裸の偽画像投稿された23歳「将来に影響が出るのでは」 知人男性は不起訴、法規制の強化求める声

SNSの情報をチェックしている人

生成AI(人工知能)を悪用した性的な偽画像の被害は、国内でも深刻化しつつある。

自身の偽画像を拡散された女性は「将来にも影響が出るのでは……」と不安を募らせる。

現行法による規制の限界も指摘される中、規制の強化を求める声が強まっている。

「気持ち悪くて怖くなった」。

東海地方の女性(23)は、自身を裸にした偽画像を初めて見せられた時の心境をそう語る。

X(旧ツイッター)に投稿されていたのを知ったのは昨年12月。

所属先の大学陸上部の関係者から見せられた画面には、陸上競技場をユニホーム姿で走る自身の画像と、全く同じ背景で自身が裸に加工された偽画像が映っていた。

投稿は同3月に発信され、約500回も閲覧されていた。

投稿したのは知人男性だった。

知人は昨年11月、性的なディープフェイクの作成サイトを利用し、別の女子陸上選手の性的な偽画像を作り、SNSに投稿したなどとして、警視庁から名誉毀損(きそん)容疑で東京地検に書類送検された。

女性は、知人とは「何度か話した程度」で、「まさか自分が被害に遭っていたとは思わなかった」と驚きを隠さない。

小学生の頃から陸上競技のクラブチームに所属し、学生時代も競技に打ち込んできた女性は、「学生時代の思い出は陸上ばかり。その大切な思い出を汚された」と憤る。

今春、大学を卒業し会社員となったが、「偽画像が再び出回り、会社の人や将来の家族に見られたら、どんな影響があるか分からない」。

不安な日々を過ごしている。

こうした被害は氷山の一角とみられる。

2020年頃からSNSやネット掲示板をパトロールしている民間団体「ひいらぎネット」の永守すみれ代表は、「偽画像は次から次へと現れ、対応は全く追いついていない状況だ」と話す。

同団体では、被害に遭った人物が所属する学校や団体などが特定できれば、個別に通報したり、SNSやネット掲示板の運営事業者に削除を依頼したりしている。

永守代表は「被害者側の負担はかなり大きく、支援体制を拡充させる必要がある」と訴える。

被害を拡大させる温床となっている性的ディープフェイクの作成サイトは、どのように作られているのか。

生成AIの開発企業の一部は、基礎となるAIモデルをネット上に公開している。

このモデルにデータを追加学習させると、目的にあった画像などを高精度に作成できるようになる。

読売新聞がネット上で確認した41サイトも、サイト運営者らにより同様の手法で作られたとみられる。

海外では被害拡大を受け、性的な偽画像の作成や所持、共有を規制する動きが広がる。

韓国は今年9月、作成に加え、視聴、所持なども処罰対象とする法案が可決。

米国の複数の州では今年、性的な偽画像の共有などを規制する州法が成立した。

一方、日本では法規制の動きには至っていない。

AIの法規制などを検討する政府の有識者会議が今月26日に公表した中間取りまとめ案では、性的な偽画像の問題もリスクの一つに挙げられたが、「まずは既存の法令で対応すべきだ」との内容にとどまった。

これに対し、現行法の限界を指摘する声も上がる。

東海地方の女性の知人が名誉毀損容疑で東京地検に書類送検された事件は、警視庁から起訴を求める意見も付けられた。

しかし、捜査関係者らによると、性的な偽画像のSNSへの投稿については不起訴となった。

デジタル性被害に詳しい工藤洋治弁護士によると、名誉毀損罪の従来の解釈では「名誉=社会的な評価」と定義され、被害者の社会的評価が低下した場合に「名誉の毀損」があったと判断される。

だが、投稿された画像などが明らかに偽物とわかる場合は「被害者の社会的な評価を低下させているとは言いにくい」との理由で、立件が見送られるケースもあるという。

工藤弁護士は「刑法が制定された当初には想定されていなかった事態が起きており、立法の不備としか言いようがない。国は早急に法整備の検討を進めるべきだ」と話す。

参照元:Yahoo!ニュース