インフルエンザ 目立つ感染後の細菌性肺炎 大人の入院も増加 「あまり経験したことない状況」
インフルエンザの流行が続く中、感染して入院する患者が多くなっている。
例年、入院するのは子どもが中心ですが、今シーズンは大人も目立つという。
藤沢市民病院(神奈川県)臨床検査科の診療科部長、清水博之さんに理由などを聞いた。
――入院する人は、いつ頃から増え始めたのですか。
11月末から12月初旬ごろです。インフルエンザの感染者が増加した時期と重なります。今は、新型コロナウイルスによる入院患者も増えていて、病棟ではインフルエンザの方が20~30人、新型コロナの方が10人くらいといった感じです。退院されても別の患者さんが途切れず入ってくるという状況が続いています。
インフルエンザで入院する人の多くは例年、子どもです。〈1〉熱性けいれんを起こしやい〈2〉水分補給ができない――といった理由からです。しかし、今シーズンは当初から、大人も目立ち、これまであまり経験したことがない状況が続いています。
――大人は、どのような患者さんが入院してきますか。
主に、〈1〉血液中の酸素濃度が低い〈2〉食事を取れなくなっている〈3〉高齢者〈4〉基礎疾患がある――といった患者さんです。
インフルエンザによって肺炎になる患者さんもいます。また、インフルエンザに感染した後、続けて肺炎球菌や黄色ブドウ球菌といった別の病原体に二次感染し、細菌性肺炎を発症するケースが目立ちます。
――肺炎を起こす大人が多いのはなぜですか。
現在流行しているウイルスは、2009年に新型インフルエンザとして蔓延(まんえん)したA型の「H1N1」というタイプで、ほぼ100%を占めています。ウイルスに感染すると、気道の粘膜がダメージを受けます。特に、H1N1にかかった後は、外から入ってきた病原体が体内に入らないようにするバリア機能が低下し、インフルエンザとは別の細菌にも感染しやすい状態になってしまいます。
新型コロナの感染拡大の影響で、インフルエンザはしばらく流行しませんでした。そのため、多くの人は免疫が低下しています。H1N1の抗体をもっている日本人の割合は、5~29歳、65~69歳以外は、10%前後という国立感染症研究所の報告もあります。抗体がない人が感染すると、大人でも重症化リスクが高まります。それが、今の病棟の状況につながっていると考えられます。
――インフルエンザ治療薬「タミフル」の後発薬の供給が一時的に止まっています。治療に影響は出ていますか。
インフルエンザにかかった場合、重症化を防ぐには早期診断、早期治療が重要です。供給が止まった医薬品と別のものが使えればいいのですが、そうすると今度は、ほかの医薬品が足りなくなって供給できなくなってしまうのではないかという懸念もあります。
――感染しないようにするには、どのような対策が必要ですか。
まだ、ワクチンを接種していない人は、今からでも遅くないので打ってほしいと思います。インフルエンザワクチンは、H1N1以外にも、例年、流行することが多い「H3N2」(A香港型)、B型に対しても、感染や重症化を防ぐ効果が期待できます。
基本的な感染対策も忘れないでほしいと思います。こまめに手を洗い、手指消毒をする。マスクは場面によりますが、人混みに行くときや電車に乗るときは、着用すると 飛沫(ひまつ)感染を防ぐ手立てとなります。室内は、定期的に換気をしたり、適度に加湿したりするとよいでしょう。
基礎免疫を高めるため、十分な睡眠をとり、疲れを残さないようにすることも大事です。
また、歯磨きなどによって口の中をきれいに保つことも重要です。歯垢(しこう)(プラーク)に含まれる病原体の中には、インフルエンザウイルスを増殖させたり体内に侵入しやすくしたりするものもあります。プラークが多い状態で誤嚥をしてしまうと、肺炎になるリスクも高まります。口の中を清潔に保つことも、忘れないでほしいと思います。
参照元:Yahoo!ニュース