回転ずしなのに「回らない」店舗が主流の時代、「選ぶ楽しさ」どうやって? 食品ロスも防げる工夫

回転寿司を食べている人

すしチェーンで「回らない店舗」が主流になってきた。

迷惑行為の防止や食品ロスの削減のために、回転レーンを取りやめる店舗が増えている。

各社はデジタル動画を活用するなどして、ネタを選ぶ楽しさの演出に力を入れる。

最大手の「スシロー」は一部店舗で、テーブルごとに設置した大型パネル上の動画ですしを流す「デジロー」を導入した。

すしにタッチすれば注文でき、おすすめのネタも表示される。

昨年9月から導入したところ好評で、今月末までに全国19店舗に拡大する予定だ。

スシローでは2023年、客がしょうゆボトルの注ぎ口をなめるなどした行為を撮影した動画がインターネットで拡散。

迷惑行為を防ぐため全店舗で回転レーンを中止し、タッチパネルで注文する方式に切り替えた。

だが、「すしを流しているほうが活気がある」(親会社フード&ライフカンパニーズの水留浩一社長)との思いもあり、デジローを導入した。

広報担当者は「食品ロス削減や衛生管理と、新しいネタに会える楽しさを両立させる」と語る。

各社にとって、回転レーンですしを流すことは店の看板だったが、食品ロスが増えることが課題だった。

衛生管理のため、レーン上で一定の時間が経過したすしは、廃棄していたからだ。

「回らないすし」を強化する背景には、消費者の意識変化もある。

マルハニチロが今年行った調査では、回転ずしで「回っているネタより、注文して握ってもらうネタを多く食べる」との回答は81.5%に上った。

ゼンショーホールディングス傘下の「はま寿司」も、9割の店舗で回転レーンを取りやめた。

注文を受けた商品をテーブルごとに流す直線型の高速レーンで対応しており、年間約1000トンの食品ロス削減につながると試算する。

スシローと同様、動画でネタを選ぶパネルを設置する店舗もある。

一方、くら寿司は注文レーンを設けつつ、回転レーンを全店で維持する方針だ。

AI(人工知能)で顧客の選ぶネタの動向を分析して回転レーンに流し、廃棄率を3%程度まで減らしたという。

訪日客を中心に「日本の文化として回転ずしを体験したいというニーズは多い」(担当者)といい、東京・銀座に4月にオープンした旗艦店に全長約123メートルの回転レーンを設けた。

回転ずし評論家の米川伸生氏は「回転ずしの根底には『選ぶ楽しさ』がある。

回らない店舗は効率的で今後も増えるだろうが、楽しさの工夫がなければ顧客は離れていく」と指摘する。

参照元:Yahoo!ニュース