「1軒目でビールをジョッキ8杯」飲酒運転で親子をはね「危険運転致死傷」の罪に問われた男に「求刑通り」懲役12年の判決 裁判所「正常な運転はおよそ困難と認識 結果は取り返しのつかない重大なこと」指摘

飲酒運転で事故を起こした現場をイメージした写真

大阪府岸和田市で去年、飲酒運転で付き添っていた当時82歳の女性をはねて死亡させ、目が不自由な51歳の息子に重傷を負わせた、危険運転致死傷の罪に問われた男に対して、大阪地方裁判所堺支部は、検察側の求刑通り懲役12年の判決を言い渡した。

無職の岩井拓弥被告(31)は岸和田市で去年12月、飲酒で運転が困難な状態で車を運転し、反対車線の路側帯を歩いていた、大久保春江さん(当時82歳)をはねて死亡させ、一緒にいた目が不自由な息子の孝之さん(51)に重傷を負わせた、危険運転致死傷の罪に問われている。

孝之さんは外傷性くも膜下出血など5カ月の治療を要するけがだった。

目が見えない孝之さんに、母の春江さんが付き添って歩いている中で起きた事件だった。

これまでの裁判で岩井被告は、起訴内容について「間違いありません」と認めていた。

検察側・弁護側の冒頭陳述で指摘されたのは、岩井被告が長時間にわたって多量の飲酒をしていたということだ。

・事件前日の午後8時半頃から職場の忘年会に参加
・1軒目の店でビールをジョッキ8杯飲みかなり酔った
・翌朝午前5時に終了するまで飲食店4軒で酒を飲んだ
・忘年会の会場まで車で行った理由は時間がなかったのと、新しく買った車を仲間に見せたかったから
・過去にも飲み会に車で行ったことはあり、運転代行で帰った
・この忘年会も運転代行で帰るつもりだった
(検察側・弁護側双方の冒頭陳述より)

そして裁判で大久保さんの遺族は、「幸せな家族の日常がめちゃくちゃになりました。一生、被告人を許すことはできません」と訴えました。

また事件で重傷を負った大久保孝之さんが、関西テレビの取材に対し、「岩井被告にはもう車に乗ってほしくない」と話していた。

【大久保孝之さん】「加害者は過去にも飲酒(運転)で物にぶつかったりしている。同じことを繰り返してるので、そんな方は信用できない。本人からの謝罪は僕には伝わっていない。法廷の場で謝罪をしてほしい」

そのうえで検察側は、「目の見えない孝之さんの世話をしていた春江さんが亡くなったことは、極めて重大」などとして、岩井被告に懲役12年を求刑していた。

きょう24日の裁判で大阪地方裁判所堺支部(武田正裁判長)は、「被告は長時間にわたり複数の飲食店で飲酒をし、酒に酔った状態で運転して対向車線を越えたり、居眠りをしたりするなど、正常な運転をすることはおよそ困難なことだと認識していた。落ち度のない歩行者の2人をはねて母を死亡させ、息子に5カ月の治療を要する重傷を負わせた結果は、取り返しのつかない重大なこと」などと指摘。

また弁護側が「運転代行で帰ろうとしていた」と刑を軽くするよう訴えていたことについては、「結果的に代行運転を呼んでおらず、あえて自動車を運転したので同情の余地はない」と述べた。

そのうえで「以前に飲酒運転で逮捕されたこともある中で、飲酒運転を軽視する態度は明らかであり、事故後の態度も真摯とはいえず反省は不十分」として、検察側の求刑通り、懲役12年の判決を言い渡した。

被害者で重傷を負った大久保孝之さんは、判決の言い渡しを傍聴していた。

閉廷後、関西テレビの取材に応じ、「家に帰ってから母親のもとに行って、『求刑通りの刑が出たよ』と報告したいと思います。(岩井被告には)罪に正面から向き合って、刑の期間を過ごしてほしい。飲酒運転は絶対にしてはいけないのだと(懲役刑の)12年で認識してほしい」と訴えた。

参照元:Yahoo!ニュース