アルマゲドンが現実に?2032年、小惑星衝突の可能性は“現状2.2%” 「これはSFではなく“サイエンスノンフィクション”」地球どう守るか

宇宙をイメージした写真

カナダで2024年7月、インターホンのカメラで「隕石の落下」が撮影された。

隕石は小さく、大きな被害はなかったが、これとは比べ物にならないサイズの小惑星「2024 YR4」が2032年12月22日に、地球に衝突する可能性があると取り沙汰されている。

衝突の確率は当初1.2%と予測されていたが、今月に入ってESA(欧州宇宙機関)は2.2%へ上昇したことを明らかにした。

NASA(アメリカ航空宇宙局)によると、この小惑星の大きさは40〜90mと推定され、衝突する場合には時速6万キロ以上で大気圏に突入すると予想されている。

2013年にロシアのチェリャビンスク州に落下した隕石は、直径約17mと推定され、広島型原爆の30倍を超える爆発エネルギーを放出したというが、今回の「2024 YR4」はその倍以上にあたる。

なおESAは現状、衝突せずに地球近くを通過する確率が最も高いとしている。

NASAは3年前、別の小惑星に探査機を衝突させ、軌道を変える実験に成功したが、小惑星衝突を避けられない事態も考えられる。

その場合、人類はどうすればいいか。

『ABEMA Prime』では、SF(サイエンスフィクション)的な発想をまじえて考えた。

「2024 YR4」は、2024年に発見された小惑星だ。観測したESAによると、「観測結果が増えるほど正確に確認できる」「衝突ではなく、フライバイ(接近通過)になる可能性が高い」とされている。

現状の「衝突確率2.2%」をどう見るか。

JAXA美星(びせい)スペースガードセンターの天文学者・浦川聖太郎氏は「0.1%で怖がる人もいれば、99%でも大丈夫と思う人もいる」としつつ、「この確率になったのは、2000年以降で2例目と珍しい事例だ」と解説する。

衝突の被害規模としては、直径40mの場合は「村1個が吹っ飛ぶレベル」で、直径90mの場合は「東京23区が吹っ飛ぶレベル」で、1km近いクレーターと、広範囲に爆風などが予想される。

ちなみに直径1000kmの場合は、映画『アルマゲドン』レベルで、「地球人類絶滅の危機」だという。

「直径が倍になると、重さがその3乗の約8倍かかる。直径10kmで人類滅亡の危機になるだろう」。

一方で、「衝突確率は低くなることの方が多い」といい、「前回は、観測を何度もして、詳しい軌道が分かった結果、最終的に0%になった。その小惑星は、2029年に接近するが、人工衛星よりも内側の軌道まで来て、通り抜けていく」と説明した。

衝突回避の方法として、NASAの“DART計画”がある。

2022年、直径160mの小惑星に探査機をぶつける実験を行い、小惑星の軌道を変えることに成功している。

他にも、「核爆弾で爆破」「宇宙船を横付け」「帆を付ける」などの手段も検討されている。

浦川氏によると、今回の「2.2%」という確率は、「公表されていて誰でも知れる状態だ。

IAWN(国際小惑星警報ネットワーク)で議論されていて、2.2%は『天文学者は注意して観測しよう』というレベル」だそうだ。

「もしも」に備えたシミュレーションは、これまでも行われてきたという。

「2017年に日本で国際会議があり、『もし10年後に200mの小惑星が東京に落ちたら』をロールプレイングした。『いつのタイミングで知らせるか』『東京からずれても、中国に落ちたら誰が責任を取るのか』などを議論した」。

もし地球に落下するとなれば、どのような対策ができるのか。

防衛省防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏は「落下地点が正確に分かった段階で、何ができるかが決まる。人が住んでいるところに落ちるなら避難が必要だ。海なら津波対策を要する」と話す。

2017年の国際会議では、「どの経済レベルの都市なら助けるのか」という議論があった。

浦川氏は「砂漠の中心に落ちたとき、世界中の資金を使って助けるのか。ウルグアイの人が『(自国の首都の)モンテビデオならどうするか』と質問してきた」と振り返る。

エンジニアで起業家・作家の安野貴博氏は、「SF作家が言っていたことが、現実になるケースは結構ある」と語る。

「“コンピューターウイルス”という単語は、SF作品で初登場した。VRゴーグルも1935年のSF作品で初めて描かれた。作家の思いつきが、科学として実現することはある」。

天体被害の回避を、SF作品ではどう描いてきたか。映画『アルマゲドン』では、小惑星に石油掘削チームが着陸し、内部に核爆弾を設置し爆破した。

アニメシリーズ『機動戦士ガンダム』などでは、宇宙にコロニーを建造し移住。映画『妖星ゴラス』では、南極に巨大なジェット噴射口を作り、地球を動かした。

高橋氏は「もっともらしいSF作品は、現実の延長になってしまう」と指摘する。

「AIを『人間を支配する悪魔』として描くSF作品もあるが、最近ではChatGPTを普通に使っている。『誰もが使えるAI』は、意外とSFになかった。本当の人間の営みは予想しにくいのではないか」。

“小惑星衝突”と聞くと、SFチックなイメージがある。

浦川氏は「今回の小惑星に関してはサイエンスノンフィクション。リアルに起きていることで、人間が小惑星という共通の敵を前に、一致団結できるかが問われている」としつつ、「研究者として言い切るのは怖いが、今回はたぶん大丈夫だから心配しないで」と呼びかけた。

参照元∶Yahoo!ニュース