政府が核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加見送りを表明 岩屋外相「大変厳しい判断をした」

政府をイメージした写真

岩屋外相は18日午後の記者会見で、米国で3月3~7日に開かれる核兵器禁止条約第3回締約国会議への日本政府のオブザーバー参加を見送る方針を表明し、「大変難しい、厳しい判断をせざるを得なかった」と語った。

ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)などがオブザーバー参加を求め、政府も過去にオブザーバー参加した国々の事例なども検証し参加の是非を検討してきたが、核開発中の北朝鮮や、核兵器保有国の中国・ロシアに囲まれている厳しい安全保障環境の中で、米国による核抑止力の重要性を踏まえて判断した。

岩屋外相は会見で「核兵器禁止条約は核兵器のない世界への出口ともいえる重要な条約だ。その一方で検証の結果、条約を取り巻く現在の状況として、国際社会の核軍縮の取り組みに分断が深まっているという現実を直視する必要があるという認識を深くした」と語った。

その上で「現下の状況に鑑みれば、核兵器禁止条約の第3回締約国会合に我が国がオブザーバー参加することは、適当とは言えないとの結論に至った」と明らかにした。

岩屋外相は不参加の理由について「我が国がオブザーバー参加したとしても現下の状況では必ずしも効果的な取り組みにはならないと考えた」とし、「唯一の戦争被爆国として核軍縮分野で影響力の大きい我が国が核兵器禁止条約にオブザーバー参加すれば、分断の中で核兵器国と非核兵器国の双方の参加を得て我が国が進めてきたNPTにおける取り組みに広範な支持を得ることが困難になってしまう恐れがある」と説明した。

また、「我が国周辺では、むしろ質的・量的な核軍拡が進んでいるという厳しい現実を直視しなければならない。オブザーバー参加が我が国の安全保障にいかなる影響を及ぼしうるかということも、真剣に考慮せざるを得ない。核兵器の使用をほのめかす相手を通常戦力だけで抑止することはできない」と指摘した。

そして「我が国が非核三原則のもと、自ら核兵器を保有することはないという前提のもとで、国民の生命と財産、我が国の独立と平和を守り抜くためには核による拡大抑止が不可欠な状況にある。核兵器を包括的に禁止する核兵器禁止条約はこの核抑止とは相容れず、現状においては核兵器国がこれを締結する見込みはない。そのような中でこの条約の締約国会合にオブザーバー参加することは、我が国の核抑止政策について、誤ったメッセージを与え、自らの平和と安全の確保に支障をきたす恐れがある」と強調した。

岩屋外相は一方で、「我が国は唯一の被爆国として、NPT体制を基盤としつつ、核兵器国と核兵器禁止条約締約国の双方の参加を得た対話や取り組みに今後とも全力を尽くしていく。被爆80年の本年、そして先般の日本被団協の皆様のノーベル平和賞受賞の意義も踏まえ、被爆者の方々とも共同しながら、被爆の実相の理解促進に一層取り組んでいく」と語った。

この問題をめぐり石破首相はこれまで、オブザーバー参加を「選択肢の一つ」とし、被団協との面会でも参加を求められたが、参加の是非に関する明言は避けてきた。

参照元∶Yahoo!ニュース