エヌビディア新製品でアキバ大混乱、背景に米中対立 輸出規制で買えない中国ゲーマーが殺到

グラフィックボードをイメージした写真

東京・秋葉原で先月下旬、米半導体大手エヌビディアのグラフィックスカード新製品を買い求めようとする客がパソコン店前に殺到して混乱を引き起こす騒ぎがあった。

米中対立が中国の熱狂的ゲーマーや再販業者に与えている影響を映し出す騒動だった。

秋葉原にある「パソコン工房」前には1月30日、400人あまりが詰めかけた。

エヌビディアのグラフィックスカード「GeForce RTX 50」の新製品を買い求めようとする客だった。

しかし詰めかけた客が歩道をふさいだり、近隣の敷地に侵入したりしたことから、店は販売中止を強いられた。

パソコン工房は2月3日、「弊社の不手際により騒動となり、お客さま、ご近隣の皆さまならびに関係者さまへ多大なるご迷惑、ご心配をおかけいたしましたこと深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

パソコン工房を展開するユニットコムの端田泰三社長は5日、CNNの取材に対し、ビデオカードを買い求めようとしたのは90%が中国語を話す客だったと語った。

1月30日に発売された新製品は、処理速度と画像処理性能を向上させ、ゲームが快適に楽しめるようになるとしてゲーマーを熱狂させた。

しかし中国では、半導体に対する米国の輸出規制の影響で、この製品は購入できない。

米政府の狙いは、人工知能(AI)や兵器開発に使用できる高性能半導体を中国に入手させないことにある。

このためエヌビディアの新製品は「去勢版」しか入手できないと中国のゲーマーは訴える。

エヌビディアは中国市場専用に、AI部品の速度を遅くした改造版の製品を提供している。

その影響で、日本など海外で最新製品を求める中国ユーザーの需要が増大した。

専門家によると、今回の新製品もAIツールの開発に使用できることから米国の輸出規制の対象となる。

「熱烈なゲーマーにとっては許容される半導体と規制される半導体との違いは大きい。だから他国で買い求めようとするのかもしれない」と専門家は分析する。

パソコン工房の発表によると、1月30日に秋葉原店でGeForceシリーズの「RTX 5090」10基と「RTX 5080」47基などを抽選販売すると発表したところ、想定をはるかに上回る客が詰めかけた。

SNSに投稿された動画には、店の前の歩道に数百人がひしめいて押し合いになり、車道にまではみ出す様子が映っている。

順番に列に並ぶようにという店のスタッフの呼びかけは無視され、少なくとも1人の男性がフェンスをよじ登って隣の幼稚園に侵入した。

地元メディアの報道によると、幼稚園の看板は半分折られていた。

店は店頭販売を中止してネット上での抽選に切り替えた。

エヌビディアは以前から、米国の輸出規制に従って中国向けの製品を改造している。

ロイター通信によれば、エヌビディアが昨年中国で発売した「RTX 4090D」のゲーム性能は、他国向けの「RTX 4090」に比べると5%低速だった。

中国以外の国で発売された新製品の「RTX 5090」は、毎秒3352兆回 (TOPS) の演算処理性能を実現。

これに対して中国で販売されている「RTX 5090D」のTOPSは2375兆回と、29%ほど下回る。RTX 5090の販売価格は米国が1999ドル(約30万円)、日本はおよそ2600ドル。

中国のRTX 5090Dは約2270ドルで販売されている。

中国の再販業者は国外で調達した製品を売り出しており、中国の通販サイト「淘宝(タオバオ)」では最大で5700ドルの値段が付いている。

参照元∶Yahoo!ニュース