臓器移植で緊急性の高い患者を優先するルール、対象を肝臓のみから「心臓・肺」に拡大へ

脳死者から提供された臓器の移植を受ける患者を選ぶ基準について、厚生労働省は、命の危険が迫り、緊急性が高い患者を優先するルールを拡大する検討に入った。
肝臓だけでなく、心臓や肺に広げる。
移植が間に合わずに亡くなる患者を減らす狙いがある。
月内にも開く厚生科学審議会の臓器移植委員会で議論を始める。
脳死者から提供された臓器については、日本臓器移植ネットワーク(JOT)が厚労省の基準を踏まえて、移植を待つ患者の優先順位を決める。
上位から、患者が登録した移植施設に臓器の受け入れを要請する。
基準は、学会や研究会の提案を反映しており、臓器で異なる。
見直しは心臓移植から始める。
現在は待機期間が長い患者が移植を受けやすい基準になっている。
同委員会では、余命が短いと判断された患者については待機期間にかかわらず最優先に臓器をあっせんできないかや、対象となる患者の具体的な条件を議論する。
肺移植でも検討したい考えだ。
すでに肝臓では余命が1か月以内の患者に適用している。
このほか、心臓や肝臓などで臓器を摘出する施設と近距離の移植施設に登録する患者の優先度を高める案も検討する。
両施設が離れているため、臓器の搬送を担う人員や手段が確保できず臓器の受け入れを断念する場合がある。
搬送時間の短いケースを優先させることで、断念を防ぐことが期待できるとする。
JOTによると、9月末現在、国内の待機患者は1万6452人。
23年は592人が移植を受けた一方、463人が待機中に亡くなった。
移植を受ける患者の選定基準の見直しは、より多くの命を救うためだ。
具体的な検討に入る心臓は、移植を受ける患者の待機期間が長期化し、平均5年を超えている。
現行基準では、待機中に病状が悪化しても優先されず、命を落とす患者が後を絶たない。
厚生労働省が9月に公表した移植の実態調査では、一つの臓器あっせんで多くの患者が移植を見送られていた現状が判明した。
効率的なあっせんが行われていないとして、移植医療体制の改革案に盛り込まれた。
今後、臓器摘出の施設と移植施設の近さを優先する案も議論される見通しだ。
移植を受ける患者数は増加傾向にあるが、待機患者数を大きく下回る。
一日でも早く移植を受けたいと願う待機患者が納得できる基準にするには、見直しにより、移植の優先順位が下がる患者への影響も含め、慎重な議論が求められる。
参照元:Yahoo!ニュース