トランプ氏、1セント「鋳造停止」の波紋 ホリエモン「1円玉も…」

アメリカのセント硬貨を撮影した写真

2月に入り、トランプ米大統領が製造コストによる「赤字」を理由に1セント硬貨の鋳造停止を指示したと明らかにした。

それに呼応するように、実業家の堀江貴文さんもX(ツイッター)に「日本も一円玉廃止しよう」と投稿した。

「なんて乱暴な」と思う人もいるかもしれないが、世界を見渡すと既に小額硬貨の発行をやめた国もあり、荒唐無稽(むけい)な話とまでは言えないようだ。

ペニーの愛称で呼ばれ、浪費を戒めることわざにも登場する米国の1セント硬貨。

日本の1円玉に相当する米国民にとって身近なコインだ。

米造幣局の2024会計年度(23年10月~24年9月)の年次報告書によると、1セント硬貨の鋳造にかかるコストは3.69セントで、年間約8530万ドル(約130億円)の「赤字」だったという。

トランプ氏は9日、自身のソーシャルメディアへの投稿で、1セント硬貨の鋳造を「無駄遣いだ」と非難した。

鋳造停止を突拍子もない「思いつき」と受け止める人もいるかもしれない。

だが、08年にはブッシュ(子)政権のポールソン米財務長官(当時)が、1セント硬貨の廃止に肯定的な見解を米ラジオのインタビューで述べるなど、廃止論はくすぶり続けてきた。

トランプ氏が連邦議会の承認を経ずに硬貨の鋳造を停止できるかどうかは法的に不透明だが、議論は続きそうだ。

世界に目を向けると、端数の支払いに使うような細かい硬貨の発行を実際にやめた国もある。

カナダやオーストラリア、ニュージーランドなどは既に1セント硬貨を廃止している。

硬貨の鋳造コストが背景にあるが、硬貨の廃止に伴い金額の端数を切り上げたり、切り捨てたりして丸める四捨五入のような「ラウンディング」を行う国が多い。

日本はどうだろうか?

造幣局によると、1円玉は純アルミニウム1グラムで作られている。

現在流通している円通貨のなかでも「最古参」で、1955年に発行された。

デザインは一般公募で選ばれた。

樹木が描かれているほうが「表」なのだが、この木は実在しない架空の植物だという。

「若木」と呼ばれ、伸びていく日本を象徴している。

気になる製造コストだが「貨幣の偽造を助長するおそれがある」(造幣局)などとして非公表だ。

だが、造幣局が公表している貨幣製造事業の支出総額などから、原料価格や製造経費を算出した推計値「約3円」が、1円玉を造るのにかかるお金と言われてきた。

硬貨は、摩耗などで劣化した硬貨の入れ替えのほか、記念硬貨の発行のために製造されてきた。

社会情勢の変化に応じて発行枚数も変化してきた。

89(平成元)年には3%の消費税が導入され、10円刻みで行われることの多かった支払いに代わって、1円単位までの支払いが増えた。

1円玉の出番が急増し、財務省によると、このころの発行枚数は過去最高の約28億枚に上った。

ところが月日は流れ、キャッシュレス決済という「大型ルーキー」の登場により、現金の出番は減少。

24年度の1円玉の製造枚数は約52万4000枚にまで減少している。

製造コストを背景にした廃止議論が米国のように盛り上がるかは分からないが、給与の「デジタル払い」も解禁されるなど、キャッシュレスの流れは今後も止まりそうにない。

消費税も端数の出にくい10%であることもあり、1円玉の「冬の時代」は今後も続きそうだ。

参照元∶Yahoo!ニュース