移植あっせん業務を分割、手術受ける施設を複数登録できる仕組み導入 厚労省が改革案提示

臓器移植をイメージした写真

脳死者から提供された臓器の移植を担う病院が、人員や病床の不足などで臓器の受け入れを断念している問題で、厚生労働省は18日の臓器移植委員会で、移植医療体制の改革案を示した。

日本臓器移植ネットワーク(JOT)が単独で担っている臓器のあっせん業務を分割する方針や、移植を待つ患者が、移植手術を受ける施設を複数登録できる仕組みの導入が提案され、異論は出なかった。

体制の大幅な見直しは、脳死下の臓器提供件数の増加に伴い、JOTや移植施設の業務が逼迫(ひっぱく)しているためで、臓器移植法が施行された1997年以降初めてとなる。

あっせん業務では、脳死者の家族に臓器提供の説明と同意をとり、待機患者から移植を受ける患者を選ぶ。

厚労省はこの日、新設の法人が脳死者の家族への対応を担い、JOTは移植を受ける患者の選定に集中する案と、JOTと同様の組織を地域ごとに置く案を示した。

委員の大半は、役割を分ける案に賛同した。

また、臓器の受け入れの断念対策として、待機患者が事前に登録する移植施設を、原則1か所しか選べない方式から、複数登録を可能にする方式への変更も提案された。

移植の順番がきた患者は、1か所の施設が断念しても、別に登録している施設での手術を受けることが可能になる。

このほか、移植を受ける患者を選ぶ基準の見直しや、移植施設別に待機患者数や移植件数、移植後の生存率を公表することなどが盛り込まれた。

厚生労働省が移植医療体制の改革に乗り出すのは、ようやく増えてきた臓器提供に対し、移植を待つ患者につなぐまでの過程で目詰まりを起こしているためだ。

2023年の臓器提供は132件と過去最多となった。

一方で、日本臓器移植ネットワーク(JOT)のあっせん対応が追いついていない。

JOTのコーディネーターは、脳死者家族の希望を受けて病院に駆けつけ、臓器提供の説明と同意の取得にあたるが、18日の臓器移植委員会でも到着遅れの可能性が指摘された。

本紙の報道などで明らかになった移植を行う病院での病床不足などを理由とした臓器の受け入れ断念も、特定の病院に移植要請が集中している背景がある。

厚労省はあっせん業務の見直しで、家族対応と移植を受ける患者の選定を分ける案を示した。

受け入れ断念の対策では移植希望者が移植施設の複数登録を可能とする方策も明らかにした。

臓器提供者の意思を生かし、移植希望者へ着実に届けるため、速やかに改革を進めてほしい。

参照元:Yahoo!ニュース