就活セクハラ相談深刻「ホテル連れ込まれそうに」「大量に酒を飲まされた」 社員と学生の接触増え

就活生をイメージした写真

就職活動中に受ける性的な嫌がらせ「就活セクハラ」を巡り、性的な関係を強要されそうになったなどの学生からの深刻な相談が絶えない。

採用難の中、社員が学生と接触する機会が増えたことも影響しているとみられ、国も問題視している。大学は学生に自衛を呼びかけ、企業も対策に力を入れている。

「インターンで知り合った男性社員に会食に誘われ、1対1で大量に酒を飲まされた。会ったことは誰にも言わないように口止めされた」

「『内定を得られるよう手伝うから』と、ホテルに連れ込まれそうになった」――。

就職支援を担う大学のキャリアセンターや一般社団法人「日本ハラスメント協会」(大阪)に今年寄せられた学生の声だ。

こうした相談が相次ぐ背景には、学生と社員が1対1で会う機会が増えていることがある。

採用難の中、企業は志望する学生を増やそうと、社員が指導するインターンシップ(就業体験)や、就職した先輩の話を聞くOB・OG訪問の受け入れを積極的に行っている。

就職情報会社マイナビの調査では、2025年卒の就活生は9割近くがインターンに参加した。

4人に1人はOB・OG訪問をしており、平均で約5人と会っていた。

複数の大学で就活相談をしているキャリアコンサルタントの岡崎浩二さん(43)は、「コロナ禍で就活のオンライン化も進んだ。学生と社員は簡単に知り合えるようになったが、それに伴ってセクハラ被害の相談も増えた」と指摘する。

就活体験者1000人を対象にした今年1月の厚生労働省の調査では、3割がセクハラを受けたと答えた。

そのうち「性的な関係の強要」が2割を占める。

近年、学生と社員が気軽に出会えるマッチング(仲介)サービスの普及も一因とされる。

興味のある企業名や職種を入力すると、条件に合った登録社員が紹介される仕組みで、出身校にかかわらず多数の先輩社員に連絡が取れるため人気だ。

一方で、登録内容が自主申告にすぎないサービスもあり、「だまされた」と訴えるトラブルが絶えない。

2019年には大手ゼネコン「大林組」の男性社員が、仲介サービスを利用し、就活中の女子学生にわいせつな行為をしたとして逮捕される事件(同年に社員は不起訴)が起きている。

企業側もイメージが失墜しかねないトラブルの回避に努めている。

事件を受けて大林組は、学生の訪問を受けられるのは、ハラスメント研修を受けた社員に限定した。

面会時に「ハラスメントをしません」、連絡は「会社のメールアドレスを使用します」などの宣言文が書かれたカードを学生に手渡すなど、再発防止策を徹底する。

日本生命保険は、「採用コンプライアンスマニュアル」を作成し、仲介サービスへの登録禁止、個室での1対1の懇談は原則不可としている。

広報担当者は「就活でのトラブルは、企業としての責任も問われる。

学生と社員の双方を守るためにルールは必要」と話す。 大学も学生を指導する。

都内の私立女子大は就活ガイダンスで、男性社員を訪ねる時は「カフェなどのオープンな場所で会う」「夜の訪問や、面談中の飲酒は避ける」「仲介アプリに安易に頼らない」などの「防衛策」を示している。

関西大(大阪)は、卒業生の連絡先は対面で学生に提供し、採用と関係ない要求をされたらキャリアセンターに相談するよう伝えている。

日本ハラスメント協会の村嵜(むらさき)要代表理事(41)は「社員は学生の上司ではなく、要求に従う必要は全くない。疑問を感じたら、一人で悩まず周囲に相談してほしい」と呼びかけている。

厚生労働省は、企業に就活セクハラの防止策を義務付ける方針だ。

従業員へのセクハラに対しては、男女雇用機会均等法で、企業に相談窓口の設置や事実関係の確認、再発防止に向けた措置などが義務付けられている。

しかし、雇用関係にない就活生は対象外だった。

議論を進めていた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)は、11月の会合で「(就活生は)事業主と対等ではなく、不当な人格攻撃があっても何も言えない人が大半。人権の観点から対応することが必要だ」という意見が出された。

同省は法改正で、就活生を従業員に準ずる立場と位置付け、OB・OG訪問を受ける際の場所や時間についてルールを定めるほか、相談窓口を就活生にも周知することなどを義務化する。

これらを盛り込んだ同法改正案を来年の通常国会に提出する予定だ。

参照元∶Yahoo!ニュース