灼熱のインドで2000キロをドリブルで走破 大分U-18出身者が挑む破天荒な計画
無謀とも言える挑戦に臨もうとしている男がいる。
大分トリニータU-18や立命館大でプレーし、現在は会社員として働きながら、2021年に一般社団法人「FC Nono」を設立。
サッカーを通じてインドの社会問題解決に取り組んでいる萩原望さんだ。
2025年3月から5月までの3か月をかけて、インドのコルカタからニューデリーまで約2000キロの道のりをドリブルで走破する計画を立てている。
なぜ、そんな破天荒なチャレンジを決意したのか。
壮大な挑戦への思いを聞いた。
灼熱のインド国内を2000キロ、ドリブルで駆け抜ける――。
誰も思いつかないようなこの挑戦に、なぜ臨むのか。
「大きな理由は4つあります」。2000キロドリブルチャレンジの準備に追われる萩原さんはこう語る。
岡山県倉敷市出身。
大分U-18、立命館大を経て、大学卒業後はトヨタ自動車に入社した萩原さん。
3年半ほどで退社したのち、紆余曲折を経てNGOの駐在員としてインドに赴任したことが、人生の一大転機となった。
インドでも最貧州のビハール州で農村開発に携わりながら、空き時間にその村の子どもたちにサッカーを教えるようになった。
最初は男子のみだったが、次第に村の女子もサッカーに参加するようになっていった。
子どもたちと関わる中で、ある思いが芽生えた。
「普段の活動で子どもたちには『努力すれば報われる』『挑戦することが大切』と伝えていますが、一番身近な大人である自分は何をしているのか、と。努力する姿、挑戦する姿を見せてあげたい。大人として示したい。それがスタートラインでした」。
人として”挑戦する”ということを、身をもって子どもたちに示したいと考えたのだ。
中国に次ぐ世界第2位の人口を誇るインドは、サッカーに関しては”後進国”だ。
また、貧富の差も大きく、農村部の子どもたちはスポーツに触れる機会も限られている。
「ビハール州の2つの村で子どもたちにサッカーを教えていますが、1人でも多くの子ども、特に女子にスポーツとサッカーを届けたいんです」。
いまだに性差別が色濃く残るインドのために、何かをしたいという思いが募っていった。
「ビハールの子どもたちは女子もサッカーをしているということを、他の僻地の子どもたちにも伝えたい。インドに根付くジェンダーの課題に働きかけたいのです」。
自身が関わるビハール州の2つの村だけでなく、インド全体にこの社会課題の解決を広げたいと考える中で、仲間と構想したのが、2000キロを4か月かけてドリブルで走破し、道中の村々で子どもたちにサッカーのワークショップを開くというアイデアだった。
「どうすればインパクトを与えられるか考える中で、外国人が2000キロをドリブルしながら、経由地の村々でサッカー伝道師のような活動をすれば話題になるのでは、と考えました」。
インド国内で“謎の日本人”がドリブルをしながら、村々でサッカーのワークショップを展開する――。
前例のないこの取り組みは、インドのメディアの注目も集められるのではないかと考えたのだ。
2000キロのドリブル走破後は「ビハールの村の子どもたちを日本に招きたい」と計画している。
「単にサッカーが上手くなり、エリートを育成することが目的ではありません。精神的にも、経済的にも自立した大人、女性になってほしい」。
子どもたちが将来、インドの社会問題を解決する担い手となることを願い、日本の教育機関での交流や、環境問題解決の糸口を探るためのリサイクルセンターの視察、広島平和記念公園の訪問など、多角的な学びの機会を提供しようとしている。
「スポーツは外交になると考えています。日本人がインドに対して何ができるのか、それも1つの問いです」。
インド全体の子どもたちを取り巻く環境を変えるには、当然、インド政府や行政などの力も必要となる。
この活動を、日本とインドの両国を巻き込む足がかりにしたいという思いもある。
萩原さんの活動には、かつて大分に在籍していた西川周作(浦和レッズ)、清武弘嗣(来季大分に復帰)、為田大貴(来季磐田へ移籍)、今季限りで引退した梅崎司さんら多くの選手がアンバサダーとして参画している。
また、女子サッカーからも元なでしこジャパンの岩渕真奈さんらが賛同し、複数の企業が支援を表明しているという。
日本のサッカー界で育った青年が、インドでサッカーを通じて社会問題解決に挑む。
参照元:Yahoo!ニュース