「正月病」で気持ちが落ち込む、体がだるい、眠れない 不調を招く三つの理由 帰省も一因に 対策は?

年末年始のスケジュールをチェックしている人

年末年始の休みが後半に入り、三が日が終わろうとしているこの時期に、気持ちが落ち込んだり憂鬱(ゆううつ)な気分になったりしている人もいるのではないだろうか。

こうした状態のことを「正月病」とも言うようだ。

対処法について、立教大学現代心理学部教授で公認心理師の松永美希さんに聞いた。

――年末年始の休みを機会に、メンタルに不調が生じることがあるのはなぜですか。

休みを取ると通常は、気持ちがリフレッシュして仕事に意欲的に取り組めるようになります。

しかし、年末年始の休暇では、(1)年末進行で仕事が忙しく疲労が蓄積している(2)クリスマスや正月など、イベントが多く食事や睡眠のリズムが崩れやすい(3)帰省しなければいけないなど、普段の生活にはないストレスや緊張を感じる――といったことから、心身に大きな負担が生じてしまうということが少なくありません。

――具体的には、どのようなことでしょうか。

12月には、休みの前に仕事を終わらせようと詰め込む人が多いと思います。

忘年会やクリスマスなどの行事もあり、疲労をためた状態で休みに入ります。

そのまま、帰省したり大掃除をしたりし、心身が休まることはありません。

お正月になると、おせち料理を食べたりお酒を飲んだりします。

食事や睡眠のリズムが崩れる人は、多いでしょう。

飲酒は眠りを浅くし睡眠の質を低下させます。

帰省をする人は、普段会わない親族などと顔を合わせることになります。

もちろん、久々に会えるのはうれしいことだと思いますが、気を使うこともあるでしょう。

そこで気になることを言われたりしたら、気持ちが落ち込む要因にもなります。

正月が終わって体がだるかったり、夜眠れなくなったりといった状態になっても無理はありません。

――休みは楽しみたいものですが、連休が終わった後にしんどい思いはしたくありません。

休み中も普段通り、規則正しい生活を送れば、仕事や学校が始まる際にも問題は生じません。

しかし、時間を気にせず、お酒を飲んだりしながら、おせち料理を食べて過ごすというのは、お正月の楽しみでもあります。

朝、起きる時間を決めておくと、生活リズムが崩れにくくなります。

だらだらと過ごすのは三が日が終わるまでと決めておき、4日以降は、決まった時間に起きたり食事をしたりするよう心がけるとよいでしょう。

人付き合いによるストレスは、関わりを持たないようにできれば、それに越したことはありません。

しかし、なかなかそうもいきません。

気遣いなどをして疲れた場合は、一人の時間を作ってリラックスしたり、気心の知れた人に愚痴を聞いてもらったりして、嫌な気持ちの「荷下ろし」をすることが大切です。

――帰省などはせずに、一人で過ごすという人もいます。誰かと過ごせる人はいいですが、年末年始は友人などに連絡を取ることを遠慮して、孤独になってしまうケースもあるのではないでしょうか。

一人の時間が増えると、つい、普段は考えないことを考えてしまいます。

年末に追い込んで仕事をし、休みに入ると燃え尽きてしまって何もできない。

そのまま、仕事始めの日を迎えてしまう――という人もいます。

仕事が思うように進まなかった場合などは、自分をせめてしまいがちです。

休みに入ったら、仕事のことはできるだけ考えない。

「切り替える」ことは、心身の不調に陥らないために必要なことです。

ただ、仕事のことを忘れるのは、「サボっている」と考えてしまう人も多いです。

私も、頭では分かっていますが、なかなか切り替えることが上手にできません。

しっかりと休むことは、休暇明けに仕事の効率を上げることにつながります。

「休む自分を許す」ようにしていただき、「今、この瞬間」の活動や出来事を楽しむようにしましょう。

――気持ちが落ち込んだり、体がだるかったりしている状態で、仕事を再開させるというのは、考えただけでも気が滅入(めい)ります。

休み明けは、あまり頭を使わなくてもできるような単純作業に取り組むようにしてみてはどうでしょうか。

ポイントは、あらかじめ取り組む仕事の計画を立てて、それに沿って進めるということです。

計画は、少なめに立てましょう。

自分で決めたことを実行できると達成感があり、やる気が出ることにつながります。

今は、リモートワークという選択肢もあります。

職場の状況にもよりますが、組み合わせるとよいでしょう。

――回復しない場合、医療機関は受診しなくてもいいですか。

仕事を再開させてから2週間程度たっても回復しなければ、適応障害など、心の病気を患っている可能性があります。

その場合は、メンタルクリニックなどを受診し、専門医に相談してほしいと思います。

参照元:Yahoo!ニュース