マンホールカード「転売」止まらず、印刷ミスは6万円以上の高値も 自治体が無料配布・1人1枚なのに服を着替えて何度も
全国各地のマンホール蓋の図柄をあしらった「マンホールカード」が、インターネットのフリーマーケットサイトに出品されている。
自治体が地域のPRで無料配布しているが、近年はコレクターに人気で、高値が付くケースもある。
税金で仕入れたカードが「転売」されている現状に、自治体などは頭を悩ませている。
「市内に観光に来てもらうためにやっているのに……」。
大阪府柏原市のマンホールカードの担当者は、困惑した表情を浮かべた。
市は昨年5月、バンダイナムコグループと協力し、人気アニメ「機動戦士ガンダム」と市特産のブドウを描いたマンホール蓋を設置。
同7月、同じデザインのカード1万枚以上を用意し、「1人1枚」で配布し始めた。
配布初日の昼頃にはカードがフリマサイトに出品され、2000円で取引されたケースもあった。
出品目的かは不明だが、配布場所には服を着替えて何度も来る人や、たまたま通りかかった人に声をかけて一緒に訪れ、2枚受け取ろうとする人がいたという。
担当者は「不正が明らかな場合は断るが、手段が巧妙だと対処できない」と話す。
フリマサイトでは、全国各地のカードが出品されている。
多くは1枚数百円程度だが、初期生産分に付される通し番号「1番」のカードは希少性があるとして高値で取引される。
珍しい印刷ミスがあるという大阪市のカードは、6万円以上で売られている。
カードは、国土交通省や業界団体などでつくる「下水道広報プラットホーム」(GKP)が企画。
通し番号やマンホールの位置情報などを盛り込んだ全国統一の規格を設けている。
自治体がデザインなどを申請し、1ロット(2000枚)4万9500円で仕入れる仕組みで、2016年以降、全国700以上の自治体などが1000種類以上を無料配布してきた。
現地に足を運ばなければ入手できない希少性や、地域性豊かなデザインがコレクターに人気となり、近年は新カード発行時、1日1000人以上が訪れることもあるという。
一方で、人気に比例するように増えたのがフリマサイトへの出品だ。
自治体が一度に発行できる枚数は予算の都合で限られており、もらえない人が出るのを防ぐため、GKPは「1人1枚」「郵送不可」と決め、自治体とともに「転売禁止」を呼びかけてきた。
それでも出品が後を絶たないため、GKPは昨年、高額で取引されやすい通し番号「1番」を初期生産分以外にも付して、希少性を下げる取り組みを始めた。
自治体によっては、配布の際に名前や住所を聞く「アンケート」を実施して対策している。
ただ、希望者が殺到すると、過去に渡した人かどうかチェックが難しく、「今年度から名前を聞くのをやめた」(岩手県花巻市)という自治体もある。
こうした事情はほかの「ご当地カード」も同じだ。
全国の自治体や企業が観光スポットを紹介する「ロゲットカード」では、兵庫県姫路市などがイベントで無料配布した姫路城などのカードが、フリマサイトで6000円以上で取引された。
対策のため、一部の企業はカードの有料化に踏み切ったが、自治体では営利目的と受け止められかねないため、販売するケースはないという。
牧和生・京都橘大准教授(文化経済学)の話 「ルールを無視した出品が続けば、配布をやめざるを得ない自治体が出てくる。結果的に困るのはファンなので、節度ある収集を心がけるべきだ。自治体側は、カードをマンホール維持に向けた寄付の返礼品とすれば、出品目的で来る人が減るのではないか」
河井孝仁・東海大客員教授(行政広報)の話 「配布後は所有権が移るため、自治体が出品を規制することはできない。重要なのは費用対効果だ。それほど人気ならば、地域の認知度アップに役立っているはず。自治体がその効果を重視するなら、予算を確保して多めに発行すればいい」
参照元∶Yahoo!ニュース