「MBTIハラスメント」とは何か? 公式団体は「あってはならない」と注意呼びかけ

ハラスメントをイメージした写真

職場の代表的なハラスメントといえば、パワハラにセクハラ、妊娠出産に関するマタハラや、精神的な攻撃を与えるモラハラなどが定番になっている。

ここに、新たな嫌がらせが加わることになるかもしれない。

Xには最近「MBTIハラスメント」という言葉が散見される。

MBTIとは、4つのアルファベットで人間の性格を16のタイプに分類する検査だが、この結果を使って他人を安易に判断し、不快にさせるケースが生じているようだ。

Wikipediaによると、MBTIとはマイヤーズ=ブリッグス・タイプ指標(Myers-Briggs Type Indicator)の頭文字を取ったもので、精神科医ユングの著書「心理学的類型」に基づき、1962年にアメリカ人母娘が開発した「疑似科学的な自己申告型のアンケート」とされている。

MBTIでは回答者にさまざまな質問を投げかけ、その答えを基に4つの要素を2つの方向性に分けて組み合わせる。

その結果、回答者は16の性格に分類される。

・興味関心の方向:外向的(Extravertion)か内向的(Introvertion)か

・ものの見方:感覚型(Sensation)か直観型(N:Intuition)か

・判断の仕方:思考型(Thinking)か感情型(Feeling)か

・外界への接し方:判断型(Judging)か認知型(Perceiving)か

「16Personalities」によると、例えば、内向的で直感型、感情型で認知型の場合には「INFP」となる。このタイプは「仲介者」と位置づけられ「詩人肌で親切な利他主義者。

良い物事のためなら、いつでも懸命に手を差し伸べる」性格とされる。

また、外交的で直感型、感情型で判断型の「ENFJ」は、同サイトで「主人公」と位置づけられ「カリスマ性があり、人々を励ますリーダー。

聞く人を魅了する」性格とされる。

ポジティブな評価であれば、一種のエンタメのように受け取りながらも、さほど悪い気はしないかもしれない。

一方で、診断された性格タイプが納得できないと感じる場合、不快になるのも分かる気がする。

特に「あの人は◯◯タイプだから、軽率で責任を持たない」とネガティブな評価に結び付けられたり、アンケートも実施していないのに「あの人は独裁者だから、たぶん××タイプだね」などと勝手に評されれば、ハラスメントといわれてもおかしくない。

しかしXには、16Personaritiesの診断結果をMBTIと表記して濫用する人がいることをうかがわせる投稿が見られる。

「就活の採用のフローの中にMBTI診断を提出させている企業があると聞いて絶句。しかもこれが研修後の配属にも影響するとは。。。」

「某大手メガベンチャーの会社説明会に行ったら採用担当が意気揚々と自分のMBTI紹介してて軽く引いた」 

「知り合いの社長が面接でENTJ・ENTPは落としてるって言ってて、このあたり省くと組織化しやすいらしい。。」

前出の16Personalitiesによると、ENTJは優秀な管理者である「幹部」、ENTPは賢くて好奇心旺盛な「討論者」と位置づけられ、ポジティブな人材であることをうかがわせる。

一方で、同じタイプについて、別のサイトでは、

「ENTJ=人を操るのが得意で裏表があり、カリスマ的だが偽善的な人間」

「ENTP=議論好きで相手を論破することに快感を覚える、軽薄で持続力のない人間」と評している。

このような言葉でレッテルを貼られてしまっては、採用担当者もこういうタイプを雇いたくなくなってしまう。

以上は、あくまでも16Personaritiesの性格診断についてのコメントや解釈だ。

ネットを検索していると、一般社団法人日本MBTI協会のホームページに「MBTIと似ている性格診断テストについて」と題した文章が掲載されているのを見つけた。

そこにはこう書かれている。

「MBTIは、受けられた人の利益を最優先に考えていますので、検査結果だけで人の性格を判断したり、診断することはありません。MBTIは、受けた本人が自分の検査結果をきっかけにしながら、一定の訓練を受けた有資格者のもとで、自分自身の理解を深めていくプロセスのほうを重視するメソッドです」(一部要約)

このサイトによると、現在、日本で出版されている日本版のMBTIは国際規格に則って開発された性格検査であり、「本来ホームページなどで簡単に回答はできないものですし、してはいけないもの」だというのだ。

そこで日本MBTI協会に連絡をとると、MBTIを面白おかしく紹介したコンテンツがネット上に存在していることは協会として承知しているという。

「まず強調したいのは、MBTIがハラスメントとして使われることは、絶対にあってはならないということです。もちろんほかの心理検査も同様です。『疑似科学的』など不正確な部分がいくつもあるWikipediaの記述も、協会の修正が反映されない状況が続いています。私たちからは『MBTIに似て非なる検査は絶対に受けないでください』と言うことまではできません。しかし協会には、診断結果をネガティブな表現に勝手に解釈したサイトを目にしてしまい、時には号泣しながら電話をしてこられる方もいて、状況を大変憂慮しているのが正直なところです」

協会に寄せられている相談とは、どういうものなのだろうか。「例えば『私のタイプは自殺しやすいと書かれていて不安になってしまい、不眠症になってしまいました』とか『将来このタイプは貧乏になると書かれていて絶望している』とか。『自分のタイプは悪い母親になると書かれていてショックから抜け出せない』という方もいました。」

このような相談の増加を深刻にとらえ、協会のウェブサイトには「16Personalities性格診断テストを「MBTI(R)」だと思って受けられた方へ」というページを設けて、正式のMBTIの理解と注意を呼びかけている。

「そもそもMBTIは日本において商標登録されている(ので)商標権を侵害する場合には、損害賠償又は刑事罰の対象となります。また、MBTIの信頼を損ねるようなサイトや動画については、少なくとも不法行為に基づく損害賠償請求の対象となる可能性があります」(一部要約)

そして、MBTIを用いて興味本位なサイトや動画などのコンテンツを作っている人たちに対し「状況をご理解いただき、速やかなる対応をお願い致します」と呼びかけている。

そのうえで、協会としては、類似サイトをきっかけに少しでもMBTIに興味を抱いたのであれば、日本MBTI協会の有料体験セッションを受けてみては、と呼びかけている。

「MBTIは、検査結果をきっかけにしながら、一定の訓練を受けた有資格者のもとで、自分自身の理解を深めていくプロセスを重視するメソッドです。検査を受けた方の利益を最優先に考えていますので、検査結果だけで人の性格を判断したり、診断することはありません。ぜひ正しい使い方をしていただきたいです」

参照元∶Yahoo!ニュース