「元の体に戻して」通院に外食や飲酒の制限 小林製薬サプリで腎障害の女性が悲痛な訴え

サプリメントを服用している女性

小林製薬の紅麹(べにこうじ)入りサプリメントを巡る健康被害問題はいまだ全容が明らかになっていない。

サプリ摂取をやめても腎機能が改善せず、現在も通院を余儀なくされている人が少なくない。

腎障害を発症した女性は産経新聞の取材に応じ、日常を奪われた苦しみを吐露した上で「小林製薬は被害者のことを考え、誠実な対応をみせてほしい」と訴えた。

「腎機能をほぼ失う『焼け野原状態』。これ以上飲み続けていたら死んでいた」。

関西に住む50代女性は苦悶(くもん)の表情でそう語った。

コレステロール値を下げようとサプリを飲み始めたのは昨年5月。

いくつか候補があったが「よく名前を聞き、信用していた」という小林製薬のサプリに決めた。

通販で購入し、毎日3粒を服用。

半年後の昨年11月の人間ドックでは、コレステロール値が前年と比べ40ミリグラムも減り、「効果」を感じたという。

ただ約1カ月後の同12月、体に異変が生じた。

「ひどい二日酔いのような症状」が1カ月ほど続き、吐き気や倦怠(けんたい)感から寝込む日も多くなった。

さらに尿の泡立ちも見られ、翌1月、腎臓内科を受診。

腎機能の低下を示す「クレアチニン」の数値が基準値の4倍以上に達していた。

医師からあわてた様子で総合病院へ行くように言われ、緊急入院した。

検査の結果、尿細管間質性腎炎と診断され、約3週間後に退院したが、今も服薬と2カ月に1回の通院治療が必要だ。

問題発覚から公表までに2カ月を要し、小林製薬の初動対応の遅れが指摘されている。

女性は「人の健康を扱う製薬会社がすぐに動かなかったことはあり得ない。早く公表していたら、被害を受けずに済んだ人も多くいるはずだ」と怒りをあらわにする。

腎機能の低下で、日々の生活は一変した。

食事にはひときわ注意を払う。

納豆は1日半パックに抑え、リンやカリウムを減らすため野菜は必ず水に浸す。

お酒も控えるようになった。

食べることが好きだったが、飲食店で食事をとるのが怖くなった。

楽しみだった外食もできず、「さびしい」とつぶやく。

今年9月、慢性の腎臓病と診断された。

「これまでに少なくとも400粒の『毒』を飲んでいたようなもの。治ることはない。病気と一生付き合っていくしかない」。

大阪弁護士会の弁護士が結成した「紅麹サプリ被害救済弁護団」の説明会に参加し、今後小林製薬に補償の徹底などを求めるつもりだ。

「元の体と生活に戻してほしい。それができないなら『被害者ファースト』に徹し、せめてもの誠意を見せてほしい」

小林製薬の紅麹サプリを巡る健康被害が深刻化した背景には製造過程での安全性軽視の企業風土があったとされる。

厚生労働省などは、サプリを製造していた旧大阪工場(昨年12月閉鎖)や和歌山工場で採取した青カビを培養し、腎障害を引き起こすプベルル酸を検出した。

工場内の青カビが紅麹原料の培養段階で、何らかの経路で混入したと推定している。

今回の問題を調査した「事実検証委員会」の報告書によると、工場関係者は検証委の聞き取りに対し、紅麹タンクのふた内側に青カビが付着していたことがあった旨を証言。

それを品質管理担当者に伝えると「青カビはある程度混じることがある」と回答されたという。

工場内の乾燥機が壊れ、紅麹原料が一定期間乾燥されないまま放置されていたという証言もあった。

小林製薬の本社がある大阪市は今月10日、サプリの健康被害について食品衛生法上の食中毒に当たると判断。

被害規模や汚染経路の特定、時期の解明のため調査を続け、年度内にも結果を取りまとめる方針だ。

日本腎臓学会の分析によると、サプリ摂取後に腎障害が出た患者の多くに、尿細管が傷つき必要成分が再吸収できなくなる「ファンコニー症候群」がみられたという。

小林製薬による厚労省への報告内容によると、サプリ摂取後に死亡したとして因果関係の調査対象となっているのは24日時点で121人。

小林製薬によると、27日時点でサプリ摂取後、腎関連疾患で入院した人は延べ324人、通院した人は延べ約1500人。

参照元:Yahoo!ニュース