「20年経った娘の顔見たい」廿日市女子高生殺害 ブログ更新続ける父

事件現場をイメージした写真

「タラればは禁句ですが、20年経った娘の顔を見てみたいですね。立派なオバサン?になっていたとしても笑った顔は、高校生の頃と余り変わっていないと想像しておりますね」。

事件からちょうど20年となった10月5日、ブログに新たなメッセージが書き込まれた。

広島県廿日市市の北口忠さん(67)は、毎日欠かさずブログを更新している。

きっかけは、殺人事件で当時高校2年生だった娘の命を奪われたことだった。

長女の聡美さんは2004年10月5日午後3時ごろ、自宅に侵入した男に刺殺された。

当時、連絡を受けた北口さんは急いで職場から病院に駆けつけた。

「眠るような娘の姿を見たのは忘れられないです」と振り返る。

犯人は逃走。

北口さんは情報提供などのために、事件発生の約1年後に「SA・TO・MI~娘への想い~」というブログを開設し、投稿を始めた。

聡美さんに関すること以外にも、自らの畑仕事の様子や天気の話題などを投稿し、少しでも目を留めてもらいたいという一心で続けた。

発生から約13年半後に、当時会社員の男が逮捕された。

2020年3月、広島地裁で無期懲役の判決が下され、その後に刑が確定した。

「娘の顔が見えなくなって20年と思うと長いと感じるが、事件から20年と考えるとあっという間でした」。

今も自宅の聡美さんの部屋はそのまま残されており、勉強机の上には浜崎あゆみの曲をよく聴いていたMDプレーヤーが置いてある。

事件後、当時のことを思い出さないようにするため、家族の間では自然と聡美さんの話をしなくなっていった。

しかし北口さんは、自宅に帰ると必ず仏壇に手を合わせる。

「ご先祖様ではなく、自分の娘に手を合わせるのは今でも抵抗がある」と話す。

事件の情報提供を目的に始めたブログを、今も続けるのには理由がある。

事件発生から1カ月後、通勤中の電車内で北口さんの近くにいた人たちが聡美さんについて話をしているのを耳にした。

「命を奪われてしまう悪い女だったんだろう」。

悔しさとともに、娘の名誉を守らなければならないと思った。

それからは、ほぼ毎日、ブログの更新を続ける。

「事件のことは忘れてほしい。ただ事件に対して間違った見方をしている人がこの世に1人でもいるのなら、正しく認識してもらいたい。そのために発信を続けていく」と語る。

全国各地で、事件の被害者遺族として講演活動も続け、当時の思いや防犯の必要性などを訴えている。

それは、自分と同じように苦しんでいる人たちの何か手助けになればと思っているからだ。

ブログにはこんな書き込みも残されていた。

「私と同じような、辛(つら)く哀しい想いを絶対に持たないためにも皆さん遠慮されずに、よろしくお願いいたします」

参照元∶Yahoo!ニュース