センキョの疑問「ネット投票、なぜ導入されない?」 不正危惧、法改正も壁に

「インターネット投票が導入されれば、選挙管理委員会の職員だけで選挙を運営できるのかもしれない」
20日の市議選に続き、27日も衆院選の投開票が行われることになった伊豆市。
市議選や衆院選小選挙区と比例代表、最高裁裁判官国民審査の四つが行われる期日前投票所で、市選管職員はそんな想像を巡らせた。
同市では選挙1回につき、投開票所の運営に市職員約350人のうち約200人の配置と約2千万円の経費を要するため、2週連続で選挙を行う負担は重い。
だがネット投票であれば「現在のような投開票所は不要になるはず」と市選管職員は話す。
ネット投票は、北欧のエストニアなどで導入済みのほか、国内では、国家戦略特区「スーパーシティ」に指定された茨城県つくば市が実証実験を重ねている。
市が2022年に行った模擬選挙にはマイナンバーカードを持つ1506人が参加。
ハガキのQRコードをスマホで読み取り、マイナンバーカードで個人認証を行った後、架空の候補者に投票した。
早い人は5分ほどで作業を終えたという。
だが、公選法は立会人が同席する投票所での選挙を原則とする。
他人の目が届かない場では望まない投票を強要されるといった不正が起こり得るためだ。
このため総務省は第1段階として、立会人不在かつ郵便で行われる海外在住者の「在外投票」でのネット投票導入を目指し、システム構築に向け検証を続けている。
それでも厳密な個人認証や二重投票防止、「投票の秘密」の厳守など、安全性担保のための技術的課題は山積する。
自民党内では「サイバー攻撃によるシステムダウンや不正投票の懸念が拭えない」と慎重論も根強い。
同省の担当者も「技術面も含め、詰めるべき点はまだまだ多い」と語り、公選法改正も含めて壁は厚い。
17年には同党の若手国会議員がネット投票解禁を総務相に提言し、21、23年には立憲民主党などの野党が導入推進の法案を提出したが議論は進んでいない。
導入の是非について、衆院選候補者の各陣営はさまざまな見方を示す。
ある与党前職の関係者は「若年層がネットで投票するとユーチューバーやインフルエンサーに票が流れるのでは」と警戒。
野党前職のスタッフは「公平公正なら多くの民意が表れるのは良いこと」と期待する。
焼津市の大学生小長谷笙さん(19)は「ネット投票が導入されても、選挙に関心が薄い人はやらないと思う。投票方法だけでなく選挙に関心を持ってもらう方法も考える必要がある」と指摘する。
参照元:Yahoo!ニュース