給食ないと「カツカツ」、アルバイト2つ掛け持つ高校生 「相対的貧困」の実態は

貧困をイメージした写真

学校の制服代や給食費が払えないなど、ほとんどの人が持っているものを持てない状況「相対的貧困」。

すぐに命の危険があるような「絶対的貧困」に対して、一般世帯の所得の水準以下で生活を送ることによる貧困を指す。

2021年の国の調査では「相対的貧困率」は15.4%で、子どもの貧困率は11.5%。

およそ9人に1人の子どもが日常生活や健康、学業などさまざまな「貧しさ」に直面している。

しかし、見た目では分からないことや、羞恥心などから若者の貧困問題は発覚しにくい。

現場の生の声から実態を報告する。

アルバイトを2つ掛け持ち「もやしだけ食べる」日もアルバイトを掛け持ちして学校に通う生徒。

趣味の音楽活動が癒やしだという。

「外食は我慢してなるべく自炊している。お金がない時はご飯にふりかけをかけたり、もやしだけ食べたりしたこともある」。

千葉県内の公立定時制高校に通う3年の男子生徒(17)は質素な生活ぶりを打ち明ける。

家庭の事情で1人暮らしをする中、家賃や光熱費は親が支払ってくれるが、携帯電話代など生活費はアルバイトを2つ掛け持ちしながら払う。

特にありがたいのは学校の給食。

夏休みなど長期休みに入ると給食が食べられなくなるので「毎日カツカツ。欲を言うと学校に行きたいぐらい」と苦笑する。

朝ご飯は食べず基本的に1日2食で、少しでも安い洗剤などの商品を求めて複数のスーパーを巡ることも。

それでも、夜は授業や部活に加え、生徒会活動にも励んでいる努力家だ。

船橋市内で開かれた食品配布会で菓子やジュースを受け取っていた別の公立高校に通う3年の女子生徒(18)は、来春の大学進学に向けて勉強中だ。

この日もこれからアルバイトだといい「大学の入学金も気になるし、親からは奨学金を借りてねと言われている。返していけるのかは正直心配」と吐露する。

しかし、スマホを持ち、明るく話す様子はいたって普通の高校生。

2人とも、見た目だけでは苦労が分かりにくい。

2024年度の「千葉県こどもの生活実態調査」などの結果によれば、低所得や家計のひっぱくなどの生活困難を抱える子育て家庭の割合は22.5%。

これらの家庭のこどもは、自己肯定感や健康状態などが他の家庭に比べて低い傾向にあるなど、貧困が子どもに与える影響は依然として深刻な状況にあるという。

2024年6月に成立した「改正子どもの貧困対策推進法」には、貧困によって適切な養育・教育・医療、多様な体験の機会を奪われないようにすることが明記された。

しかし、支援の現場からは、相対的貧困の実体把握の難しさから、行政側がどれだけ実効性のある対策に踏み込めるか疑問視する声も上がる。

「こっちはジュースもあるよ」「ほら、リュックを前に持てば袋が入るんじゃない?」。

生徒たちが飲み物や菓子、カップラーメンなどの食材を受け取り、うれしそうな表情を浮かべる。

食品配布を主催するのは貧困に悩む若者を支援するNPO法人「ハイティーンズサポートちば」(吉永馨理事長)。

近くの商店会なども協力し「フードバンク」などの協力を得て、高校での食料の無料配布を行うほか、若者の学習や就労の支援を行っている。

同会が行ったアンケートでは、「1日1食」しか食事をしていないと答えた生徒もおり、物価高の中で食品配布は重要度を増している。

それに加え、困っている若者との信頼関係をつくり、必要な支援につなげる第一歩でもある。

吉永さんは「相対的貧困って目に見えない」と語る。

中学生や高校生の場合、皆が同じ学生服を着ていることもあり、一見して「悩み」がわかりにくい場合がある。

同会では高校生が放課後に学校内で地域の人たちと交流する「校内居場所カフェ」も実施している。

「遠慮や恥ずかしさから困っていても自分から言い出せない」(同会)とする若者が声を出せるよう、少しずつ丁寧に関係性を築いている。

同会は2024年11~12月に、食品配布会などで関わりがある全日制、定時制、通信制の3つの高校の生徒に生活実態などに関するアンケートを実施。

「この1~2年あてはまるもの」を尋ねる質問には、全日制、通信制の20~30%の生徒が「遊びに行く回数が減った」「買い物を控えた」と回答。

さらにはどの高校でも「医療費・通院回数を減らした」とする生徒が6%いた。

同会の副理事長、三尾敬次さんは「アンケートは3つの高校を対象にしたものであり、高校生全体の平均的な実態、意見をまとめたものではない」と前置きしつつ、「ただ、少しでも現在の高校生の置かれている状況を鮮明に知ることができるのではないか」と話す。

三尾さんは「高校生の世代は、経済的困難や生きづらさを抱えていても〝SOS〟が出しづらく、実態は外からは見えにくい。また、思春期であり自己防衛に走りやすく外部からの働きかけに対してなかなか心を開こうとしない」と現場の実情を説明し、こう訴える。

「これまで10代後半から20代前半の世代は、主権者としての成長、『社会的自立』を求められる一方、子どもの貧困対策から取り残されてきた。行政による高校生をはじめとした貧困の実態把握が抜け落ちているのではないか。学校でも家庭でもない『第三の居場所』などを通して、個別の声を拾い上げ、必要な支援につなげることが必要だ」。

参照元∶Yahoo!ニュース