日本各地に生まれ続ける“ゴーストタウン”企業の撤退で人口激減、街が沈没 都内一等地でも起きる理由とは
少子高齢化による人口減少が止まらない日本において、各地で人がいない“ゴーストタウン”が生まれ続けている。
YouTubeでは、ゴーストタウンを巡るコンテンツが人気となるほどで、様々な要因で急速に過疎化した地域の映像はインパクトがあり、なぜ急に人がいなくなってしまったかという理由とともに、不気味さも漂う。
YouTuber・のぶりんさんも、日本各地のゴーストタウンや過疎化の地域を動画で発信。
見過ごされた地域の価値を、伝えている。
今回、のぶりんさんがやって来たのは栃木県矢板市。
地域全体が“ゴーストタウン予備軍”とうわさされている。
なぜここまで衰退してしまったのか。
「シャープの矢板工場が2018年12月21日に閉鎖され、そのままの状態。全盛期には、工場で働く人が3100人いた。もともとシャープが来る前は、人口2万人台だったが、それが3万人台になってどんどん潤った街だった」。
一時は「シャープの城下町」とも呼ばれ、地域も潤い、多くの人で賑わったが、不況の煽りを受ける形で規模が縮小、吸収合併により工場が閉鎖されると、住民の激減とともに街も寂れた。
当時、賑わっていたかもしれないラーメン店も廃墟のようになり、シャープの研修所にも人の気配は全くない。
かつては店がズラリと並んでいた駅前も、シャッターが目立つ。
地元のタクシー会社に話を聞くと「いろいろなことが撤退して様変わりした。なんとなく街自体が沈んでいる。全体として『シャープがあるから安泰』という感じはあった」。
同様に、一企業が撤退するだけでゴーストタウンになる危険性があり、また産業の衰退だけでなく昭和の高度成長期に建てられた住宅地の老朽化や高齢化による住民減少が原因にもなる。
かつて経営破綻した夕張市の元職員、ゴーストタウンに詳しい不動産プロデューサーに話を聞いた。
ゴーストタウンと化した夕張市は、かつて炭鉱の町として栄え、最盛期では人口12万人を数えたが、2005年に炭鉱の閉山が相次ぎ、人口は約10分の1になる1万3000人にまで減少。
翌2006年に財政破綻が明らかになり、債務は約630億円に。
実際に返済する必要がある借金も約353億円。
人口流出の食い止めと行政サービス確保に観光振興や住宅・福祉対策と多額の支出があったのが原因だ。
2007年からは行政のスリム化、観光などの新産業の模索が進み、2024年には人口は6107人にまで減ったものの、残り負債も約54億円にまで減った。
左近航さんは、経営破綻後の2011年5月から夕張市役所に入庁した。
「当時は頑張っていた職員も結構疲弊していて、行政に何かを求めても実現できないので、すごく地域に閉塞感もあった。生活面で言えば、小学校が6校あったところが1校にまで減った。水道料金が値上がりしたり、公共施設も閉鎖になったり。ネガティブな影響が出ていた。予算がない、人口が減るなど、いろいろな課題がある中で、一番自分が痛感したのは、地域で新しいことが起こらないことが、非常に苦しかった」。
不動産プロデューサーの牧野知弘氏は「これからもゴーストタウンは増え続ける」という。
「当然、人口の減少というのがあるが、もう一つ大きな要素なのが働く場所。今まではシャープの大きな工場のように、みんながそこで働くという形だったが、今は日本人のほとんどが第3次産業、つまりサービス業で働いている。サービス業は、ある程度人が集まっていないと成り立たない。介護であっても、ある程度お年寄りが集まっていて、そこに集中的に労働力を投下するのが介護ビジネス。『人が集住する』ということは逆にいうと『ゴーストタウンがいっぱい生まれる』ということ」と説明した。
「人が集まる」という意味では、都心部はゴーストタウン化とは無縁かと思われるが、決してそうではない。
東京のど真ん中でも起きている。
牧野氏は「汐留エリア」「湾岸タワマン・晴海フラッグ」「代官山・自由が丘」の3例を挙げた。
まずは汐留エリアだ。
「汐留には『カレッタ汐留』という有名な商業棟がある。ここを覗くと完全に地方で言うシャッター通り商店街になっている。働いている人が少なくなったというよりも、働いている人がランチタイムになると、今まではカレッタに食事に行っていたのに、最近の人は自分のお弁当などでいいという。上司が部下4、5人を連れてランチを食べに行くような習慣がなくなった」とライフスタイルの変化が見て取れる。
「カレッタ汐留のみならず、都内の大きなビルの地下にはだいたい飲食店があるが、空き店舗だらけになっている」。
湾岸のタワマン・晴海フラッグは、また別の理由だ。
「ここは夜になると電気がついていないと言われるようになった。実際に住んでいる人が買っているのではなく、投資をして人に貸さず、3年以内に売ってしまう人が続出している。実際に住宅として使われているわけではない」。
そして代官山・自由が丘は「ファッションのセレクトショップが集まるハイセンスな街というイメージが非常に強いが今、代官山の駅前は空き店舗だらけ。セレクトショップが全部撤退している。ファッションのあり方が変わって、ファストファッションで全然構わないし、セレクトショップで高い物を買って少し背伸びする若い女性が減った。今までのブランド支持者も高齢化した。また、都内のマンション価格が非常に上がり、自由が丘や代官山の土地の値段も上がると、普通のセレクトショップでは家賃が払えない。とてもじゃないが商売できないと逃げてしまった」。
各所で起きるゴーストタウン化に打開策はあるのか。
牧野氏は「自治体と話をするとみんな移住・定住を掲げるが、無理だ。日本人の人口自体がどんどん減っているので、所詮は自治体同士の人の奪い合いになる」と明言。
これを踏まえ「人が街に出入りする仕組みを作ることが重要だ。具体的には人が集まる楽しさ、強烈なコンテンツを作ること。私は湘南エリアに住んでいるが、湘南のイメージは海があって明るくて暖かい。ただ、同じようなところは日本中、どこにでもある。それでも『湘南』というような、1つの大きなブランドを作れればいい」とした。
またEXIT・兼近大樹も「その特色を持ったものが一気にギュッとあるから、みんなが集まる。特色を持った場所をいっぱい作って、それをわかりやすくすることで、みんながどこで住みたいかなとか、どこで働けるかなとかもわかりやすくなる。子育てしやすい街、老人が住みやすい街があって、老人に住みやすい街では介護の仕事の人たちがいっぱい集まり、そこでまたいろいろな店ができる。そういう分かりやすい特色をつけるのがいい」と加えていた。
参照元∶Yahoo!ニュース