東京都が「週休3日」導入へ 背景に採用低迷 民間が先行も制度に一長一短
東京都は令和7年度から、職員が「週休3日」を選択できる制度を導入する。
すでに一部自治体や企業が取り入れているが、厚生労働省の令和5年調査によると、週休3日以上の導入企業は7.5%に過ぎず、定着とはほど遠い。
都の導入背景には民間との人材獲得競争の激化があるが、週休3日には一長一短がある。
都は現在、土日祝日の休みに加えて4週間で平日休みを1日取得できるフレックスタイム制を取り入れている。
7年度からは4週間で計155時間の労働時間を確保すれば、週1日、平日に休みを取得できる運用に変更。
週4日、1日10時間程度の勤務で、週休3日とすることが可能になる。
週休3日の導入経緯について記者会見で「職員がより一層働きやすい都庁にしていく」と強調した小池百合子知事。
とはいえ、先に採用しているフレックスタイム制が浸透しており、都庁内からは「週休3日はさほど話題になっていない」との声も伝わる。
背景には激しさを増す人材獲得競争がある。
都の職員採用試験の倍率は6年度が1.6倍と前年度比で0.8ポイント下がった。
ここにきて大手民間企業が相次いで初任給の引き上げを表明しており、さらなる公務員離れの危機にある。
ある都幹部は「霞が関(国家公務員)同様、都庁の新卒採用状況は厳しい。10年、20年後が心配だ」と漏らす。
働きやすさをどこまでアピールできるかがカギとなりそうだ。
週休3日には、1日の労働時間が長くなる「総労働時間維持型」、労働時間が減っても給与が変わらない「給与維持型」、労働時間の減少に応じて給与も減る「給与減額型」がある。
導入手法によって一長一短がありそうだ。
キュービック(東京都新宿区)が運営する転職支援サービス「ミライトーチ」が昨年6月に実施した調査によると、週休3日を導入している企業の社員のうち、約3分の2が週休3日に肯定的。
一方、「出勤日の仕事が詰まり余裕が無くなった」「(自分が休んでいることで)各所との連絡が滞り業務に支障が出た」などのマイナス面も指摘されている。
第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミスト:労働者の数が潤沢だった昔は雇用側が強かったが、人手不足の現在は労働者側の立場が強まっている。
選択的週休3日制は、立場が弱くなった雇用側が人を引き付けるための手段であり、福利厚生の一部分と解釈すべきだろう。
賃金を減らしたくない人、自分のペースで働きたい人など労働に求めるものは十人十色だ。
同じ週休3日でもパターンがある。
1つの同じ職場で働く人たちが、それぞれの事情でさまざまな働き方を選択できるというのが最も望ましい。
人材獲得の一環として今後、雇用側が週休3日を取り入れる動きは加速するとみる。
ただ、導入が進むのは、現時点でもある程度の人材がそろっており、生成AI(人工知能)などのテクノロジーによって効率化の恩恵を受けやすい大企業が中心になってくるだろう。
結果的に中小企業に人が流れづらくなり、格差がさらに広がる恐れも考えられる。
政府はこれまで週休3日の普及を呼びかけてきたが、実現には人手不足を補うために生産性や効率性の向上に対して投資する中小企業に助成を行うなどの政策が必要になってくるだろう。
参照元∶Yahoo!ニュース