同僚は「任せろ」と言うものの 男性育休が急増、取得率3割 実態は

育休中の男性をイメージした写真

厚生労働省が7月末に発表した昨年度調査の結果によると、育児休業を取った民間企業の男性の割合は30.1%で、前年度の17.1%から急増した。

だが実際は、希望どおり休めていないという声もある。

「良い制度だと思うが、会社の態勢が整っていない」。

埼玉県の男性(36)は、2022年10月に始まった「産後パパ育休」(出生時育児休業)について、読者とSNSで双方向にやりとりする朝日新聞「#ニュース4U」取材班のLINEにそんな声を寄せた。

22年春に第3子が誕生し、育休を取得した。

仕事の引き継ぎを済ませ、同僚から「大丈夫だから。任せろ」と送り出された。

だが、2日に1回は顧客から問い合わせがあり、毎日1~2時間は仕事をせざるを得なかった。

制度上、労使の同意があれば休業中の仕事も可能だが、釈然としない。

そもそも、1カ月という育休の期間も妥協の産物だった。

人事部門から「半年でも1年でも」と言われたが、職場の上司から「1年休むなら営業をもう一人雇うか」と言われた。

そんなに休まれると困る、と遠回しに言われたと思った。

復帰後、管理部門から「どうだった?」と聞かれたが、「もう少し態勢を整えてほしい」と不満が残る育休になってしまった。

今年冬に第4子が誕生予定で、産後パパ育休を取得するつもりだが、「どうせまた仕事が入るので、少し諦めている」という。

各国の子育て支援策を評価したユニセフの21年の報告書で、育休制度は日本が「1位」だった。

男性が長期間、育休を取れる制度が評価された。

ただ、制度どおり休めるとは限らないのが現状だ。

甲南大学の中里英樹教授(家族社会学)は「男性の育休取得を促す制度は整ってきたが、今は過渡期で、育休取得者も職場の上司も苦しんでいる」とみる。

「企業としては、社員に子が生まれると分かれば、早々に育休の予定を話し合い、期間やカバー方法を検討するといい」という。

中里教授はさらに、「職場でも家庭でも、女性が家事・育児の中心だという発想を変えられていない。女性が長く育休を取る前提を変えないまま男性も長く育休を取れば、職場の人手不足感は大きくなる」と指摘し、解決策として「夫が単独で育休を取得してはどうか。ドイツやノルウェー、スウェーデンでは、夫婦が交代で育休を取得すれば、手当の額や支給期間が手厚くなる仕組みがある」と話す。

参照元:Yahoo!ニュース