24時間365日「絶対に断らない救命救急」 受け入れ数日本一を誇る病院 なぜ可能?

今も続く救急患者の搬送先がなかなか見つからない「救急搬送困難事案」、去年は16万件超に。
そんななか、受け入れ数日本一を誇り、24時間365日「絶対に断らない救命救急」を続けている病院がある。
なぜ可能なのか?
神奈川県鎌倉市にある、湘南鎌倉総合病院「救命救急センター」。
24時間365日、29人の医師が「断らない救急」を続けている。
現場をまとめるリーダーのひとり、関根一朗医師(40)は、「救急医というのは、専門外がないというのが専門性。どんな症状でもけがでも力になれることを考える」と話す。
午前11時、搬送されてきたのは、70代女性。
車で衝突事故を起こしたという。
看護師「痛いのどこです?」
70代女性「痛いの胸」
看護師「右側のこっちね」「ハンドルが当たった?」
70代女性「あの、あれなんですか。あれは」
医師「エアバック?」
一体、何が?
救急隊から事故の状況を聞く。
救急隊「自宅の駐車場から出ようとした際にアクセルとブレーキを踏み間違えて衝突」
女性は、ブレーキとアクセルを踏み間違え、5メートル先の壁に衝突したという。
動揺する女性に、関根医師が話しかけます。
関根医師「大変でしたね」
70代女性「もうなさけなくて。息子の新しい車だったの」
関根医師「そうなんですか。でも、事故って何があるか分からない。命を落とす人もいるし、不幸中の幸い」
女性は、肋骨(ろっこつ)を3本折るけが。
幸い大事には至らなかった。
ひっきりなしに患者がやってくる救命救急センター。
取材中も受け入れ要請が重なり、わずか8分間に5人が。
12室ある処置室が埋まることもあるが、それでも患者は断れない。
多い時には、処置室が埋まっていても通路にベッドを置いて対応する。
センターの中で、およそ100人の患者がいたこともあるという。
医師たちは、診察と治療を急いだという。
午後11時すぎ、搬送されてきたのは、「腰の痛み」を訴える80代女性だ。
80代女性「朝起きたら腰が動かなくなっちゃって」
実は、その女性、他の患者と状況が違った。
ここに来るまでに4つの病院に搬送を断られていた。
救急車に同乗してきた娘から事情を聴いた。
搬送された80代女性の娘「(他の)病院は満床。整形外科の先生が当直でいるところが少ない」
「深夜で腰痛を診られる医師がいない」などの理由で、4つの病院に受け入れてもらえなかったという。
関根医師「痛みを和らげる治療を始めて、腰の診察もしていきます」
関根医師たちは、女性を突然襲った腰痛の原因を探る。
検査を行い、細かく確認していくと…。
関根医師「これが新規だと思うね。腰椎(ようつい)の圧迫骨折」
背骨の一部が、つぶれるように骨折していた。
高齢女性に多い症状で、せきやくしゃみなど何気ない動作でも「骨折」することがあるという。
女性は、その後、入院して治療することになった。
去年、患者を運ぶ先がなかなか見つからない「救急搬送困難事案」は、全国で年間およそ16万7000件。
いわゆる「たらいまわし」が、今も相次いでいる。
まさに、こちらの90代女性も…。
搬送された90代女性の息子「四十何件、断られて。こちらで診てくれるって言われた時には、あー良かった」
なんと40件以上病院に受け入れを断られ、100キロ以上離れた千葉県から搬送されてきた。
搬送された90代女性の息子「(救急隊が)どこにかけても1時間、2時間、3時間、4時間、5時間くらいかかったかな」
なぜ搬送先が決まらなかったのか?「深夜で対応が難しい」という説明が多かったという。
そして…。
搬送された90代女性の息子「高齢ということと、頭を打ったのと、熱がある。3つ重なったので断られてしまった。神奈川に受け入れてくれる病院がある。遠いですけどいいですかと」
なぜ、この病院では24時間365日「断らない救命救急」が実現できているのだろうか。
取材を続けると、病院の全体会議で、あるヒントがあった。
湘南鎌倉総合病院 小林修三院長「救急を断らないというポリシーは、絶対に死守していかないとならない。ER(救命救急)の現場対応だけでなく、各診療科がバックアップして成り立っています」
救命救急センターに駆けつけてきたのは小児科の医師。
細菌感染の疑いがある10歳の女の子の元へ。
十二指腸潰瘍(かいよう)の患者が搬送されると、「消化器」の専門医が加わり、その場で内視鏡治療。
この病院では、10以上の分野の専門医も24時間スタンバイ。
病院全体が救命救急をバックアップする体制だ。
医師の意識改革を行い、「断らない救急」を実現。
今も改善を続けている。
そしてもう1つ「断らない」秘密がある。
関根医師「完全3交代制。8時間ごとに入れ替えをして、自分が勤務ではない時、オフタイムは呼び出しなし」
24時間勤務が多いという救命救急で、8時間の3交代制を導入。
オン・オフの切り替えによって、集中力がアップ。
医療の質・効率が格段に上がったという。
しかし、そうなると、医師の数が確保できるのだろうか?
肺炎の患者に話しかける久志本愛莉医師(29)。
午後3時を過ぎると…。
久志本医師「はい、終わりました。きょうも元気に帰ります」
実は、彼女の働き方は…。
久志本医師「子どもがまだ生後9カ月で、夕方の時間を大事にしたい。9時から15時の6時間勤務で働いています」
時短勤務も取り入れ、AIでシフト管理。
働きやすい環境をつくったことで医師の確保にもつながっている。
リーダーの関根医師も、5年前に3カ月の育休を取得した。
関根医師「自分たちの働き方を良くするのはとても大事。救急医療の質を高めようと思ったら、自分たちが元気で幸せでなければいけない」
そんな“絶対に断らない”救命救急に、3歳の男の子と母親が深夜に直接やってきました。
医師「ちょっと見てもいいかな」
救急外来に来た男児の母親「お姉ちゃんが学校で育てた大豆を鼻に入れてしまった。取ろうとしても、どんどん奥に入ってしまって危ないと思って来て。先生に異物の出し方を教えてもらった」
無事、豆もとれ、診察でも異常なし。
親子は安心して自宅に帰った。
搬送されてくる患者のなかには、一刻を争う人もいる。
「胸の痛み」を訴える70代、一人暮らしの男性。
救急車の中で、一度、心肺停止になったという。
その理由は心筋梗塞(こうそく)。
循環器の専門医も駆け付ける。
循環器の専門医「心筋梗塞という症状で心臓の血管がつまっている。緊急でカテーテル治療をしないと、また心臓が止まってしまう」
意識は戻った男性ですが、いつ再び心臓が停止してもおかしくない状態だ。
緊急治療を行う部屋へ移動し、心臓の血管を確認する。
この部分でつまり、一部の血流が途絶えていた。
カテーテル治療は、直径およそ2ミリの細い管を血管内に挿入。
狭くなった血管を医療用の小さな風船で拡張する。
医師「そっとそっと。位置決めはそっと、もうひとこえ」
1時間に及ぶ治療で、つまっていた血管の血流が回復した。
医師「お疲れ様です。(血管の)流れが良くなったので、治療はうまくいっています」
翌日、集中治療室に入院する男性は、胸の痛みも消え、順調に回復していた。
心筋梗塞で搬送された70代男性「ちょっとおかしいと思ったら、すぐに病院に駆け付けるのがいい。年には勝てません」
絶対に断らない救命救急。
まさに今も、患者の命と向き合っている。
参照元:Yahoo!ニュース

