地震で保育園の子どもが心配 でもお迎えちょっと待って まずは親の安全確保を

避難訓練を実施している人

8月、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が初めて気象庁から発表された。

災害はいつ起きるか分からず、あらゆる状況を想定しておく必要がある。

共働き世帯が増え、子どもと離れている時間帯に大きな災害が発生する恐れもある。

子どもを保育園に預けているときに災害が発生したら、子どもの安否は気になるものの、果たしてすぐに迎えに行くべきなのか―。

防災に力を入れている保育園の避難訓練に密着するとともに、専門家に取るべき対応を聞いた。

「地震です!避難して下さい」「大丈夫、大丈夫だよ」 8月下旬、午前0時まで夜間保育を提供する千葉県松戸市栄町3の認可保育所「さわらびドリームこども園」。

保育中の午後7時半過ぎ、夜給食を済ませた後に震度6度の地震が発生、近くの河川が決壊し停電したーとの想定で訓練が行われた。

保育士が園児全員を教室の中央に集めて避難の準備や児童数の確認を実施した。

子どもたちには低い姿勢を呼びかけながら、防災用の帽子をかぶせたり上履きを履かせたりと移動の準備をさせた。

避難経路の安全確認を行うと、建物の3階に向かい保護者に避難したことを伝えるメッセージを送信した。

訓練を終え彦惣久美子園長は「真っ暗な中なので投光器で部屋全体を明るくし、子どもたちが不安にならないようにした。比較的職員も役割分担を意識して冷静に対応できたと思う」と振り返る。

保護者に対しては「まずはご自身の安全確保をしてもらいたい。子どもたちはしっかり守るので安心してもらえれば」とし、リスクを冒して迎えにくることは避けてほしいと強調した。

運営する社会福祉法人さわらび福祉会によると、同園は認可保育所として県内で唯一、夜間保育を提供する。

1月に能登半島地震の発生後、地域からの支援が十分に機能しない事態が生じる可能性があることを痛感し、金沢市や名古屋市など夜間保育園を運営する5つの法人と「災害時等相互応援協定」を締結した。

要請に応じて、物資の供給や応援職員の派遣などを行う。

その他にも保育園は、園内での避難が長期化するケースを考慮し、1週間分の食料を備蓄。

防災士の資格を持つ職員もおり、万が一に備えている。

「無理に迎えに行こうとしないでほしい」。

専門家も、災害時の保護者の対応についてこう説明する。

自身も阪神・淡路大震災を経験し、防災ガイドを務めるあんどうりすさんは「そもそも災害時には『72時間一斉帰宅抑制』の方針を定める自治体もあり、保育園に預けている場合、親が3日間子どもを迎えに行けない場合がある」と話す。

大災害が起きた際、歩いて無理に帰宅しようとせず、安全な場所にとどまる「一斉帰宅の抑制」を東京都は条例で定めている。

歩行者が道路をふさいで救急車などの緊急車両が通れなくなったり、群衆雪崩などの二次災害が起きたりする危険性があるからだ。

千葉県内でも両親が子どもの預け先から離れた場所に勤務しているケースは少なくない。

そのため「保護者は3日間子どもと会えなくなることを前提に、保育園が災害時にどういった方針なのかをあらかじめ確認しておく必要がある」と強調する。

まずは園からの連絡手段を確認しておくと安心だという。

保護者が園に個別に連絡してしまうことで、災害対応で忙しい保育士が電話対応に追われてしまい、子どもたちの安全確保が難しくなる場合がある。

「災害時に園からどのように情報が発信されて、どのように保護者側がキャッチするのかは事前に分かっていないと不安になる。平常時に連絡手段や園の備蓄などは確認しておいてほしい」と話す。

迎えに行く場合のリスクも考えておきたい。

道路にブロック塀が落ちてきたり、液状化でマンホールが浮き上がっていたりする恐れがあり、子どもと一緒に行動することでかえって危険が伴う場合もある。

普段の送迎の際に危なそうな場所や、途中で待機できる一時避難場所などを確認しておくと安心だ。

「絶対に迎えに行く」と伝え、子どもを安心させる さらに、あんどうさんは、子供が不安にならないような言葉を事前にかけておくことが重要と説く。

「子どもたちにとって保育園は、自宅以外の遊び場で安心できる場所でもある。無理に迎えに行こうとせず、子どもにはあらかじめ大きな災害の際にはお父さんお母さんが動くとかえって危なくなってしまうこと、けがした人たちを守るためにみんなその場にとどまることがあると伝え、『絶対迎えに行くからね』と伝えて安心させてあげてほしい」と説明する。

その上で「園の避難場所がそもそも安全なのかなど保育園と保護者が一緒にじっくり考えてほしい。大きな災害の場合は、対応が〇か×で判断できないことがたくさんある。災害が発生する前に、事前に意見交換していくことも大切だ」と訴える。

参照元∶Yahoo!ニュース