日本シリーズからフジテレビを〝出禁〟当初は放映権剥奪を通達したNPBの処分は妥当か 鬼筆のスポ魂
DeNAとソフトバンクが戦っているプロ野球のSMBC日本シリーズの舞台裏で、日本野球機構(NPB)がフジテレビに下した処分が波紋を広げている。
フジテレビは日本シリーズと日程が重なる米大リーグのワールドシリーズ、ドジャース-ヤンキースを日本時間午前に生中継し、さらに夜のゴールデンタイムでもダイジェスト番組を放送。
これに対し、NPBはフジテレビに支給した日本シリーズの取材パスを回収し、事実上の出入り禁止処分を行ったのだ。
今回の処分に対してNPBは正式なコメントを発表していないが、球界関係者の話を総合すると、「12球団、中継局、スポンサーなどが一体となって日本プロ野球のコンテンツ価値の向上、野球ファンの裾野拡大に努めてきた中で、フジテレビのワールドシリーズに関する中継方針は、日本シリーズの価値やプロ野球を取り巻く関係者と団体が築き上げてきた信頼関係を毀損(きそん)する行為」などとして断行したとみられる。
プロ野球最高峰の戦いの〝裏番組〟で、大谷人気で注目を集めるワールドシリーズをダイジェスト放送することに対し、主催者側のNPBが激怒したということだろう。
世間の受け止め方はさまざまだ。
取材パス剝奪の処分に対し「あまりにも理不尽だ。日本のプロ野球界が大リーグや大谷人気に畏怖を感じている裏返し。日本シリーズの裏番組で何を放送してもそれぞれの放送局の勝手だろう」との声もあれば、フジテレビの番組編成について「大谷人気に依存しすぎだ。日本シリーズに対するリスペクトがない。朝の生中継だけで十分なのでは?」と指摘する声もある。
ただ今回の騒動をめぐっては、まだ表に出ていない事実もある。
NPBは日本シリーズ第1戦当日の10月26日夕刻、井原敦事務局長名で12球団首脳を含む関係者に処分内容を示す通達を出しており、そこには「フジテレビの日本シリーズ第3戦中継を他のテレビ局に変更調整する」という文言がある。
つまり、NPBは当初、取材パスの回収のみならず、フジ系列による中継が決まっていた第3戦(10月29日、みずほペイペイドーム)の放映権剝奪に踏み切るつもりだったことになる。
しかし、ソフトバンクの本拠地、福岡の地元局・テレビ西日本(TNC)がフジテレビとは別会社であることに加え、第3戦が通達から3日後に迫っていた事情もあってか、「放送局の変更調整」は約3時間後に撤回された。
放映権の剝奪は〝未遂〟に終わったわけだが、NPBはフジテレビに対して来季の取材パスを凍結するのでは-という情報まで早くも飛び交っている。
NPBは12球団のオーナー会議や実行委員会の決定事項に沿ってプロ野球を運営している。
このため、球界関係者からは「NPBにはオーナー会議を上回る権限があるのか?」という声も上がっている。
いずれにせよ、日本シリーズの舞台裏で物議を醸したフジテレビへの処分について、NPBは会見などを開き、きちんと説明すべきだろう。
こうした騒動はかえって日本シリーズのコンテンツ価値に微妙な影を落としかねないと思う。
参照元:Yahoo!ニュース