韓国・戒厳令、SNSが変えた情報戦の行方 デジタル市民が「リアルタイム中継」
韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が非常戒厳令を宣言した3日夜から4日未明にかけて、デジタル空間では参加型民主主義が大きく花開いていた。
現場にいた市民が、戒厳軍による国会議事堂本館への突入を試みる場面をSNSで生中継し、緊迫した状況を広く伝えた。
スマートフォンを駆使した市民の活躍により、21世紀のデジタル社会では軍を用いた社会統制は容易ではないことが改めて証明された。
ユン大統領が3日午後10時半に非常戒厳令を宣言した直後、急激なトラフィック集中により、ネイバーやダウムのカフェなど一部のオンラインコミュニティーで接続障害が発生した。
しかし、カカオトークやYouTube、Facebook、Instagramのライブ配信は活発に展開され、情報は拡散し続けた。
非常戒厳令が発令されたのは、1979年12月以来45年ぶりだ。
非常戒厳令下では、大統領が法律に基づき言論、出版、集会、結社の自由を制限する特別措置を取ることができる。
45年前の戒厳令時には、情報の流通を完全に遮断することが可能だった。
当時、報道規制や通信網の一部遮断・監視だけで現場の情報を外部に伝える手段はほぼなくなった。
しかし、スマートフォンが普及した21世紀の現在では、状況は大きく異なる。
特に韓国は世界最高レベルの「モバイルリテラシー」を誇る。
多くの市民がスマートフォンを手にし、現場の様子をリアルタイムで中継することで、非常戒厳令下の暴力的な事態を防ぐ重要な役割を果たした。
戒厳令の発令直後、一部で「インターネットが遮断されるのではないか」という懸念が広がった。
実際にトラフィック集中によってネイバーやダウムのカフェに接続障害が発生したため、こうした懸念が現実になるのではないかという懸念が強まった。
また「国民的SNS」とも称されるカカオトークが遮断されるのではないかという不安も少なくなかった。
その結果、4日未明には海外サーバーを持つメッセージングアプリ「Telegram」の登録者数が急増。
カカオトークやネイバーカフェの接続制限を心配した多くの人々が「デジタル避難」としてTelegramに移動した。
この日、国会に直接赴いた記者は現場の様子を次々と速報し、動画や写真をリアルタイムで配信した。
さらに、外国メディアも韓国の状況をリアルタイムで報道し、これを韓国国内の記者が再び報じるという形で、情報が多方面に広がった。
スマートフォンを持った市民も今回の事態を伝える役割において、プロのジャーナリストに引けを取らない活躍を見せた。
現場では国会議員だけでなく、一部の市民も実際の状況を生々しく伝えるYouTubeライブを配信していた。
尹大統領は4日午前4時半、「国務会議(閣議)を通じて国会の要求を受け入れ、戒厳令を解除する」と発表した。
国会で非常戒厳令解除要求決議案が可決されてから約3時間後のことだった。
参照元∶Yahoo!ニュース