一時は観光客激減の絶景スポット、SNSで注目集め若者続々 死亡事故起きても危ない巨岩で動画を撮るケースも 「せっかくのチャンス」自治体は対策検討

寝覚の床の外観を撮影した画像

長野県上松町小川の国指定名勝「寝覚(ねざめ)の床(とこ)」が、SNS(交流サイト)で注目を集め、若者を中心に訪れる人が増えている。

町によると本年度の観光客数は18万人を越え、過去10年間で最多になる見通し。

一方、岩の突端から動画を撮影するなど危険な行為も目立つ。

11月上旬には男性(19)が木曽川に落ちて流されて亡くなった事故もあり、町は12日、警察や消防関係者らと安全対策会議を開き、対策を検討した。

寝覚の床を訪れる観光客は1997年度に59万4300人いたが、近くのドライブイン撤退などにより激減。

2014年度に14万2千人と15万人を割り込んだ。

新型コロナの5類移行後に観光客が戻り始め、ネットメディアの絶景ランキングで紹介された2年ほど前から若い世代が増えたという。

今年は1~6月に前年同期比27%増の5万7960人と増加傾向が続く。

実際にSNSでは、岩の突端から木曽川をのぞき込むように撮った動画や巨岩の縁から脚を投げ出して座る若者、ヒールの高い靴を履いてポーズを取る人らの姿が複数投稿されている。

担当者は「人と違う映像を撮りたい人がいるのではないか」とみる。

一方、夕方に寝覚の床を訪れた大学生が暗くなって道に迷い救助要請をした例や滑って転び手足をけがをして救急要請する事例も出ている。

11月3日には男性2人が岩場から木曽川に転落する水難事故が発生。

うち1人が2週間後に遺体で見つかった。

この日の安全対策会議には町の他に木曽署、木曽消防署、県の現地機関の関係者ら18人が出席し、11月の水難事故現場などを確認した。

大屋誠町長は会議の冒頭で犠牲者の冥福を祈り、「最悪の結果を招かないため、対応を検討したい」と強調した。

町産業観光課は、観光客に人気の岩場周辺について「河川の扱いなので誰でも行けるし、泳ぐことができる。立ち入り禁止にする法令がない」と課題を口にする。

今後の対策として、町は来年度に浮き輪など救難用具の整備の予算化を検討。

注意を呼びかける看板も増やし、内容をより詳細に分かりやすくする考えだ。

若者向けにSNSでの啓発や外国人観光客への情報発信についても検討を進めるという。

町は「観光客が増えるのはありがたい限り。せっかくのチャンスを生かしながら、より安全に滞在していただく方策を考えたい」としている。

参照元:Yahoo!ニュース