SNSアカウント売買横行、規約違反でも「フォロワー数を伸ばして売るのは財テクの一つだ」

SNSをチェックしている人

SNSのアカウントがインターネット上で売買されるケースが横行している。

SNSの運営会社は利用規約で無断売買を禁止しているが、フォロワーが多い人気アカウントでは広告収入などを期待でき、価格が数百万円に上る例もある。

専門家は「アカウントが削除されるなどトラブルになりかねない」として対策の強化が必要と指摘している。

必ず収益化図れます。

大阪市でコンサルタント会社を経営する男性(43)は2022年、そんな宣伝文句でインスタグラムのアカウントを売りに出した。

男性が、副業として使うためにアカウントを開設したのは20年5月だった。

投稿する文章やデザインの作成を外部に発注し、韓国旅行を案内したり韓国語を学べたりする内容を毎日投稿。

韓流ブームに乗って、フォロワー数は最大17万人まで増えた。

投稿の最後には、特定の韓国語教室をPRする文章も載せた。

閲覧した人がその教室のサイトにアクセスしたり、実際に通うようになったりした場合は、教室側から報酬を受け取ることになっていて、多い月で50万円の利益を得ることもあった。

だが、外注費が次第に負担となり、アカウントの売却を思いついた。

22年3月に、仲介サイトを通じて売りに出し、希望価格を500万円に設定。

交渉の末、同月中に300万円で売却し、運営ノウハウもあわせて伝えたという。

インスタグラムを運営するメタは利用規約で第三者への無断譲渡は有償、無償を問わず禁止している。

男性は「利用規約違反だと分かっているが、運営会社から指摘されることはない。フォロワー数を伸ばすために大切に育てたアカウントを売るのは財テクの一つだ」と話す。

アカウントは、X(旧ツイッター)やインスタグラムなどを利用する際、電話番号などの情報を入力して無料で開設する。

フォロワーが多くつき人気を集めると、閲覧数に応じた広告収入などを期待でき、売買後もノウハウを引き継げば、同じように利益を得られる可能性がある。

メタ以外の主なSNSの運営会社も利用規約で、アカウントの無断売買を禁止しているが、インターネットやSNSでは多くのアカウントが売りに出されている。

売買を仲介するサイトの一つでは、そんな文言が並ぶ。

10日時点で、インスタグラムやTikTok(ティックトック)など少なくとも300件以上が販売されており、売買価格が数万円~数百万円となっていた。

複数のアカウントをまとめて数千万円の希望価格をつけるケースもあった。

こうした仲介サイトでは、生成AI(人工知能)の利用をアピールするものも多い。

生成AIは精巧な画像を作り出せるため、動物や風景の画像投稿など「誰でも簡単に運用可能」とうたう。AIで美女の画像を生成するというアカウントの売買では、ディープフェイクと呼ばれる偽画像を用いて運用できるとし、加工マニュアルも譲渡すると紹介されていた。

アカウントを無断売買した場合、運営会社によって利用の制限や停止などの措置がとられる可能性がある。

売買後にアカウントが閉鎖され、代金などを巡ってトラブルが生じる恐れもある。

国民生活センターによると、SNSをきっかけとした個人取引や広告などのトラブルに巻き込まれたという相談件数は、23年度で過去最多の約7万9000件となり、19年度に比べて3倍近くに増加した。

昨年3月には、SNSのアカウントの購入を巡り、「違約金が高額だった」という相談も寄せられたという。

ネット問題に詳しい福井健策弁護士は「アカウントの売買は多くの場合、利用規約に違反し、売買後にアカウントが削除されたり、犯罪に悪用されたり様々なリスクがある」と指摘。

「SNS上では、身分を隠して人をだますような悪質な行為も目立ち、運営会社側による防止策の強化が必要だ」と話している。

参照元:Yahoo!ニュース