日本の〝夢〟がまたしても シンエンペラーはなぜ12着に敗れたのか? レース後に響いた矢作調教師の重たい言葉

世界最高峰の舞台に挑んだ日本勢の悲願は、またしてもはね返された。
GⅠ凱旋門賞(6日=パリロンシャン競馬場、芝2400メートル)に〝日本代表〟として出走したシンエンペラー(牡3・矢作)は12着、武豊騎乗のアイルランド調教馬・アルリファー(牡4・Jオブライエン)は11着に敗れた。
両馬はそれぞれ3、5番人気に支持されるなど日本の競馬ファンの期待も高かったが…。
現地で両陣営の密着取材を続けてきた三嶋まりえ記者がリポートする。
報道陣の前に姿を現したシンエンペラーの矢作調教師は、しばらくうずくまり、肩を落とした。
「正直かなり自信がありました」(矢作師)。
前走のアイリッシュチャンピオンSは、状態が整っていない中で3着。
それもスムーズさを欠いたもので、凱旋門賞へ向け、期待が高まっていたが…。
レース当日は雨を含んだ重い馬場に。
シンエンペラーはまずまずのスタートから中団前めを追走。
行きっぷりよくフォルスストレートを通過したものの、直線へ向くと、鞍上の手が激しく動いた。
最後はアルリファーにかわされたところでゴール。
勝ったブルーストッキング(牝4・Rベケット)とは約12馬身と大きな差があった。
日本の〝夢〟にまたも立ちはだかった欧州勢。
今年も悲願達成はならなかった。
ただ、今回の取材では陣営から凱旋門賞に出走する日本馬とは思えない言葉をよく聞いた。
「重い馬場を他馬が苦にするようならむしろいいかも」。
仏アルカナ社のセールで購入されたシンエンペラーは、2020年の凱旋門賞を制したソットサスの全弟。
陣営は馬場をこなせるとみて、大舞台へ挑戦していた。
それだけに、矢作師は「馬場について言い訳するつもりは一切ありません。わかっていて来ているわけだから」と語気を強め、騎乗した坂井瑠星も「道中の雰囲気も良かったし、そこまで馬場を気にしている感じはなかった」と振り返った。
では、敗因はなんだったのか。
「自分で使ったのは2回だけど、何回も何回も見てきた。だけど、わからないとしか言いようがない。凱旋門賞は結果が出ていない。だから、わからない。俺の方が聞きたいよ。このレースは答えが出ないな。これからいろいろと考えたい」。
国内だけでなく海外でもビッグレースを制してきた〝世界のYAHAGI〟も頭を抱える。
それほどまでに難解なレースが凱旋門賞なのだろう。
今回の海外出張では、凱旋門賞を制しているA・オブライエン調教師、マイケル・キネーン元騎手に取材をすることができた。
彼らは「ものすごく競争が激しく、時に運も必要なレース。でも、だからこそみんなが勝ちたいと思っている」と口を揃えた。
矢作師の悲痛な面持ちを見ると、簡単に来年こそ…とは言えない。
だが、初挑戦の坂井が「結果を出せなかったことは残念ですが、チャレンジしないと勝てない。今後の糧にしたいと思います」と言えば、11度目の挑戦となった武豊も「(オーナーには)また来年頑張ろうと言っていただきました。なかなか苦戦していますけど、ずっとジョッキーをやめられないですね。また頑張ります」と前を向いていた。
容易に届く頂ではないことは痛感しつつも、日本馬、そして日本人騎手が、いつか凱旋門賞のトロフィーを手にしているところが見たい。
参照元:Yahoo!ニュース