なぜ20代の若者が強盗をしてしまうのか 危険な「闇バイト」から家族を守る具体的な方法

一般家庭を狙う強盗事件が各地で相次いで発生している。
「闇バイト」で集められた犯行グループが関与していると見られ、特殊詐欺で培ったノウハウを用いて強盗をしていることがうかがえる。
特徴の1つは役割分担をしながらの犯行だ。
報道によると、犯行グループには「指示役」、それを受けて強盗をするなどの「実行役」、奪い取ったお金や貴金属の「回収役」がいる。
指示役や実行役は秘匿性の高い「シグナル」などの通信アプリを使ってやりとりし、警察が捜査してもなかなか上位の指示役にはたどり着かない手口だ。
これまでのケースでは、闇バイトで集められた実行役は、指示役からの命令のままに行動する。
イヤホン経由で「窓を壊せ」と指示されたら、そのとおりに家に侵入して「金庫を開けろ」と言われたらこじ開けようとする。
さらにはキャッシュカードを奪い「暗証番号を聞き出すために暴行しろ」と言われれば実行する。
犯行は稚拙で粗く、多くの証拠を現場に残すことになる。
詐欺においてもそうだが、実行役は逮捕されることが前提の「捨て駒」としての存在だ。
そのため実行犯の人手不足の状況が年中続き、SNSには闇バイトを募集する投稿が絶えない。
今回の強盗の実行犯とされる容疑者の多くは20代の若者であり、中には「バイト」の内容が強盗と知らされずに現場に行った者もいるという。
親御さんのなかには、自分の子供が魔の手にかからないか心配している方もいるかと思う。
実際、闇バイトの募集であると気づかずに応募する人がいる。
一般的に「高額報酬」をうたいバイトを集めるが、筆者が取材をしたある女性は、1万5000円ほどの日給のアルバイトに応募して、犯罪行為だとは知らされずに仕事をさせられている。
1回目の仕事ではわからずに、2回目に高齢女性から紙袋を受け取ったところで詐欺ではないか、と気づきますが、結果として詐欺に加担することになっている。
こうならないためにはどうすればよいのだろうか。
十数年にわたって、闇バイト募集に調査電話をかけて、リクルーター(詐欺の募集をする役)と話をしてきた筆者の経験から、解説できればと思う。
闇バイトとして募集されるものには、現金を直接に取りにいく「受け子」、キャッシュカードでお金を引き出す「出し子」、海外リゾートバイトなどといって、海外のアジトで詐欺の電話をかけさせる「かけ子」、銀行口座を新規で開設したり、スマホを契約してくれれば、報酬を払うというものもある。
ただしSNSですぐに闇バイトとはわからないよう掲載していることも多くある。
なかには闇バイトへの注意を呼びかけて、「ホワイト案件」(詐欺ではない仕事募集)とうたう募集もある。
闇バイト募集を見抜くには、「高額バイト」「高収入」「即日即金」「UD(受け子、出し子の隠語)」「運び」といった言葉を覚えておいてほしい。
これらが書かれていたら、闇バイトの可能性があると思って立ち止まってほしい。
これが見抜くための第1のポイントだ。
しかし募集に興味をもってDM(ダイレクトメッセージ)を送り、連絡を取る方もいるかもしれない。
第2のポイントとして、すぐに返事がきて秘匿性の高い通信アプリ(テレグラム、シグナル)にて「仕事の説明をしたい」と募集先から言われたら、闇バイトを疑ってほしい。
なぜこのアプリを使うのかといえば、犯罪の指示の証拠を消すためだ。
一般の求人募集ではこうしたアプリは使わない。
リクルーターらは口がうまく、応募者をだますための話術に長けている人物だ。
これまで数えきれないリクルーターたちと話をしてきたが、そのほとんどが特殊詐欺を長くやってきた人間であることがわかっている。
最初から威圧口調で話す人もいたが、ほとんどの人は親切で思いやりを見せるように話をしてくる。
その丁寧さから、犯罪にかかわる仕事だと気づかず話し続ける人もいる。
最初に彼らが聞いてくるのは、私たちの個人情報だ。
仕事の面接と称して、名前、生年月日、年齢、居住地を聞いてくる。
しかしそれだけではない。
続いて聞いてくるのが「借金はどのくらいあるのか」「いくら稼ぎたいのか」だ。
ほとんどの応募者が、お金に困って応募しているので、つい答えてしまいがちだ。
もし借金があることを明かすと「大変だよね」「これまでお金で苦労してきたね」と同情するように優しく接してくる。
そこで「うちの仕事では1回で5万円はもらえるから、すぐに借金は返せるよ」と言うわけだ。
しかし考えてみてほしい。
普通、仕事の面接で、いきなり「あなたの借金は?」などということを聞くことはないはず。
そうしたことを聞いてきたら、闇バイトの仕事であると思うことが必要だ。
これが第3のポイントだ。
犯罪行為をさせる前には、必ず応募した人の身分証を写真に撮って送るように言ってくる。
応募者の性格を含めて、すべての個人情報をつかみ、仕事と称して犯行に及ばせる。
ここには「家族に危害を加える」などと脅して犯行に駆り立てる狙いもある。
いずれにしても、応募先の人間は詐欺を長くしてきた人間なので、相手の心をつかむ術に長けている。
それゆえに20代の若者などはその魔の手にはまってしまいがち。
安易にSNSの求人にDMを送らないことが大事になる。
気をつけてほしいことに、一般の求人サイトの募集にも「配達、回収」や「携帯電話を契約する業務」のスタッフ募集のような求人を出しながら、実際には、詐欺などの犯罪に加担するように誘導するものもある。
求人サイトと一口にいっても、運営会社が利用者のことを第一に考えて、厳格に応募先の会社を調べてから求人を載せる場合と、ほとんど無審査のままに載せる求人サイトがある。
過去にも、求人サイトの募集に応募して、闇バイトに加担したというケースもあるので、名の知られた求人サイトの募集だから、絶対に大丈夫ということはないので、相手をだますような行為をさせるグレーだと思われる仕事は断ることが必要。
SNSを当たり前のように使う時代なので、親御さんとしても心配なところだと思う。
ネットは本人の関心のある情報ばかり表示されるようになっているので、なかなか強盗や詐欺などの犯罪の手口や注意喚起を目にする機会がないかと思う。
そこで、家庭のなかで、どんな文言が闇バイトの募集では出てくるのか、その募集からどのようにして犯罪に誘導されてしまうのかを話し合う機会を持ってほしい。
手口を知れば、立ち止まり、周りへの相談も容易にできるはずだ。
特にSNS上には個人情報を知られて犯罪に巻き込まれる危険がつねに存在する。
身元がよくわからない相手とは、つながりを持たないようにすることも必要。
取材した方のなかには、お金に困って「新規に銀行口座を開設すれば、資金を工面してあげられる」といった書き込みを見て、キャッシュカードを送ってしまい、それが詐欺に悪用されたケースもあった。
このときは「現金をプレゼントします」というアカウントをフォローしたことがきっかけで募集を目にしている。
SNS上のあらゆるところに、犯罪グループの罠が潜んでいる。
犯罪につながるようなワードを検索しない、危険そうなアカウントをフォローしないといった、きっかけをつくらない心がけも大事になる。
参照元∶Yahoo!ニュース