1房100万円 超高級ぶどう 流出疑惑を追跡 韓国に続きタイにも拡大か

ルビーロマンを撮影した写真

1房100万円で取引されることもある超高級ぶどう「ルビーロマン」。

このぶどうが無断で持ち出され、アジアの複数の国に流出している疑惑が浮上。

「こちらの金沢市内のフルーツ店では、季節の果物と共にひときわ大きなぶどうが並んでいます。値札を見てみると1房3万円を超えています」

驚きの値がつくこちらのぶどうは、『ルビーロマン』と呼ばれる、ブランドフルーツ。

石川県が14年の歳月をかけて開発した。

「今の時期ですとお盆の帰省のお土産だったり、多い日は10~15箱は1日にでてますね」

「ラスト1kg、はい100万!」

先月の初競りでは、ひと房100万円の値を付けた『ルビーロマン』。

その名を名乗るには、様々な厳しい基準をクリアしなければなりません。

その基準とは、1粒の大きさが31mm以上、重さが20g以上であること。

そして、糖度が18度以上であることです。

「カラーチャートという色見本がございまして、その範囲に収まるような赤い色のもの。これを品質基準というふうにして出荷しています」

また栽培には、熟練の技術が欠かせません。

(ルビーロマンを研究 石川県農林総合研究センター 藤田良和 次長)「ぶどうは一本の枝に2房必ずなるんですが、それをまず1房にして、形の良いものを選びながら、粒の張りも良いものを選びながら徐々に摘除していく。糖度も上昇する」

『ルビーロマン』は、県と誓約書を交わしている100軒ほどの農家しか栽培できません。いわば“石川の至宝”なのです。しかし…(ソウル支局 河村聡)

「果物のネット販売サイトなんですけれども『ルビーロマン』と書かれたぶどうがありました。値段は1房44800ウォン。およそ5000円で売られています」

『ルビーロマン』と称し、破格の値段で売られているこのぶどうは、数年前から韓国で流通。

県が鑑定を行った結果、石川県産と同じDNA型であることが判明していた。

(馳浩 石川県知事)「ルビーロマンの苗木が本県から韓国に流出したと考えざるを得ないものであり、誠に遺憾であります」

(石川県民)「石川県で地元で作った品種なので、やっぱり韓国には取られたくないですね」

「(韓国で) 商標登録されたものが日本に入ってきたら残念」

(ソウル支局 河村聡)「実は全体的にはかなり大きいです。ただ大きい実もある一方で、ちょっと小ぶりな比較的小さな実もあります」

石川県の基準で“31mm以上”と決められた大きさは、大きい粒で36mm。

一方、小さいものは…「小ぶりな実でいうと、26mm、3cmを切りますね」

20g以上とされる重さは、大きいものは基準をクリアしているものの、小さいものは基準未満。

さらに、番組が用意した糖度計で測ってみると、「糖度はですね、13度ですね」

基準の18度以上には、はるかに及ばない結果となったのだ。

何故、流出は止められなかったのだろうか?

(富山大学 神山智美 教授)「(海外持ち出しが制限された)種苗法改正前の段階では、適法に購入されたもの、適法に譲渡されたものを海外へ持っていくことは決して違法な行為ではなかった。果樹の枝が折られるという形で、意図しない方法で契約者以外の方の手に渡ることもあると思います」

つまり、法律が改正される2021年4月以前に持ち出されたと思われる『ルビーロマン』は、違法ではないのだ。

こうしたなか、別の国でもルビーロマンが流通しているという情報が…

(バンコク支局長 西橋拓輝)「今タイ語で『ルビーロマン』といれたんですけれども、この上に表示されているこの4つ、これがルビーロマンの苗を販売しているという業者の投稿になっています」

東南アジア・タイのSNS上では“複数の苗農家”がルビーロマンを取り扱っていると投稿されていた。

番組では、その中の1人と接触することができた。

首都・バンコクから、車でおよそ3時間…。

「住宅の奥、いろいろ植えてある場所がありましたね。」

「これは?」

「ぶどうですけど。」

農園には、“巨峰”や“シャインマスカット”、“ウクライナ産”とされる苗も。

そして…「これですか?これがルビーロマンの苗だということですね」(農園のスタッフ)

「もう1本あります。これです」

業者が「ルビーロマンだ」というものが、2株あった。

別の農園から“日本のルビーロマン”としてオンラインで購入し、育てたという。

(農園のスタッフ)「育て始めてそろそろ1年になるけど、あまり伸びてこないんです。いくら待っても花が咲かないんです。(成った実で)本当にルビーロマンか確認します。もう少しで確認できると思うんです」

この業者から苗を入手。

写真をルビーロマンの研究者に見てもらいました。

(ルビーロマンを研究 石川県農林総合研究センター 藤田良和 次長)「この苗だけで、枝振りとか葉っぱだけでこれがルビーロマンかルビーロマンではないのかという判断はできないです。育てて(実を)成らせてというのが必要になるかなと思います」

正確な判定には、苗のDNA型を鑑定する必要がある。

さらに、中国の通販サイトでも『ルビーロマン』と書かれた苗が販売されていることも確認された。

止められない海外流出。

専門家は、経済的損失を危惧している。

(富山大学 神山智美 教授)「日本が輸出を本格化する前にそれら(海外の)の品種というのがルビーロマンとして各国に渡るわけですよね。本当のおいしさがきちんと評価されないものをもとにして、ブランドイメージというのが出来上がる可能性というのがあろうかなと思っています。経済的利益というものが失われてしまう、経済的損失というものが挙げられると思います」

6月末、石川県は韓国当局に対し、『ルビーロマンの品種名称登録の取り消し』を求めて意見書を提出。

韓国側は『現在審査中であり、まだ結論が出ていない』としている。

参照元∶Yahoo!ニュース