グーグル新Pixelは日本市場を強く意識 コンパクトハイエンドから折りたたみまで4モデルを展開する狙い

スマートフォンを操作している男性

Androidスマートフォンの盟主、グーグル。

自社ブランドのスマートフォン「Pixel(ピクセル)」シリーズの最新モデルには、日本ユーザーの声が取り入れられているという。

なぜ、グーグルは日本市場にこだわるのか。

グーグルが8月14日(日本時間)に発表したPixel 9シリーズのラインナップおよびオンライン直販の最小構成時価格は以下のようになっている。

Pixel 9:12万8900円~
Pixel 9 Pro:15万9900円~
Pixel 9 Pro XL:17万7900円~
Pixel 9 Pro Fold:25万7500円~

上からスタンダードモデル、コンパクトハイエンド「Pixel 9 Pro」、大画面ハイエンド「Pixel 9 Pro XL」、グーグルにとって2世代目となる折りたたみスマホ「Pixel 9 Pro Fold」だ。

注目は、日本市場の声を受け「小さくて高性能」なPixel 9 Proを投入した点だ。

Pixel 9 Proは、スタンダードモデルであるPixel 9と同じ6.3インチの画面サイズながら、上位モデル同等の性能を備える。

グーグルのPixelシリーズ担当バイスプレジデント、ブライアン・ラコウスキ氏は「日本市場からの声を受けてProモデルを小型化した。日本のユーザーから、片手で持てる高性能なスマホが求められていることを強く認識している」と説明する。 

実は日本の要望を積極的に取り入れるには理由がある。

日本は現在、Pixelシリーズの重点販売国となっているからだ。

IDCのレポートによると、グーグルの国内スマホ市場シェアは2022年の1.5%から2023年に10.7%へ拡大。

対前年成長率で527%に達した。

新モデルでは本体の素材も一新した。

グーグルがカメラバーと呼ぶ背面カメラ部の出っ張りの形状が見直されている。

重量バランスについても再設計され、手に持った際の重心が安定し、持ちやすくなっている。

Pixel 9シリーズでは、グーグルが独自に開発したチップセットであるGoogle Tensor G4を頭脳として搭載している。

AIが必要とする高度な処理を、高速かつ効率的に実行できるよう振り切った設計なっており、カメラやGeminiなどの高度なAI機能を支える。

Proの2モデルとスタンダードなPixel 9の違い、はディスプレイとカメラ、メモリー容量だ。

ディスプレイはどちらもリフレッシュレート120Hz駆動となっており、スクロールなどが滑らかに表示できるのは同じだが、Proシリーズのほうはさらに輝度が明るく、それでいて省電力なディスプレイを採用している。

Pixelシリーズといえば、「消しゴムマジック」に代表される、AIを使った写真編集機能「編集マジック」が有名だ。

今回、この編集マジックに「オートフレーム」と「イマジネーション」という2つの機能が加わった。

オートフレーム機能は、撮影後にAIが構図を提案して、より良い構図にワンタッチで修正できる機能だ。

黄金比や三分割法といった写真の構図理論に基づいて、最適な構図を提案する。

同時に、必要ならば生成AIを使用して写真の範囲外まで背景を拡張することもできる。

例えば竹やぶの中で撮影した集合写真にオートフレーム機能を適用すると、AIが構図を調整し、背景の竹やぶを拡張して、より広い空間を写したような効果を生み出す。

ただし、拡張された部分は実際の空間を写したものではなく、AIが生成したものというわけだ。

「イマジネーション」機能では、プロンプト(AIへの指示)を使用し、さらに大胆な画像編集が可能だ。

例えば背景を花火の空に変更するといったことだってできる。

なお、現時点でのプロンプト入力は英語のみとなる。

また、カメラ撮影では「一緒に写る」という新機能を搭載。

この機能を使う際は、写真を2回を撮影する。

1回目は撮影者以外の全員を撮影し、2回目は撮影者がほかの人にスマホを渡して自身も写真に入るといった具合だ。

2回目の撮影者は、ARで表示された撮影ガイドに合わせて撮影することで、撮影者も含めた完全な集合写真ができあがる仕組みだ。

思い出の写真を、より見栄えの良いものにしたいというユーザーの要望に応える機能といえる。筆者はこれらの技術が「写真とは何か」を巡る、古くて新しい議論を再燃させるのではないかと考えている。

現実を忠実に切り取るものなのか、それとも創造的表現の一形態なのか。

なお、Pixel 9シリーズのカメラはPixel 9 ProとPro XLが望遠のある3眼カメラを搭載、Pixel 9は広角と超広角の2眼カメラを採用している。

遠くのものをズームして撮影する機会が多い人は、Proシリーズが選択肢となる。

超広角カメラについては、Pixel 9のカメラも4800万画素と高画素で、Proシリーズと同等だ。

Pixel 9シリーズは、グーグルのAIアシスタント「Gemini(ジェミニ)」を標準搭載する。

Geminiはユーザーの日常生活をサポートするAIだ。

GmailやGoogleドキュメントといったグーグルサービスと連携し、ユーザーの要求に応じた情報提供もできる。

例えば、「航空会社から届いた沖縄旅行のメールを表示して」や「火曜日の企画会議の議事録をグーグルドライブから探して」といった具合に指示してみよう。

GeminiはPixel 9シリーズに限り、ほかのアプリ上に重ねて表示できる。

アプリを切り替えることなく、素早くアクセスできるのだ。

また、Pixel 9シリーズでは、新たに「Gemini Nano」でマルチモーダルなLLM(大規模言語)モデルが採用された。

どういうことかというと、オフラインで動作するコンパクトな生成AIを、文章、画像、オーディオ、録音などで活用できるようになるのだ。

対話の返答までの待ち時間が短くて済むほか、通信データを節約できる。

Geminiと音声で対話できる「Gemini ライブチャット」も新たに提供される。

これはChatGPTの音声通話機能と似たような機能だ。

当面は英語のみ対応となるが、日本語対応も予定されている。

他にもPixelシリーズにはさまざまな場面でAIを活用した新機能がある。

電話で、双方の声をハッキリと聞こえる様にするものや、話したことをその場で文字起こしするボイスレコーダーアプリなども用意された。

Pixel 9 Pro Foldは、その基本設計が大きく見直された。

前モデル「Pixel Fold」は、閉じた状態で小さめなスマホ、開くと新書版というサイズ感だった。

今回は、縦方向にディスプレイを拡大。

閉じた際の画面サイズは6.3インチで、Pixel 9 Proと同じディスプレイを採用している。

開いた時は、正方形に近い寸法の約8インチとなる。

折りたたみディスプレイは小さなタブレット機のようなサイズ感で、アプリを複数起動したマルチタスク操作が快適に行える。

縦方向に長いため、2つのアプリを左右に並べ、連携して使える。

メールアプリを左側にならベ、メルマガで届いた記事を右側に表示したり、動画を見ながらSNSをチェックするといった使い方が便利だ。

新機種の特徴は、広げた時の薄さ。

厚み約5.1ミリで、日本市場で販売されている折りたたみスマートフォンとしては最も薄いものとなる。

たたんでも10.5ミリなので、ちょっと厚目のスマートフォンといった程度だ。

重量は約257グラムと、ディスプレイを内外両面に搭載しているスマホとしては十分軽量な部類に入る。

iPhoneの最上位モデル「iPhone 15 Pro Max」の221グラムと比べると、単3形電池×2本ぶんほど重たいが、重量バランスが工夫されているため、開いて両手で持つと、それほど重たくは感じない。

もちろん、上記した多彩なAI機能は折りたたみPixelでも利用できる。

音声アシスタントの「Gemini」は、分割スクリーンで起動することでマルチタスクとの親和性も発揮する。

例えばGeminiとの対話中、別な画面で情報を参照し、それを見ながら別な質問をしたりできるのは、大画面あってこその使い方だ。

サブディスプレイと大画面双方を活用した、折りたたみならではの利便性も備える。

ビデオ会議ツール「Meet」では、内側のディスプレイに会議の出席者全員を表示しながら、外側のディスプレイで自分の画面を共有したりも可能だ。

グーグル翻訳を使う際、内側と外側の両方のディスプレイに翻訳結果を表示できるため、対面での多言語コミュニケーションがよりスムーズになる。

また、新たにカメラに「こっちを見て」機能が追加された。

外側のディスプレイにアニメのキャラクターを表示し、子どもの注意を引きつつ自然な表情を撮影できるというものだ。

周辺機器としてスマートウォッチの「Pixel Watch 3」(5万2800円~)と、完全ワイヤレスイヤホン「Pixel Buds Pro 2」(3万6800円~)も併せて発表されている。

Pixel Watch 3は2サイズが用意され、ランニング向けの分析機能が新たに備わった。

Pixel Buds Pro 2は今回、イヤホンとしての初めてTensorチップを搭載しており、AIとの親和性を高めている。

グーグルは、Androidエコシステムのけん引者としての役割を果たしつつ、折りたたみPixelに代表される魅力的な自社製品によるユーザーの囲い込みへと舵取りしてきた。

ハードウェアメーカーとプラットフォームリーダーの両面で存在感を高める戦略は、業界の動向を占う上で重要な指標となりつつある。

参照元:Yahoo!ニュース