人気の「まきストーブ」、近所から出る臭いがつらい 「この時季になると憂鬱に…」 髪や服について、洗濯物も干せない 自治体に苦情も…解決策は

薪ストーブを撮影した写真

「この時季になると憂鬱(ゆううつ)になることがあります。隣家のまきストーブの臭いです」。

長野県の南信地域に住む50代の女性が本紙「声のチカラ」に悩みを寄せた。

朝から晩までまきを燃やす臭いが鼻をつき、天気が良くても洗濯物や布団を外に干せないという。

女性は近所への気兼ねから言い出せず「何とかならないものか」と嘆く。

解決策はないのか、取材した。

女性が住むのは新興住宅地で、近年、隣家を含めて煙突のある家が複数建った。

冬場、煙突からもくもくと白い煙が出ているのが見え、屋外に出ると髪や衣服に臭いがつく。

一方、夏場はまきをつくるチェーンソーの音が1、2時間続くこともありストレスを感じる。

女性はまきストーブが環境面から注目されていることを踏まえつつ「臭いを不快と感じる人がいることも知ってほしい」と訴える。

まきストーブの販売店などでつくる一般社団法人「日本暖炉ストーブ協会」(東京)の調査によると、自治体に寄せられるまきストーブ関連の相談で8割を占めるのが臭いに関するものだ。

ホームページで使用者に向けて正しい使い方を呼びかけている長野市や上田市、岡谷市などには、毎シーズン複数の苦情が寄せられる。

臭いや煙に関する規制はないため、長野市の職員は「使用者を訪ね、環境省のガイドブックを基にした資料を渡すなど正しい使い方をお願いしている」と話す。

まきストーブの臭いはなぜ発生するのか。

公立諏訪東京理科大准教授の上矢恭子さん(45)=火災科学・におい科学=によると、臭いの正体はまきが燃える時に発生するガス。

燃え始めやまきを継ぎ足した直後に不完全燃焼が起き、臭いが強くなる。

「きれいに燃やせていれば近所迷惑になるほどの臭いは出ない」と上矢さん。

臭いの最大の原因はまきの乾燥不足だという。

同協会の実験によると、40%の水分を含むまきは10%まで乾燥させたまきに比べて臭気の濃度が約60倍になる。

まきストーブの販売・メンテナンスなどの「リョウカーペントリー」(長野市)代表の斎藤亮さん(48)によると、臭いが強いストーブは、5月の連休や夏場にまきを採取し、その年の秋から使用しているケースが目立つという。

斎藤さんによると、木が最も水分を蓄える時季に採取したまきは2年乾燥するのが望ましく、最低でも冬場に採取して次の冬に使うよう勧める。

雨よけのため、まきをブルーシートなどで覆うのも逆に乾燥を遅らせてしまう。

「炎のある暮らし」への憧れからまきストーブ人気が高まる一方、一度にまきを入れ過ぎるといった使い手の習熟不足や、メンテナンス不足も臭いの原因になっている。

煙や臭いのクレーム撲滅へ、業界団体が注意喚起 こうした中、業界団体も注意喚起に乗り出している。

日本暖炉ストーブ協会は昨年3月まで3年半かけて「煙や臭いのクレームの撲滅」を目指す「煙プロジェクト」に取り組み、煙やにおいが発生する原因を実験で特定。

結果を基に正しい使い方を八つのポイントとしてパンフレットにまとめ、協会ホームページで公開している。

使っていなくても苦情出るケースも 上矢さんは、煙が出ていても臭いがほとんどしない場合もあると指摘。

「臭いは一度気になり始めるとずっと気になってしまう」とし、ストーブを使っていない時間帯でも苦情が出るケースもあるという。

使い手は自分の家から臭いが出ていることに気づきにくい。

上矢さんは、あらかじめ近所に「臭いが出たら言ってください」と伝えておくよう勧める。

一方、まきストーブ販売業者にも「納品して終わりではなく、メンテナンスの機会などを通じて使用状況を確認し、臭いを軽減するたき方をアドバイスしてほしい」としている。

参照元∶Yahoo!ニュース