尾瀬「入域料」の議論浮上、群馬県が発案「環境保全へ早く導入したい」 福島県は観光客の落ち込み懸念

尾瀬国立公園の外観を撮影した画像

福島、群馬、栃木、新潟の4県にまたがる尾瀬国立公園を巡り、「入域料」導入の議論が浮上している。

環境保全の費用を賄うため登山者に負担を求めたいという群馬県の発案だが、福島側は観光客の落ち込みにつながりかねないと慎重な姿勢だ。

「入域料を尾瀬においても導入する必要があるんじゃないか」。

発端は昨年12月、群馬県の山本一太知事の県議会での答弁だ。

一般質問で入域料に言及し、「早く実証に着手し、導入したい」と踏み込んだ。

同公園は地域の主要な観光資源となっており、環境省関東地方環境事務所によると、2024年は15万5630人が訪れた。

登山口は群馬に四つ、福島に五つあり、入山者の約3割が福島側からだった。

群馬県が入域料を提案する理由の一つに挙げるのが、公園内を散策するための木道の整備費用だ。

高地での整備は人件費や輸送費がかさみ、年間数千万円がかかっているという。

同県自然環境課は「入山者に自然保護の意識を持ってもらうためにも協力をお願いしたい」と説明し、関係者と導入を協議する検討会の経費を新年度の当初予算案に盛り込む方針だ。

関係者の範囲は未定という。

木道などの費用は福島側でも生じている。

福島県自然保護課によると、同公園で県が管理する登山道23キロのうち木道は12キロ。

24年度は木道や展望台の整備に約8800万円がかかった。

同課も財源確保に課題があると認めるが、入域料には「ニュートラルな立場」だ。

その上で、5登山口のうち四つがある「檜枝岐村の意見が大事だ」と強調した。

人口484人(昨年12月末時点)の同村には旅館・民宿が20軒以上あり、宿泊客数は年約5万人(23年度)。

その多くが尾瀬国立公園への入山者だ。

同村総務課は「群馬が徴収するから、こちらもという話にはならない」とする。

14年に31万5400人だった同公園の入山者数はコロナ禍を経て24年は約16万人に減少しており、関係者には入域料導入で入山者の減少に拍車がかからないかとの不安がにじむ。

国立公園利用者に入山料や協力金として負担を求める事例は、環境省が把握しているだけで全国に17件ある。

新潟県と長野県にまたがる妙高戸隠連山国立公園では20年に入域料を導入し、登山口などで500円を目安に任意での支払いを求めている。

新潟県妙高市によると、国の特別天然記念物ニホンライチョウの保護や自然環境の保全の財源としており、24年は約480万円が集まった。

導入後の入山者数に大幅な増減はなく、同市は「入山のほとんどが新潟側からなので導入しやすかった」とする。

4県にまたがる尾瀬国立公園の場合、関係者も多岐にわたる。

環境省関東地方環境事務所は「幅広く意見を聞くことが必要な事案」との認識を示す。

木道の在り方を議論する検討会の初会合が2月に開かれる予定だが、群馬県の提案への対応は未定だという。

群馬県自然環境課の担当者は「各県で温度差が出る話。

群馬だけ入域料を取ることも否定はできない」とした。

北海道大の愛甲哲也教授(造園学)は、エリアが複数県にまたがる北アルプスで長野県が単独で先行して協力金を導入した例もあるとしながら、「地域の声も拾い上げながら合意形成をし、納得できるやり方を丁寧に議論していくべきだ」とした。

参照元∶Yahoo!ニュース