小田急、なぜ踏切で乗客を“現地解散?神奈川で最大震度5弱の夜「苦渋の決断だった」

小田急電鉄の外観を撮影した写真

今夏は、神奈川県内で地震や台風により鉄道の運休が多発した。

8月末の台風10号などに伴う大雨では、JR東日本(東京都)のトンネル付近で土砂が流入し、小田急電鉄(同)では線路の盛り土が流出、各社運転見合わせが相次いだ。

8月9日の最大震度5弱を観測した県西部の地震では、小田急小田原線の一部区間が運転見合わせとなり、X(旧ツイッター)上に「踏切で降ろされて現地解散となった」といったコメントが投稿された。

なぜ小田急は乗客を降車させたのか-。

同社の担当者は「やむを得ず、苦渋の決断だった」と明かした。

現場となった踏切は秦野市菖蒲の県道710号沿いにある「渋沢8号」で、同線渋沢-新松田駅間の中間に位置する。

同駅間の線路の距離は約6.2キロで、小田急線全線において最も1駅間の距離が長い区間だ。

当時車両に乗っていた乗客はX上に「車両から降りて線路を歩くように言われたが、踏切で案内はおしまいですと。真っ暗な線路や鉄橋を歩かされた挙げ句…送迎もなく?」と投稿。

「なぜバスを手配してくれなかったのか」も多かった。

実際、記者も現場へ行ってみると、自然豊かな山間部。

周辺にはセブンイレブン秦野菖蒲店しか店舗はなく、徒歩で新松田駅まで向かうとなると45分ほどかかることが分かった。

夜間帯に歩く際は注意が必要だと感じた。

9日の地震発生後、小田急線は全線で運転を見合わせるも、午後9時ごろ江ノ島線藤沢-片瀬江ノ島駅間で運転再開。

15分後には、小田原線海老名-小田原駅間で脱線がないことを確認。

同線も一部区間で運転が再開され始めた。

震源地に近く、特に揺れが大きかった同線海老名-小田原駅間では運転見合わせが長時間続いた。

全線で再開したのは、翌日の午前3時50分。

約8時間後の再開で、上下線計101本、約3万5000人に影響した。

運転再開までに時間を要した経緯について、担当者は「試運転列車での安全確認が必要な基準の揺れであったため、列車を動かすことができなかった」と話す。

同社では、全線を網羅できる10カ所に地震計を設置している。

そのうち一つでも地表の加速度を40ガル以上計測した場合、運輸司令所に警報が自動通報され、警報を確認した司令員は列車を停止するための指示を手動操作する。

今回のような緊急地震速報に基づく警報は、列車へ直接自動通報され、いずれの場合も、警報を受信した乗務員が列車を手動停止させる流れとなっている。

停止後は測定値にもよるが、軽微な値であれば、最寄りの駅まで徐行運転することができる。

一方、測定値が一定規模を超えた場合は、線路や電路設備などの損傷、脱線や転覆も想定されるため、専門係員の徒歩での点検による安全確認が完了するまで列車を動かすことができない。

今回はさらに厳しい、徒歩での点検後に試運転列車を走らせるまで運転再開できない基準に値した。

同社によると、2011年の東日本大震災以降、初めて100ガル以上を観測したとし、担当者は「震災以来の異例の事態だった」と打ち明ける。

参照元∶Yahoo!ニュース