トヨタ、中国生産30年に60万台以上積み増し、現地が開発主導
トヨタ自動車が、2030年に中国で250万台以上の生産規模を目指す方針を一部の部品メーカーに伝えたことが分かった。
電気自動車(EV)主体の現地勢に押されて販売が落ち込む中、中長期の目安を示すことで中国事業の先行きに対する取引先の不安を払拭し、世界最大の自動車市場で部品供給網を維持する。
事情を知る関係者3人が明らかにした。
関係者2人によると、トヨタは30年の生産規模を250―300万台と想定している。
過去最高だった22の生産台数約184万台から60万台以上積み増す必要があり、トヨタは中国人向けの車両開発の現地化を進め、知能化・電動化技術が進む市場のニーズに合った商品を投入する。
合弁2社の生産、販売網も見直し事業全体を効率化する。
トヨタは昨年7月、江蘇省の研究開発拠点と合弁2社の研究拠点との協業を深めることを決定したが、関係者2人によれば、中国人社員が主導する新車開発をさらに増やす。
「中国のトレンドを日本勢はつかめていない。中国の人たちに任せて商品開発スピードをアップしないと手遅れになる」と関係者の1人は話しており、中国人のニーズをとらえた商品開発を強化する。
足元は第一汽車の高級車ブランド「紅旗」、広州汽車のEVブランド「AION(アイオン)」など、トヨタの合弁相手が独自に開発した自動車の方が合弁会社の一汽トヨタ、広汽トヨタのモデルよりも売れ行きが堅調に推移している。
トヨタはこうした中国メーカー独自のモデルのノウハウも取り込む。
宮崎洋一副社長は6日の決算会見で、「日本人が中国人の車を作るというより、もっと中国人が中国人のための車を作っていただくことにもう一段、入り込んでいきたい」と述べていた。
生産と販売の体制も見直す。
現在は2つの合弁会社それぞれで同一車両を生産し、デザインや車名を変えて姉妹車として販売しており、関係者2人によると、車種ごとにどちらかの合弁に集約する。
両合弁会社で生産したモデルは、どちらの系列販売店でも買えるようにする。
トヨタ広報はロイターの取材に、「中国市場は競争が激しく、常に様々な取り組みを検討している」と回答。
顧客の満足度を高める自動車を開発し、投入していくとした。
トヨタの中国販売は21年の194万4010台をピークに22年が194万0590台、23年が190万7587台と減少が続いている。
今年1─10月累計では約141万2900台で前年同期比9.3%減だった。
コロナ禍で経済全体が落ち込んだ上、自動車市場が急速に電動車へ移行し、EVを安価に供給する現地メーカーがシェアを拡大する一方、ガソリン車主体の日本勢は競争力が低下した。
三菱自動車工業は撤退、ホンダと日産自動車 は現地生産能力の削減を決めた。
トヨタも販売が低迷する中、日系の部品メーカーの中には現地で事業再編に乗り出した企業もある。
関係者の1人は30年に250万─300万台という生産規模について、「目標ではなく、(部品メーカーが)事業計画を立てやすくするための構えの意味合い」と説明。
「サプライヤー各社が(日本勢の)中国販売不振のダメージを大きく受けており、一部は拠点の集約や再編を始めている。サプライヤーも疑心暗鬼になっている」と語る。
参照元∶REUTERS(ロイター)