米9月雇用統計25.4万人増

アメリカ国旗をイメージした写真

米労働省が4日発表した9月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月比25万4000人増で予想(14万人増)を大幅に上回り、過去6カ月で最大の伸びとなった。

失業率も改善し、経済がなお勢いを維持している状況が示されたことで、米連邦準備理事会(FRB)が年内に大幅利下げを実施する公算は小さいとみられる。

市場関係者に見方を聞いた。

・<マリン・ストラテジーズ シニアマーケットアナリスト 香川睦氏>

雇用統計では米国経済のホームラン級の強さが示された。

9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では景気後退懸念が意識されていたため、米連邦準備理事会(FRB)は予防的な利下げを決めた。

今回の米雇用統計の結果を受けて、景気減速懸念は後退、FRBは大幅利下げを行わないとの見方が広がり、市場は株高・円安で反応、幅広い業種が買われる展開となっている。

日本株は米国株と為替動向が行方の7─8割を左右するとみられているが、きょうは国内政治も株価の押し上げ要因になっているとみている。

石破茂首相が裏金議員を衆院選で非公認とする方針を示したのは、一定の国民の支持を得る。

今回の方針で自民党は絶対安定多数は確保できるとの安堵感で、海外投資家もプラスと捉えるのではないか。

ただ、「火事は最初の5分、選挙は最後の5分までが勝負」とも言われるように、選挙は蓋を開けてみないとわからないことが多い。

選挙の結果次第では、石破首相の短命政権が意識され始め、求心力低下の懸念が高まることもあり得る。

また、米大統領選が1カ月以内に迫る中、市場ではオクトーバー・サプライズ(10月の波乱)が警戒され始めている。

2016年の選挙では、優勢とみられていたヒラリー・クリントンが敗北、10月に判明したメール問題が発端になったとみられている。

10月は不透明要因の多さからボラティリティが高まりやすいだけに、株価の上値は重くなりやすいだろう。

・<関西みらい銀行 ストラテジスト 石田武氏>

9月の米雇用統計はサプライズ。

非農業部門雇用者数も失業率もケチのつけようがない「ホームラン級」の内容で、特にここ最近は弱い数字が続いていた後ということもあり、インパクトが大きかった。

市場の利下げ織り込みも、9月に50ベーシスポイント(bp)利下げした後、11月はスキップするのも不自然ということで、「年内は25bpが2回」に後退し、米10年債利回りも4%近傍まで上昇。

またドル/円も150円手前まで上昇し、いずれも年内あと2回、計50bpの利下げと整合的な水準で、米金利もドル/円も一旦いいところまで上昇したと言える。

その意味では、米国で今週(10日)発表される9月の消費者物価指数(CPI)は非常に重要だ。

もしも雇用統計に加えてCPIも強いということになれば、年内あと50bpの利下げも不要ではないかとの見方が浮上しかねない。

円金利もきょうは米金利上昇に追随して0.9%台に上昇しているが、こちらについては既にいいところまで上昇したというより、今後の日銀のスタンス次第では1%に向けてダラダラと上昇する可能性があるとみている。

例えば150円を超えるドル高円安となれば当局からの口先介入があるだろうし、植田(和男)日銀総裁も「時間的余裕がある」と言っていられなくなるかもしれない。

また円安を問題視する世論が高まれば、衆院選挙に向けて石破茂首相のスタンスも変わってくる可能性があり、そういった場合には円金利に一段の上昇圧力がかかるだろう。

・<GCIアセットマネジメント ポートフォリオマネージャー 池田隆政氏>

市場予想を上振れ強い結果となったが、平均時給が予想を上回っている点は落ち着いてきていた米国のインフレが再燃するリスクもあり、手放しでは喜べないとみている。

これから発表される消費者物価指数(CPI)や卸売物価指数(PPI)を見極める必要があり、まだ消化しきれていない部分もあるのではないか。

きょうの日本株には円安によって買いが入っているが、ドルが150円を超えて一段と円安に振れる展開は見込みづらく、日経平均の上昇が継続するかは不透明だ。

むしろ、為替と株価の連動性が高い分、円高に振れた場合は売りが強まる可能性もあり、注意が必要だろう。

日経平均は4万円台を上抜けてどんどん上がっていくというよりは、3万9000円台を中心に横ばい圏での推移が続くとみている。

・<みずほ証券 チーフ為替ストラテジスト ⼭本雅⽂氏>

堅調な米雇用統計を受けて、11月連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利下げが行われるとの期待は市場で消滅し、むしろ据え置きの織り込みが高まり始めた。

とはいえ、利下げ局面入り後も政策金利は歴史的高水準にとどまり、米国の経済指標は、今後も改善し続けるというより、一進一退となる可能性が高い。

0.25%の利下げをメインシナリオとして、指標の結果次第で据え置きと0.5%利下げとの間で市場の期待は変動し、ドル/円も上下に振れやすい展開が続くだろう。

今週の消費者物価指数(CPI)などインフレ関連指標が上振れした場合、ドル/円は一段高となる可能性がある。

目先の上値めどは8月15日に付けた直近高値149.39円で、そこを上抜けると200日移動平均線が通る150.10円付近となる。

・<ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏>

米雇用統計は完璧な内容といえる。

失業率が下がり、時給の伸びが加速し、非農業部門雇用者数の伸びも強かった。

8月、9月と、米景気懸念が取りざたされたが、いったん懸念を払しょくしただろう。

次は消費がどうかに焦点が移る。

米小売売上高が強ければソフトランディング(軟着陸)期待がさらに高まる。

ドル高/円安となれば日経平均も上昇しやすい。

石破茂首相が、政治資金問題で党内処分の重かった議員を衆院選で非公認とする方針を示したことは、選挙に向けて与党支持にプラスだろう。

株価にとって「選挙は買い」が意識されやすくなる。

日経平均は4万円が視野に入ってきた。

節目として利益確定売りが膨らみ、目先の上値めどになり得る。

一方、今後控える日本の衆院選、米国の大統領選の結果にもよるが、米景気の腰折れがないことが今後数カ月確認され、国内の企業決算で上方修正が相次ぐようなら、年末にかけては一段高を試し得る。

参照元:REUTERS(ロイター)