「30歳目前で破局」夢にも敗れ人生どん底のアンジェラ佐藤が一杯のカレーで開いた大食いタレントへの道

大食いタレントをイメージした写真

大食いタレントして活躍中のアンジェラ佐藤さん。

すい星のごとく現れ、大食い女王のひとりとして一躍知られるように。

そんなアンジェラ佐藤さんが「やさぐれていた」と話す人生の大逆転を振り返り、「これだけは言いたい」こととは?

もともとアルペンスキー選手だったそうですね。

アンジェラ佐藤さん:母が子どもに何でも習わせたいタイプで、特に身体を鍛えさせたかったみたいです。水泳とか体操とか、いろいろな習い事のひとつとしてアルペンスキーを習っていました。姉もいるのですが、姉と私が一番ハマったのがアルペンスキーで、中学生の頃はレーシングチームにも入って大会にも出場するようになりました。いつも「競う」ことが当たり前の生活で、勝つために生きているような感覚でした。でも、中学時代をピークにスランプに陥り、頑張れば頑張るほど裏目に出るような状態になってしまったんです。しかも、20代のころに交通事故にあってしまって。当時のことはあまり思い出せないのですが…結局、その後アルペンスキーを引退しました。30歳を目の前にして彼と別れたり、仕事もうまくいかなかったりして、子どもの頃から当たり前にあった「挑戦したい」という気持ちがすっかり萎えてしまって。やさぐれて、しばらくフリーターしながらふらふらと生きていました。

大食いとしての才能が開花したのはいつ頃でしょうか。

アンジェラ佐藤さん:昔からよく食べる子ではあったので、まわりから「大食い選手権に出てみたら?」みたいにひやかされていたんです。ただ、その頃はまだ自分ではピンとこなくて。でも、目標をなくしていた28歳のある日、茨城県のやよい食堂(現在は閉店)という大盛りのお店に行ったんです。「ちょっと、食べてみるか」ってふと思い立って。それで、名物メニューの2kgくらいの大盛りカレーを食べてみたら、あっという間に完食しちゃったという(笑)。そのときに、「私って普通の人よりも食べられるんだ」と気づきました。それに、スポーツで味わっていた競争心やワクワク感がよみがえってきて、「この感覚、懐かしい!」と嬉しくなって。それからは、趣味が大盛りのお店巡りになって、いろいろなお店を食べ歩いていました。

どんなメニューに挑戦していましたか?

アンジェラ佐藤さん:「20分以内に3kgのかつ丼を食べたら賞金1万円」みたいなメニューによく挑戦しましたね。東京の若狭家(わかさや)さんでは、2.5kgくらいの海鮮丼を7分で完食して(制限時間は15分)。その後、お店の人から「大食い選手権に出演してみない?」って申込用紙を渡されたんです。そこで、「本当にテレビに出られるレベルなんだ」と実感しました。

そういったことがきっかけで、テレビ東京の『大食い王決定戦』に出演されたのですね。

アンジェラ佐藤さん:本当に軽い気持ちで、どんなものか出てみたくなって応募したんです。「タレントさんと写真を撮ってもらえたらいいなあ」くらいのミーハー気分で。そうしたら、まさかの予選1位通過で、あれよあれよとテレビ出演することになって。番組でも4位になってびっくり。次の大会ではなんと1位になってしまいました(笑)。

いきなり女王になったのは、大食い業界でも衝撃だったでしょうね。ところで、「アンジェラ佐藤」という芸名は、2009年に初出演した『大食い王決定戦』で司会をしていた中村有志さんが名づけ親ですよね?

アンジェラ佐藤さん:そうなんです。しかも実は、芸名は後づけです。最初、スタッフ会議では、「アルペン佐藤」という芸名が用意されていたそうです。私が北海道出身で、元アルペンスキー選手だったからなんですけど。でも、本番が始まってから、いきなり中村さんが「この子はアルペンじゃない!アンジェラ・アキに似ているから、アンジェラ佐藤にしよう!」と言って、もう編集できないくらい、「アンジェラ佐藤!」って連呼してくださって。スタッフさんは、「正直全然似ていないし、“アルペン佐藤”って名前を用意していますから」と何度も説明するんだけど、もう中村さんがおかまいなしで(笑)。そんな中村さんのおかげで、本当にアンジェラ佐藤になりました(笑)。

私の中では「アンジェラ佐藤」としてなじんでいるので、まったく違和感はないですが(笑)。

アンジェラ佐藤さん:当時はSNSで「全然似てないのにアンジェラを語るな」って、批判のコメントが100件くらいきちゃって、落ち込みました(苦笑)。でも正直、スタッフさんが決めたアルペン佐藤のままだったらここまで生き残れなかったと思います。街を歩いていても、「アンジェラさん」って言われることが多くて、嬉しいし、ありがたいです。

大盛りメニューをきっかけに、何もかもうまくいかなかった人生から大食いタレントになるなど、かなり大きく変わったと思いますが、当時を振り返ってどう思いますか?

アンジェラ佐藤さん:これは真面目な話ですが、「どんな人間にもムダな時間はない」って思います。たとえば、部屋に閉じこもって漫画を読む日々だったとしても、その漫画が大好きでいろんなシリーズを読んでいたら、そんな時間もすべて、タレントになった途端、仕事のネタになったりする。私の場合、食べ放題につき合わせすぎて当時の彼が体調を崩してしまったり…いろいろあったのですが。彼には申し訳なかったけれど、それも私の今の人生に繋がっているのは間違いないので。大食いの世界に入る直前の私って、本当にいろいろなことを諦めていました。そんなときに、たまたま大盛りメニューを完食できたことで、「私でもできるじゃん」って小さな自信が生まれて、「大食い番組に応募してみるか」って思えるようになったんです。偶然生まれた軽い気持ちから、まさかまさかの大食いタレントとしての道が開かれていって、人間って、何がきっかけでどうなるのか、本当にわからないなって思います。

今では、大食いタレントを代表するひとりとして活躍されています。

アンジェラ佐藤さん:ほんとに不思議なことで。ただ、人って、何かにつまづいたりすると、「どうせ」とすべてを否定してしまいがちですが、いつかきっと、そんな自分やムダに思えた時間すら武器にもなるときがきます。だから、今、部屋に引きこもって、毎日ベッドの上で漫画を読んでいるだけの人にも、「そういう時間もムダじゃないんだよ」と言いたいです。人生で悩んでいる人にも、「悩んでいる自分すらいつか必ず武器になるから」と伝えたい。フリーターでふらふらしていた人間が、ある日突然、タレントとして活動するようになって、そこそこ順調に生きてくることができた、そんな私だから言えることもあると思っています。

参照元∶Yahoo!ニュース