「昼間」に線路の保守作業 人手不足の中で作業員確保のため、利用者には戸惑いも

線路をイメージした写真

JR各社で、夜間の営業終了後や運行の合間を縫って実施してきた線路の保守作業について、日中に路線を運休して集中的に行うケースが広がっている。

作業員の人手不足が問題となる中、仕事を続けやすい環境を整える狙いがある。

「保守工事で運休だとは思わなかった」。

山口県周南市のJR徳山駅で昨年12月26日、岩徳線に乗車しようとした同県防府市の女性(71)は戸惑いの表情を見せた。

JR西日本の岩徳線岩国―徳山間では、同11月から2月7日までの平日15日間の午前9時半~午後4時、レールや枕木の交換を集中的に行った。

この時間帯の列車上下各2本は各日、運休した。

女性は老人ホームで暮らす母のもとを訪ねる予定だったといい、「あきらめるか、バスを探します」と話した。

JR西によると、2019年頃から同様の取り組みが本格化した。

当初は中国地方が主だったが、福井県を中心とする小浜線などにも広がり、昨秋は京都府などの関西線や、滋賀県などの草津線でも実施した。

昼間に運休しても影響が限定的なローカル線が中心だ。

背景にあるのは、人手不足だ。

24年度の社員数は2万4300人と、10年前の3万170人から約2割減少。

保守作業を行う要員も減っている。

人員数に応じ、効率的に作業を進めるため日中に行うことにした。

不規則な勤務を減らして労働環境を改善し、離職を防ぐ狙いもある。

明るい時間帯に作業するため、ミスや事故の防止にもつながるという。

沿線住民らを対象にした作業の見学会も積極的に開催している。

JR西は「お客様にご迷惑をおかけすることになるが、理解してほしい」としており、実施線区の拡大を検討している。

JR九州は10年度頃から、JR北海道も19年からそれぞれ、運休を伴う昼間の工事を行っている。

JR四国は、2月12日から、愛媛県南部の予讃線八幡浜―宇和島間で初めて行う。

平日の5日間、各日特急・普通計14本を運休させ、敷石の交換や線路沿いにある樹木の伐採を行う。

関西大の安部誠治名誉教授(交通政策論)は「線路設備の維持管理は、鉄道の安全を守る上で極めて重要だ。作業員の高齢化や人手不足が深刻化する中、夜間の作業を日中に置き換えるだけでなく、ロボットなど最新技術を有効に活用していくことが求められる」と指摘する。

参照元∶Yahoo!ニュース