庶民の味 サンマが久しぶりの豊漁 値段落ち着くも 長期予報では「楽観できない」

秋刀魚を食べている人

秋の味覚「サンマ」の不漁が近年続いている。

昨年は直近20年で約10分の1まで減少し、かつては1尾100円ほどだった店頭価格も千円近くまで高騰した。

ただ、今年はサンマ漁解禁後、8月16~31日まで全国の水揚げ量は、昨年の約4倍に上る「豊漁」となっている。

〝庶民の味〟復活に期待がかかるが、専門家は一時的なものだとして「楽観はできない」との見方を示している。

東京都練馬区のスーパー「アキダイ」関町本店にも、サンマが並び始めている。

«旬の味»とのシールが貼られたパックに入る北海道産のサンマは、脂が乗り、体長も30センチほどの大ぶりだ。

相次ぐ台風の影響で入荷は不安定なものの、価格は1尾300円ほど。

出回り始めた当初は高くなるとされることも加味すると、近年の高騰ぶりからは、かなり落ち着いた値段だ。

「サイズも大きく味もいい。出した分は1日で売れます」。アキダイの秋葉弘道社長からも笑顔がのぞく。

国立研究開発法人水産研究・教育機構によると全国のサンマ総水揚げ量は、漁解禁後の8月16日から31日までの間で、2598トンを記録し、昨年(642トン)の約4倍にも増えたという。

なぜ、突然「豊漁」になったのか。

その要因について、機構の巣山哲研究員は、まず「今年は例年に比べ漁場が北海道などの港から近かった」ことを挙げる。

近年の漁獲量の減少要因の一つに地球温暖化に伴う潮流の変化でサンマが日本近海に回遊しにくくなる「漁場の沖合化」があったが、今年は潮流が沖合に近づくなどしたため、近海漁でもサンマが取れるようになり、水揚げ量が増えたという。

加えて、主力の中型船や大型船のサンマ漁解禁が早まったことも漁獲量が増えた要因だとみている。

ただ、先行きには不透明感も漂う。

機構が7月30日に発表した長期漁海況予報などによると、近づいた潮流は一時的で、8~12月のサンマの来遊量は昨年並みの低水準になると予測されるという。

サンマ自体が急激に増えるわけではなく、外国船との〝奪い合い〟も続くとみられる。

水産庁によると、サンマの漁獲量は1990年代までは日本が大部分を占めたが、2000年代以降は台湾、中国の割合が増加。

日本の漁獲量は台湾、中国に次ぐ3位まで落ちた。

こうしたことから、巣山氏は「今シーズンも決して豊漁ではない」とみている。

サンマの漁獲量減少の余波は食卓だけではなく地域おこしにも影響が出ている。

平成8年から「さんま祭」を開催している東京都目黒区。

焼きサンマを無料で提供し、毎年多くが訪れるが、材料の確保に苦労している。

豊漁の年には、目黒区と友好都市関係の宮城県気仙沼市で取れた約5千匹を提供してきたが、来月13日に行われる祭りでは提供予定は約3分の1の約1500匹になるという。

目黒区の千田美都夫文化・交流課長は「目黒といえばサンマで区民の愛着も強く、できるだけ長く続けていきたい」と話している。

参照元:Yahoo!ニュース