「もどかしかった」菜々緒、30代中盤での転機を明かす「人生を豊かにできるものが、たくさんある」という気づき

女優の菜々緒(35)がテレビ朝日系ドラマ「無能の鷹」(金曜・後11時15分)で主演を務めている。
デビュー以降、持ち前の美貌(びぼう)を武器に第一線で活躍し続けてきたが、30代中盤に差し掛かったタイミングで転機が訪れたという。
その時の心境について振り返りながら、今ドラマに込めた思いや将来像についても語った。
キリッとした格好良い表情。
ロングヘアが似合うスラッとしたスタイル。
テレビなどでその姿を見る度、ごくごく庶民的な暮らしをしてきた記者にとって、遠い存在の人だと思い込んでいた。
そんな自分に「ちゃんと相手してくれるのだろうか」と勝手に身構えていたが、心配無用だった。
どんな質問にもにこやかな顔つきで応じてくれたおかげで、リラックスしてインタビューを進めることができた。
冒頭、出演する「無能の鷹」に関する話題を振ると、自ら打ち明けた。
「この作品のオファーを頂いた時、体と心が疲れてしまっていた時期だったんです」。
約1年前に心身の不調を起こしていたという。
「年齢的な部分でしんどくなってきて、気持ちと体が追いつかないっていう感じになって…」。
真っすぐ目を合わせ、包み隠さずに苦しんだ日々を話し始めた。
大学生の頃に芸能活動を本格的に開始すると、ノンストップで駆け抜けてきた。
「ありがたいことに仕事が途切れることがなくて。こんなに忙しくなると思ってなかった」。
目まぐるしい毎日だったことは想像に難くないが「ただただ、好きなことをやらせてもらえるありがたさをかみ締めながら目の前の仕事を過ごす日々でした」と前向きな気持ちで過ごしていた。
30代中盤に差し掛かり、直面した心身の疲労感。
持ち前の美貌はキープし続けているが、体力面では年齢を感じ始めるようになっていた。
仕事が大好きだったからこそ「すごくもどかしかった」と、ぶつけようのない悔しさで胸がいっぱいになったが、自分を守るために仕事量をセーブ。
「自分に厳しかったり、完璧主義なところをなくしていこうと。バランスを考えながらやっていかないといけないタイミングなんだなと思いました」とプライベートの時間を増やすようにした。
休養に入ったわけではないが、一度、頭の中から仕事のことを切り離した。
「海外に行ったりとか、そういう経験を積んで自分を見つめ直しました」。
自分の時間を過ごしていくうちに、新しい世界が広がった。
「仕事だけではわからない人と人とのコミュニケーションで生まれるものだったり、日本だけじゃない違う国に行った時の発見が刺激的でした。人生を豊かにできるものが、もっとたくさんあるんだなと感じましたね」。
そう話すと、顔色も次第に明るくなっていった。
ワークライフバランスを整え、今は体も心も万全の状態。
「がむしゃらにお仕事させていただいた20代も楽しかったけど、こうやってプライベートとバランス良くやらせていただいてるのもすごく楽しい。その時の自分に合わせて行動していくのが大事なんだなと気づきました」。
充実感にあふれた表情で、幸せをかみ締めるように言葉を続けた。
「今が一番良い感じなのかなという気がします。いろんなものが豊かになった―」
そのタイミングで舞い込んできた「無能の鷹」の主演。
見た目は有能だが、実は全く仕事ができない“無能”なOL・鷹野を演じる。
「今の社会で生きづらさを感じる人ってたくさんいらっしゃると思うんですけど、生きてるだけでも素晴らしいじゃないですか。肩の力が抜けたりとか、背中を押せるような作品を作りたいなという気持ちです」。
自らに言い聞かせるようにゆっくりうなずいた。
ちなみに、自身が無能だと感じることを問われると「スポーツ全般苦手です」と即答。
「一度、時代劇で私が先頭に立って走る盗っ人集団のシーンがあったんですけど、めちゃくちゃ足の遅い私が先頭に立っちゃったものだからザワザワし始めて…」。
あまりの鈍足に集団が行き詰まってしまい、共演者も失笑していたという。
インタビュー室へ入る際にヒールをコツコツと鳴らしながら歩くさまは、格好良いオーラたっぷりだったが、もしかすると走り方はブサイクなのかもしれない。
恐る恐る、疑いを投げかけると「変ではないですね。致命的に遅いってだけで」と笑い声を上げながら否定した。
そんな、見た目と反する一面もあるが、撮影には自分なりの使命感を背負って挑んでいる。
「自分自身が苦しい時期を過ごしたからこそ、力を抜いてありのままの自分で生きていく鷹野を演じて、いろんなヒントを与えられる作品になればなと」。
言葉の端々に力強さが増していた。
最後に、これから目指す将来像を聞くと、優しい笑みを浮かべながら今の菜々緒らしい答えが返ってきた。
「お仕事とプライベートを両立しながら、楽しんでやってるところを見てもらえるだけでも、影響を与えられるような存在でいられたら良いのかなと思ってます」。
不調を経てたどり着いた、無理せず自分に合ったペースで生きていくことの大切さ。
息が詰まりそうなせわしない世の中だからこそ、着飾ることのない自然体の姿を見せていく。
参照元:Yahoo!ニュース