カート運転の「90度ルール」を知る必要がある!? 日本で“カートの乗り入れOK”なゴルフ場が増えない理由とは?
欧米のゴルフ場は、カートのフェアウェイ乗り入れが認められているカジュアルなスタイルが一般的とされている。
では、日本でカートの乗り入れが主流とならないのはなぜなのだろうか。
ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、以下のように話す。
「欧米に比べて日本のゴルフ場がカートの乗り入れを容認していない背景として、カートの大きさの違いが挙げられます。アメリカをはじめとした海外のカートの多くは、重量が軽い2人乗りタイプを主に使用しています。一方、日本ではキャディー同伴のプレーが長く主流となっていたため、現在でも5人乗りで重量も大きいものがよく使われています」
「さらに、きれいなフェアウェイをカートで踏みつける行為は良くないという風潮も相まって、乗り入れをあまり受け入れてこなかったようです」
「しっかりコース管理をしていて芝の状態も良ければ、カートがフェアウェイに乗り入れること自体、基本的に問題はないとされています。ただ、雨が降っていると土に含まれる水分が増えてぬかるみやすくなります。タイヤの跡によってライが変わり、プレーヤー間で不公平さが出たりしてしまう可能性もあるので、普段は乗り入れ可としているゴルフ場でも規制することが多いです」
タイヤの跡は自然に元の状態に戻るわけではなく、雨が止んで地面が乾いた後もずっとそのまま残り続け、コース管理にも手間と時間がかかってしまう。
日本でカートのフェアウェイ乗り入れがなかなか浸透しない理由は、雨が多い気候と多額の出費を抑えるためとも言われている。
もしもフェアウェイ乗り入れを前提とした本格的なカジュアルコースに転身しようとした場合、今までの5人乗りのカートを2人乗りの小さなカートへ買い替え、コース環境の悪化を防ぐ排水・散水設備の造設、さらに自由な方向転換ができるようにカート道の改良などが必要で、総額3億円以上の資金が必要だそうだ。
日本の気候を考慮するとカートの乗り入れを容認するゴルフ場は増えていかなそうだが、実際のところはどうなのだろうか。
「カートには、ガソリンエンジンで動くタイプとリチウムイオンバッテリーで動くタイプの2種類がありますが、後者はバッテリーの軽量化が進んでいるので、5人乗りであってもフェアウェイへのダメージは最小限におさえられると思います。夏の炎天下で歩きながらのプレーは非常に過酷ですが、カートに乗りながらであれば日差しから守ってもらえるだけでなく歩く距離も減り、熱中症のリスクを下げる効果も期待できます」
「ほかにも、ボールのすぐそばまで近づけるため、カート道からの横移動も少なくなってプレーファストの促進にもつながります」
「アンジュレーションがきつくアップダウンが激しいコースでは、限られた平たんな土地にカートが集中して結局タイヤの跡が付きやすくなったり、急な傾斜地でカートが横転したりしてしまう恐れも考えられます。カートの乗り入れが向いていないゴルフ場も一部ある点は否めません」
カートのフェアウェイ乗り入れを普及させるには、一人ひとりの運転マナーの徹底も欠かせない。
アメリカのゴルフ場には、ラフの芝がカートの重さで押しつぶされるダメージを最小限に抑えるべく「90度ルール」と呼ばれるものがある。
カート道から逸れる場合は、直角に曲がってラフを最短距離で横切ることが求められ、ラフの上をずっと走るのはNGとされている。
カートの乗り入れができると、さまざまな面でメリットがあるため、今後のゴルフ場の方針に注目だ。
しかし、ゴルフ場の設備事情や運転マナーの意識改革が課題と言えるだろう。
参照元∶Yahoo!ニュース