配属後、3カ月で離職した女性(1996年卒)は「一般的なトレーニングを受けられなかった。仕事の基礎を身につけるべきだったと後悔している」と述べた。

キャリア形成の重要な時期である20代に雇用状況が悪く、安定した職に就けないばかりか、その後のリーマン・ショックなど経済危機時に失職する人も多かった。

深刻な人手不足の現在は転職で賃金が上昇するケースが増えている。

しかし、当時の転職市場は過酷だった。

複数の転職経験がある40代男性(95年卒)は「初めて就いた仕事が最も労働条件がよく、30年働いた最近になってようやく当時の給与水準に追いついてきた」と明かしている。

暮らしぶりはどうか。

結婚経験がある人は20人中5人。

このうち男性が3人(うち2人は離婚)で、いずれも結婚したのは正社員の時期だった。

17人の独身者のうち、1人暮らしは4人。

残り13人は親元で暮らす。

雇用が安定しなくても実家で暮らすことで生計維持を図ってきたとみられるが、JILPTは「今後はそれが重荷に変わる可能性が高い」と指摘する。

理由の一つは、高齢の親を支えるため介護離職などが予想されること。

もう一つは「親の年金と自身のアルバイト代でなんとか家計をまかなっている」(99年卒・男性)と話す人もいるように、親世代が亡くなって自分が単身高齢者となった時に状況が深刻化すると考えられることだ。

では、どのような支援が効果的なのか。

ハローワークや地域若者サポートステーション(サポステ)は、氷河期世代に特化した支援を提供している。

利用者は「支援担当者や同じような境遇の人との出会いで前向きになれた」と述べている。

人脈が社会とのつながりを作り、就業につながった例もあるという。

20人の中には難関国家資格の「社会保険労務士」などを持つ人もいて、自己啓発に熱心な特徴がみえる。

JILPTは「資格が正社員としての安定に結びつくとは限らないが、採用選考でプラスになり、本人の自尊心を支える」と分析。

「仕事に対する積極的な意欲を活用していく。そうした視点も支援には有効だ」としている。

参照元∶Yahoo!ニュース