産休育休伝えると雇い止め…どうして? 1年ごと契約更新「非正規公務員」に取得の壁 自治体側「勤務態度が理由」

「3月に出産するため産休育休を取りたいと上司に伝えたら、『契約更新はない』と言われ、産休も途中で打ち切られることになりました」。
広島県内の自治体で働く女性から嘆きの声が寄せられた。
女性は会計年度任用職員で、1年ごとに契約更新する「非正規公務員」。
取材を進めると、この仕組みが安心な妊娠出産の障壁になり得る現状が見えてきた。
この自治体で通算約6年間、働いてきた女性。
未婚で妊娠し、昨年9月に「産後も子育てをしながら働きたい」と所属課長の男性に産休育休の取得希望を伝えた。
予定日通りに今年3月に出産すれば、5月まで有給の産後休暇、子どもが1歳になるまで育休が取れると見込んでいた。
しかし、思いもしない返答が待っていた。
約1カ月後、課長は「契約更新できない」とし、雇用契約が切れる3月末で産後休暇も終わると告げた。
納得できない女性側が理由を求めたところ、2カ月たった年末になって「勤務態度が良くなかった」と説明された。
自治体を所管する総務省は、会計年度任用職員について育休を理由に契約更新しないことは認められないとマニュアルに記す。
一方で、労働問題に詳しい和光大名誉教授の竹信三恵子さんは「契約が1年ごとの会計年度任用職員は、マタハラされやすい制度になっている」と問題視する。
広島の女性のケースでも産休育休の希望を伝えて間もなく雇い止めを通告された。
契約期間はまだ半年近くあった。
なぜ早々と通告されたのか。
中国新聞の取材に対し、自治体側は「(女性が)退職後の生活について検討できる期間を確保」するためだったと説明した。
非正規公務員や研究者でつくる団体voices(ボイセズ、東京)には「妊娠を伝えた途端に雇い止めに遭った」との相談が複数寄せられている。
しかし、その理由として「業務削減」「勤務態度」と説明され、不可解な気持ちを抱えつつ職場を去らざるを得ないケースがほとんどという。
年が明けて1月15日、国会近くの参院議員会館。
非正規公務員を巡る課題についての意見交換会が開かれ、人事院と厚生労働省、総務省の職員計約20人と国会議員、ボイセズのメンバーが2時間にわたり議論した。
広島の女性の手記も代読された。
「正規の職員は当たり前に産休育休を取れるのに、会計年度任用職員は『契約更新しない』の一言で産後の生活保障を一気に失う。理不尽だと感じています」
弁護士約1700人でつくる日本労働弁護団(東京)は昨年秋、全国で増えている会計年度任用職員の身分保障と処遇改善について提言をまとめた。
雇い止めが民間では労働契約法などで厳しく規制されているのを踏まえ、井上幸夫会長は「会計年度任用職員は行政サービスで重要な役割を担っているのに、権利保障が著しく弱い」と制度改善を訴える。
国や自治体、政治家たちが掲げたり、唱えたりする「女性が安心して子育てできる社会」。
出産が迫ってきた広島の女性は「産後休暇も満足に取れない私からすると、その言葉はむなしいです」と語る。
大きくなるおなかを抱え、不安な日々を過ごしている。
参照元∶Yahoo!ニュース