23年前―「いってらっしゃい」が8歳の次男との最後の会話に 「愛する家族を奪われるとどうなるのか―」交通事故で最愛の息子を亡くした母の『命の授業』

登校中に交通事故に遭った小学生をイメージした写真

「45人」。

この数字は2023年1年間で、青森県内で交通事故で亡くなった人の数だ。

事故の発生件数と死者数、負傷者数はいずれも前の年から増加に転じ、死者数は5年ぶりに40人台となった。

こちらの女性は、こうした交通事故の被害者、遺族を支援する「あおもり被害者支援センター」理事の田代祐子さんです。23年前に最愛の息子を亡くした実体験をもとに、交通安全を訴え続けている。

青森県八戸市の八戸水産高校で行われた「命の大切さを学ぶ教室」。

壇上で田代祐子さんは、全校生徒170人を前に23年前に起きた交通事故について話しはじめた。

田代祐子さん「かけがえのない息子の事故、事故後の私たちの生活を通して、愛する家族を奪われるとその家族はどうなるのか、また、みなさんの近くにそのような方がいらしたらどのように接したらいいのか。在りし日の息子の写真を見ていただきながら、命というものを考えていただきたい―」

インラインスケートを履いて笑顔を見せる男の子。

田代さんの次男・尚己くんは、この約1か月後に8歳でこの世を去った。

階上町の小学校に登校中、横断歩道で車にはねられた尚己くん。

学校までの距離は残り500m。

一瞬の出来事でした。

田代祐子さん「その日のことはいまでもしっかりと頭に焼き付いています。尚己と兄、わたしの3人で家を出たのです。途中、兄は友だちと会い、いつもと違う道を行くことにしました」

「尚己はいつもと違う道だったのでわたしに『いい?』と確認しました。そこは2m幅の広い道路で歩道もあって町道なので、スクールゾーンになっているので、いつもの道より安心と思い、『いいよ、いってらっしゃい』とそこで別れました―」

いつもと変わらない日常の会話が、尚己くんと交わした最後の言葉になった。

それから20年あまり―

尚己くんが交通事故で亡くなった2001年は、県内では統計開始以降最多となる9450件の交通事故が発生し、110人が命を落とした。

2023年1年間は交通事故が2619件、死者は45人となっている。

この20年あまりで大きく改善した。

この間、田代さんは交通事故の被害者や遺族を支援する団体の一員として、学校での講演などで交通ルールを守ることや遺族としての思いを伝えてきた。

田代さんの話を聞いた女子生徒(3年生)「日頃から普通に生きていて、命の重みを感じていないというか、意識して生きていないが、こういうのを聞いて命の重さとか大切さを知ったし、自分が死んでしまったら悲しむのは周りの人だとわかった」

田代さんの話を聞いた男子生徒(3年生)「自分も何回か交通事故に遭っているので、これから生きていくときには車とかに気を配っていきたい」

最愛の息子との突然の別れの傷は、癒えることはない。

それでも伝えることをやめないのは、命を大切にしてほしいと願うからだ。

田代祐子さん「本当に自分たちの身近にそういうことがあったことを知ってほしいし、それは珍しいことではなくて、あり得ることなので命を大切にしてほしい」

被害者も加害者も出さない社会へ―。

田代さんは尚己くんとともに伝え続ける。

参照元:Yahoo!ニュース