30年放置の元キノコ工場が廃虚に 異臭も、ずさんな対応に憤る住民

茨城県利根町の外観を撮影した画像

茨城県利根町が国の補助金を使い約35年前に整備したキノコ工場が、4年しか使用されずそのまま放置され廃虚となっていることが町や周辺住民への取材で判明した。

町のずさんな管理に近隣住民の不信感が高まっている。

町によると、この施設は国の補助金などで整備された「農林業近代化施設」。

建設費は約1億4400万円で約9500万円の補助金が使われた。

1989年8月から地元のキノコ生産組合が栽培を始めたが、4年で稼働を停止。

再建が困難となったため、95年に競売にかけられ個人に売却された。

しかし、翌96年、農業振興に用いようと町が再び施設を約4116万円で購入した。

近くに住む住民の男性(69)らによると、施設は93年に生産組合が撤退してから約30年そのままの状態で放置されていた。

プラスチックや発泡スチロールのケースが山積みされ、近所の子供たちの遊び道具となっていたという。

そうしたゴミが用水路に流れて異臭が生じ、住民が自主的に清掃をしていた。

男性は「役所に言っても見には来るが、片づけてくれなかった」といらだちをあらわにする。

2016年2月19日には不審火による火災が発生。

取手署によると建物の一部(約20平方メートル)が焼けた。

何者かが侵入し、内壁もはがされている状態だ。

住民は、23年12月ごろから町職員が施設内の木を切ったり粗大ゴミを運んだりしているのを目撃。

24年3月ごろには清掃で白い粉じんが舞っていたという。

古い建物のためアスベスト(石綿)が使用されていないか気掛かりだった。

町などによると、町職員が片づけをしていたのはキクラゲ栽培のために施設を利用したいという土浦市の事業者が現れたからだった。

4月下旬には町が委託した業者が清掃を行い、施設内のがれきが撤去された。

アスベストを含む建物を解体・改修する場合には事前に調査をすることが法律で義務付けられているが、町は「建物の解体ではなく『清掃』なのでアスベストの調査は不要」と判断。

それでも住民の男性は「壁がはがされて解体中のような状態になっていたので調査をして適切に処理をすべきだったのではないか」と町の対応を疑問視している。

結局、土浦市の事業者は8月に辞退を決定。

代表者は取材に「負の遺産を活用して町の助けになればと思っていたが、住民の理解が得られていない中でやることではない」と撤退理由を明かした。

町は9月にアスベスト調査を実施し、壊れた壁などからアスベストが検出された。

町は「解体工事などをしなければ飛散する可能性はほとんどなく、人体への影響はない」という見解だ。

町農業政策課の担当者は施設を長年放置してきた理由について「誰も手をつけようとする人がいなかった。苦情もあったが、当時は深刻なものと捉えていなかった」と釈明している。

住民157人は施設の早期除却や町の手続きの検証などを求める請願を町議会に提出し、12月に採択された。

町は当初費用面から施設の除却に否定的な考えを示していたが、住民の求めに応じて1月23日に解体を決定。

2月1日に報告会を開き住民に説明する。

ただ、解体時期や予算内で建物全てを解体できるかなどは決まっておらず今後検討する。

町に対応を求めてきた男性は「30年以上放置していて管理できていなかった施設は早期に全てを解体するべきだ。一部解体では全く話にならない」と話している。

参照元:Yahoo!ニュース