「定規やペン、手元にあるものすべてで掻きむしり」アトピーに悩まされた芸人・田村裕「ぐっすり眠れたのは人生で3日」
体が常にかゆくて、夜も眠れない。
お笑いコンビ・麒麟の田村裕さんは幼いころから、アトピー性皮膚炎に悩まされていた。
熟睡できたのは人生でたったの3日しかないというほどの日々を経て、かゆみとの向き合い方が変わってきたと言う。
田村さんは、いつからアトピー性皮膚炎で悩まれていたのでしょうか。
田村さん:生まれつきですね。物心ついたときからずっとかゆくて。常に全身を掻きむしっている状態でした。小さいころは「かゆくて寝られへん」って言って、よく泣いていました。体のどこかがいつもかゆいので、何をしていても集中しきれなかったです。
── かゆみで寝れないのはつらいですね。
田村さん:当時は、病院でもらった薬で治療をしてはいたのですが、かゆみはなくなりませんでしたね。寝られないと泣くたびに、母親が「かゆくない肌に産んであげられへんくて、ごめんな」と謝っていたことを覚えています。とにかく、生まれたときからずっとアトピーでした。いちばん酷かったのは小学2年のころだったと思います。
── どのような症状だったのでしょうか。
田村さん:掻きすぎて傷口から浸出液が出て、全身ジュクジュクの状態でしたね。そのときはあまりにもひどくて、病院で包帯を巻いてもらっていました。今みたいに対処法がわからなかったというのも原因としてあると思います。薬は塗るけど、保湿はちゃんとしていませんでした。今はアトピーの症状は出ているのですが、年をとるごとにかゆみはだんだんなくなってきました。かゆいんですけど、当時と比べればかなり落ち着いています。
── テレビなどで見ている限り、アトピーの症状はわかりませんでした。
田村さん:昔は顔にも湿疹があったんですけどね。この世界に入って、テレビに出るようになってから、顔には湿疹が出なくなったんです。特別なことをしたわけではないので、不思議ですよね。ただ、顔以外の見えていない部分は今でもかゆいです。アトピーの方はわかると思うんですけど、かゆい部分に流行りがあって。背中がかゆい時期とか腕がかゆい時期とか。そのときどきでかゆい場所が変わっていきます。かゆくない部分でも、今まで掻きすぎて黒ずみが残っていますし、皮膚も固くなっています。
── 現在はどのように治療をされているのですか?
田村さん:今は自分の肌質に合った保湿ケアを見つけたので、化粧水とオイルで保湿をしています。保湿をちゃんとするようになってから、症状がかなりよくなって、周りの人からも「肌がめっちゃきれいになった」と言われるようになりました。あとは爪のケアですね。昔は、爪を限界まで短く切っていたんですよ。爪が少しでもあると、どうしても肌を掻いて傷つけてしまうから。
── 肌を掻いても傷つかないように、爪を短くしていたんですね。
田村さん:そうです。でもそうすると、今度は爪以外で掻けるものを探し出すんです。たとえばペンとかリップとか定規とか。その辺にある、硬くて長さがあるものを探して、それで皮膚を掻くんです。でも、そんなので掻きむしるから余計にひどくなる。爪を短くしている意味がまったくないと気づいて。最近は「爪を切りすぎない程度に切る」ようにしています。ちょっとはけるけど、掻きすぎない長さをキープしています
── 掻かないようにする、ではなくてコントロールできる長さですね。
田村さん:前までは、掻かないことがアトピーを治すいちばんの近道だと思ってたんです。でも、我慢するとその瞬間は掻かなくても、どこかで爆発しちゃうんですよね。それで結局、定規とかペンでいちゃう。だからコントロールできるうちに少し掻いて、爆発しないようにしています。手の届きにくい場所がどうしてもかゆくて、変な体勢で掻いていたら、腱鞘炎になったこともあるんです。だから、無理はしないようにしました。
── 今は夜中に寝られていますか?
田村さん:小学生のころよりはマシですけど、やっぱり常にかゆくて睡眠不足です。それはずっと続いています。「ぐっすり眠れた―!」って言えたのが、人生でトータル3日間しかないんですよ。そのときはたぶん、いろんな条件が重なって奇跡的に寝られたんでしょうね。その3日間はなんかもう、ツッコミの言葉も間違えないし、思った言葉がバンバン出てくるみたいな。すべての回線が繋がった!という感覚がありました。それ以外はやっぱり常に寝不足だなと思います。ボクがツッコミの言葉を間違えるのは寝不足のせいですね(笑)。
── 芸人さんの場合、過酷な環境でのロケなど、肌が悪化しそうなシチュエーションも多そうですよね。
田村さん:一度、アメリカのアルバカーキという場所で、大富豪が山の中に隠したお金をトレジャーハンターとして探し出す、っていう企画があって。山の中で3日間、生活をしていたんですが、山の木が全部杉だったんですよ。ぼく、杉花粉のアレルギーもあって。もうくしゃみが止まらなくて、ずっとくしゃみとかゆさの中、ロケをしていました。3日間のロケで1年間分以上のアレルギー物質をもらってきたみたいで、帰国後もずっと体が真っ赤で、炎症を起こしていました。でも、仕事は仕事ですからね。そこはもう仕方ないものとして考えてます。
── 現在は、どのようにアトピーと向き合われていますか。
田村さん:自分の肌に合った保湿剤でこまめに保湿をすることですね。あとは、何事もそこそこに考えることです。ツルツルの肌になりたいと思っていたんです。完全に治したいって。でも、それは無理だなと。完璧を求めると、どこかで暴走してしまいます。ある程度掻くのはしょうがない。完璧を求めないようになりました。
── 爆発する前に、自分の気持ちをコントロールするのはいいのですね。
田村:あとは、自分はアトピーじゃないと思い込むことですね。アトピーだと思うと不思議と掻いてしまうんで。肌を触ってカサカサしていても「大丈夫、俺の肌はなんともない!」って自己暗示にかけています。「アトピーだから爪を切らないといけない」「アトピーだから激しくいてはいけない」と追い込むのではなくて、アトピーと適度に距離をとっていくことで痒みもかなり落ち着いてきました。「これが自分の肌だから」と自分を認めることも大事かなと思っています。
参照元∶Yahoo!ニュース